意外と判断が難しい「修繕費」についてお話しますね。
たとえば、これはどう?
たとえば、
お店の入口が「木製の引き戸」になっており、
それが壊れたので修理をしたとしましょう。
修理業者さんの手によって、
立派なアルミ製の引き戸にしてもらえました。
お代は税込み165,000円でした。
さ、これ、修繕費ですか?
あるいは、
賃貸用の収益マンションを持っておられる不動産オーナーさんが、
マンションの外壁を修理することにしました。
建築してから30年の物件。
当時とは外壁の素材もかなり進化しており、
防音・断熱・耐久性などがかなり向上し、
立派な外壁修理をする事が出来ました。
お代は、税込み550万円でした。
これ、修繕費でしょうか?
税法では、後者(🔴)については
「資本的支出」と言って、
修理ではなく
あたかも新品の資産を取得した事と変わらないと考えます。
資本的支出=新品の資産の取得と同じこと・・・ですから、
金額が大きくなると「固定資産」という扱いになり、
つまり、耐用年数に渡って
減価償却をして行く必要があるのです。
わたしたち税理士もお客さまから修理の報告を受けたり、
修理の請求書などを拝見した際は、
修理という名前の如何によらず、
その修理の中身をかなり吟味します。
場合によっては、修理業者さんに問い合わせ、
詳細な内容を確認することもあります。
検討の結果、
完全に<原状回復のための修理>であると判明すれば
修繕費として計上し、
資本的支出であると判明すれば、
固定資産計上し減価償却を行います。
ここで、<原状回復のための修理>について補足しますが、
壊れた個所を元に戻すだけの修理(原状回復修繕)であれば、
その修理代金が仮に1億円だとしても修繕費(経費)になるのです。
修理金額が多額である事だけをもって
「修繕費に落とすのは危ない」と
考える人もおられるかもしれませんが、
そこは「実態判定」です。
先ほど例に挙げましたが収益マンションのオーナーであれば、
屋上の漏水塗装工事なども結構金額が張りますが、
前と同じ塗装工事を施すのであれば、
たとえ500万かかっても修繕費です。
また、製造工場であれば、
機械や工場施設の修理なども多くの金額がかかりますが、
これも以前と同じ状態に戻すだけの施工であれば、
1,000万円かかっても修繕費です。
よって、金額が大きいからという理由だけで、
それらの支出を「資本的支出」(=固定資産計上)と
考えることも、それはそれで、いささか早合点なのです。
要するに、
修理であっても即経費とならない修理もある。
多額な修理であっても即経費となる修理もある。
・・・ということを知っておいて頂きたいと思います。
非常に、悩ましいですよね(;^ω^)
でも、これが税務の実務です。
※一口メモ
金額が大きい原状回復修繕を行い、かつ、税務判断として「修繕費」で落とす場合は、
修理前と修理後の両方の写真で撮っておくと、税務調査の際に役立ちます。
製造業のクライアントさんなどからは、日常的にこのようなご相談をよく受けます。
このように、修繕費に関するご相談は、
製造業を営むクライアントさんからは日常的によく受けるのですが、
先日もこんなご相談がありました。
「工場の屋根の雨漏り修理をしました」
と仰っていたので、
修理内容をよく聞き取りしていくと、
実は、修理だけではなく、
工場と工場の間に新たな<雨除け屋根>を設置する工事も
併せて行っていたのです。
よって、このようなケースでは・・・
①雨漏り修理した部分についての判断(修繕費か?あるいは資本的支出か?)
そして、
②新たに屋根を設置した分は固定資産計上としての判断
・・・をする必要があります。
特に、期末直前の金額の張る修理は注意
特に、期末直前の金額が張る修理は注意が必要です。
修繕費となることを見込んで、
決算期末の間際に大型修理を行った場合などは、
それが、修繕費となるのか減価償却となるのかによって、
最終的な利益および税額は大きく変わりますから、
あらかじめ、その修理が修繕費となるのかどうか、
修理を正式依頼する前の段階(見積書の段階)で、
顧問税理士等に事前相談しておくことをお勧めします(^^)/
なお、参考情報として、
「修繕費とならないものの判定」について、
国税庁のサイトをリンクしておきますので
ご興味のある方はご参考になさって下さいね。