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連続税務小説 ヤマゲン 第72話 「妖怪イチエン」

2026/03/10
連続税務小説 ヤマゲン 第72話 「妖怪イチエン」

 午前。

 夏美は、駅前の商店街を歩いていた。

 

 古くから続く通りらしく、
 小さな店が軒を連ねている。

 

 その一角に、


 佐藤精肉店

 

 と書かれた看板があった。

 

 ガラスケースの中には、
 きれいに並んだ肉。

 

 店の奥に声をかける。

 

「失礼します」

 

 奥から、
 白い前掛けをした男が出てきた。

 

「おお、ヤマゲン先生とこの」

 

「大和税理士事務所の一条です」

 

「先生から聞いとるよ」

 

 男は手を拭きながら言った。

 

「まぁまぁ、奥へどうぞ」

 

 事務スペースは、
 店の奥の食卓で兼用しているようだ。

 

 机の上には、
 レシートと帳簿。


 きれいに揃えてある。

 夏美は少し安心した。

 

「今月の資料です」


「ありがとうございます」

 

 ノートパソコンを開き、
 確認を始める。

 

 レシートも整理されている。

 そのときだった。

 

「先生」

 

「はい」

 

「このレシートな」

 

 佐藤が一枚を指さした。

 

「これ、102円やろ」

 

「はい」

 

「帳簿には101円って書いてある」

 

 夏美は画面を見る。

 

 確かに、1円違う。

 

「あ……ほんまや」

 

「すみません」

 

 すぐに修正する。

 

 だが、佐藤は腕を組んだままだった。

 

「先生」

 

「はい」

 

「1円でも」

 

 一言。

 

「金は金やで」

 

 夏美はうなずいた。

 

「はい、もちろんです」

 

 そのとき、
 佐藤がふと思い出したように言った。

 

「先生」

 

「はい」

 

「わしな、この前、掃除機買うたんや」

 

「掃除機、ですか」

 

「駅前にできた、大手のタケダ電気や」

 

 佐藤は得意そうに続ける。

 

「最初な、三万円やった」

 

「そこから二千円値引きさせた」

 

 夏美は少し驚く。

 

「すごいですね」

 

「そやろ」

 

 しかし、佐藤は続けた。

 

「でもな、まだいける思うたんや」

 

「それで?」

 

「もうちょっと引けるやろ言うた」

 

「ほしたら店員がな」

 

『もうこれ以上は無理です』

 言うわけや。

 

 佐藤はニヤリと笑う。

 

「せやから言うたった」

 

「ほな」

 

 一拍。

 

「あと1円くらい引けるやろ」

 

 夏美の手が止まった。

 

「1円……ですか」

 

「そう」

 

 佐藤は腕を組む。

 

「店員、困っとったわ」

 

「そらそうでしょうね……」

 

「でもな」

 

「最後、ほんまに1円引いた」

 

 佐藤は満足そうにうなずいた。

 

「先生」

 

「はい」

 

「商売いうのはな」

 

 一言。

 

「1円や」

 

「1円を笑うもんは」

 

「1円に泣く」

 

 そのあとも確認は続いた。

 

「この電気代な」

 

 佐藤が帳簿を指さす。

 

「はい」

 

「これ、店と家で按分しとるやろ」

 

「はい。店舗とご自宅が一体ですので」

 

 佐藤は眉をひそめた。

 

「この按分した端数、合わへんで」

 

 夏美は画面を見る。

 

 確かに、1円だけずれている。

 

「あ……」

 

「すみません」

 

 すぐに修正する。

 

 しかし、佐藤は腕を組んだままだった。

 

「先生」

 

「はい」

 

「1円でも」

 

「金は金や」

 

 気づけば、

 一時間。

 

 帳簿は、
 ほとんど進んでいない。

 

 しかし、
 佐藤は1円も見逃さない。

 


 

 仕事を終え、表に出ると、

 

 佐藤が店先で、

 子どもにコロッケを渡していた。

 

「これ、

 割れてんもうたから、おまけや」

 

「おっちゃん、ありがとう!」

 

 子どもが走っていく。


 佐藤は笑っていた。



 

 電車に乗る。


 夏美は鞄からノートを取り出した。

 

 表紙には

 社長ノート

 と書いてある。

 

 ページを開く。

 

 ペンを走らせる。

 

 ・佐藤精肉店

 ・1円の違いを全部確認

 ・端数に厳しい

 ・掃除機2000円値引

 

 ・さらに1円値引

 

 少し考える。

 

 そして、
 最後に一行書いた。


 妖怪イチエン

 

 ノートを閉じた。

 

 電車が揺れる。

 

 夏美は思う。

 

 怒鳴る妖怪も、

 丸投げする妖怪も、

 大変だった。

 

 だが。


 1円にこだわるタイプも、

 なかなか手強い。


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