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連続税務小説 ヤマゲン 第76話 「妖怪シッタカブリ(前編)」

2026/03/17
連続税務小説 ヤマゲン 第76話 「妖怪シッタカブリ(前編)」

 

 半年が過ぎていた。

 

 ナガバナシ。

 イカリオヤジ。

 マルナゲ。

 イチエン。

 ナキゴト。

 リソウロン。

 ムチャブリ。

 

 7人の社長たちの会社を、

 夏美は毎月回っていた。

 

 訪問を終えると、

 事務所に戻る。

 そして源太郎に報告する。

 

 もちろん業務報告もある。

 

 だが。

 

 半分以上は愚痴だった。

 

「ナガバナシ社長、今日も二時間です」

 

「イカリオヤジは今日も職人三人怒鳴ってました」

 

「マルナゲ社長、また“先生に任せます”です」

 

 ヤマゲンは聞いている。

 

 だが。

 

「ふーん」

 

 それだけだった。

 

 具体的な答えはくれない。

 

 夏美は思う。

 

(ちょっとくらいアドバイスしてくれてもいいのに……)

 

 しかし。

 

 気がつけば。

 

 夏美は、妖怪社長たちに振り回されながらも、

 なんとか指導をしていた。

 

 そして少しずつ。

 

 自分のことを信頼してくれているような手応えも、

 覚えるようになっていた。




 そんなある日。

 

 ヤマゲンがふと顔を上げた。

 

「なっちゃん」

 

「はい」

 

「今まで7件担当してもろたやろ」

 

「はい」

 

「もう一件、担当増やす」

 

 一言。

 

「ラスボスや」

 

 夏美は首をかしげた。

 

「ラスボス?」

 

 ヤマゲンは言った。

 

「行ったら分かる」




 その会社は、

 主に幹線道路等の掘削工事を行う会社だった。

 

 東和トンネル工業株式会社

 

 公共工事の受注や、

 大手ゼネコンの下請も多い。

 

 従業員は、技術職人や設計者など、計50名弱。

 

 数名ながら経理部門もあり、

 数字もしっかりしている。

 

 立派な社屋。

 

 駐車場には高級外車。

 

 今まで出会った7人の妖怪とは、

 何から何まで違った。

 

 社長の東和は2代目だった。

 

 上等なスーツ。

 

 清潔感のある髪型。

 

 高級腕時計。

 

 そして社長室。

 

 話し方も落ち着いている。

 

 紳士的だった。

 

 会計の話。

 

 税金の話。

 

 さらに。

 

 経済。

 政治。

 社会情勢。

 

 なんでもよく知っている。

 

 人脈も広い。

 

 夏美は思った。

 

(すごい社長……)

 

 だが。

 

 何度か訪問するうち、

 違和感を覚え始めた。

 

 社長室には、

 難しそうな本が並んでいる。

 

 英字新聞も置いてある。

 

 しかし。

 

 それを読んでいる形跡がない。

 

 立派な社屋。

 

 高級車。

 

 だがそれらの多くは、

 一代目の父から受け継いだものだった。

 

 そして。

 

 社長には、ひとつ癖があった。

 

 知らないことでも、

 知っているように話す。




 ある日。

 

 社長室を出たとき、

 オフィスで従業員の声が聞こえた。

 

「昨日も出ましたね」

 

「社長の知ったかぶり」

 

 夏美は思った。

 

(今回の妖怪は……)

 

 妖怪シッタカブリ

 

 しかし。

 

 夏美自身も、

 同じことをしていた。

 

 社長の話についていこうと、

 政治や経済の話に合わせる。

 

 本当はよく知らない。

 

 だが。

 

 知らないとは言えない。

 

 ある日。

 

 その日もまた、

 月次監査を兼ねて訪問し、

 社長の東和と経済談話になった。

 

 TPPが云々……。


 夏美は、
 話を合わせるのだけで精一杯。

 

 東和が穏やかな声で言った。

 

「先生」

 

「はい」

 

「ひとつお聞きしてもよろしいでしょうか」

 

「はい」

 

 東和は微笑んだ。

 

「先生」

 

「本当は」

 

「TPPを、よくご存じないのではありませんか」

 

 胸が、

 ぎゅっと締めつけられた。




 その夜。

 

 夏美は必死に勉強した。

 

 経済。

 政治。

 ニュース。

 

 しかし。

 

 追いつかない。

 

 知らないと言えない。

 

 知らないことを、

 知っているふりをしている。

 

 自分は税理士事務所で働く身だ。

 

 経済や政治など、

 知らないことがあってもおかしくない。

 しかし、なぜ知らないと言えないのか……

 

 机の上のノートを見つめたまま、

 夏美はしばらく動けなかった。

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