決算書の数字を見ながら、
田中 恒一は、首をひねっていた。
「……あれ?」
会計ソフトの画面。
青色申告特別控除――10万円。
その表示を見て、
思わず画面を二度見した。
「65万円、ちゃうんか……?」
青色申告だ。
帳簿も付けている。
ソフトも使っている。
条件は、そろっているはずだった。
それなのに、
なぜか、10万円。
田中は、
先生の顔を思い浮かべ、
すぐに電話をかけた。
「先生、
青色の65万円控除って……
自動で取れるもんちゃうんですか?」
電話の向こうで、
先生は、少し笑った気配を見せた。
「それ、
めちゃくちゃ多い勘違いですわ」
田中は、苦笑した。
「やっぱり……」
「ほな、
一個ずつ、確認しましょか」
先生の声は、落ち着いている。
「まずな、
複式簿記で付けてはります?」
「……たぶん」
「“たぶん”は、
だいたいアウトです」
先生は、はっきり言った。
「会計ソフト使ててもな、
設定間違ってたら、
単式扱いになります」
田中は、思わず背筋を伸ばした。
「次」
先生は続ける。
「期限内に申告してます?」
「……去年、
ちょっと遅れました」
「それも、
即アウトです」
田中は、額に手を当てた。
「あと、
e-Taxか、電子帳簿保存
やってはります?」
「……やってないです」
「ほな、
65万円は取れません」
淡々とした口調が、
逆に、重く響く。
「条件はな、
ちゃんと書いてあるんです」
先生は言った。
「せやけど、
誰も読まへん」
田中は、
思わず笑ってしまった。
笑えたのは、
責められていないからだ。
「つまりな」
先生は、整理するように言った。
「65万円控除は、
ご褒美みたいなもんです」
「ご褒美?」
「ちゃんと帳簿付けて、
期限守って、
データで出した人だけの、な」
田中は、
ゆっくりうなずいた。
楽して取れるものじゃない。
でも、
無理なものでもない。
「正直な話」
先生は、少し声を落とした。
「これ、
毎年何十万円も差が出ます」
「……ですよね」
「せやから、
“取れてへん”って分かった時点で、
もう半分は成功ですわ」
田中は、
その言葉を噛みしめた。
知らずに損する。
それが、一番怖い。
「今年からな」
先生は言った。
「設定も、
申告方法も、
全部そろえましょ」
「はい」
返事は、迷わなかった。
電話を切ったあと、
田中は、決算書をもう一度見た。
そこにあるはずだった、
65万円。
今までは、
「取れなかった損」
だと思っていた。
でも今は、違う。
「取れる形を知らなかっただけ」
そう思えた。
知れば、
準備できる。
準備すれば、
結果は変わる。
青色申告65万円控除は、
魔法じゃない。
ちゃんとやった人にだけ、
ちゃんと返ってくる制度
なのだと、
田中は、ようやく腹落ちした。
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