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連続税務小説 ヤマゲン 第35話「その請求書は、誰が作った?」

2026/02/04
連続税務小説 ヤマゲン 第35話「その請求書は、誰が作った?」

 数日後。

 クラブ・リバプールに行っても、
 麻里子はいなかった。

「今日はお休みです」

 そう言われた。

 翌日も。
 その翌日も。

 電話は、
 つながらない。

 メッセージは、
 既読にならない。


 田中 恒一は、
 工場の隅で、
 一人、立ち尽くしていた。

 消えた。

 そう思った瞬間、
 胃の奥が、
 きゅっと縮んだ。

 300万円。

 現金。

 帳簿に載らない金。


「……どうしよう」

 誰にも言えない。

 妻には、
 絶対に無理だ。

 ヤマゲンにも、
 言えるわけがない。


 そのとき、
 ふと、
 頭に浮かんだ。

 機械の修理代。

 最近、
 調子の悪い設備は、
 確かにある。

 修理したことにすればいい。

 請求書と領収書さえ、
 あれば。


「……修理したかどうかなんて、
 妻には分からん」

「ヤマゲンにも……
 分からへんやろ」

 そう思いたかった。

 田中は、
 パソコンを立ち上げた。

 エクセル。

 白い画面。

 カーソルが、
 点滅する。


「……そうや」

「そうしよ」

 誰に言うでもなく、
 つぶやいた。


 数日後。

 ヤマゲンの税理士事務所。

 午後の静かな時間。

「なっちゃん」

 ヤマゲンが、
 書類から目を離さずに言った。

「気ぃついたら、
 もう一か月やな」

「ほんまや」

 夏美は、
 少し照れたように笑った。


 正直、
 ヤマゲンは思っていた。

 一週間も持たんやろ。

 だが、
 夏美は意外と続いていた。

 コピーも、

 ファイル整理も、
 雑用も。

 そして何より、
 数字の飲み込みが早い。

 それもそのはず。

 夏美は、
 大学の商学部に在籍中、
 簿記2級の資格を

 取っていたのだ。



「なっちゃん」

 ヤマゲンは、
 ふと顔を上げた。

「外、出てみるか」


「え?」


「顧問先回りや」

 夏美は、
 一瞬、目を丸くした。


「いきなり
 大きい会社は無理やからな」

「個人事業のとこ」

「……田中さんの工場くらいが、
 ちょうどええ」


 ヤマゲンは、
 そう言って、
 軽く笑った。


「真面目な人や」

「接しやすいで」


 翌日。

 町工場。

 夏美は、
 少し緊張した面持ちで、
 帳簿を開いていた。

 請求書。
 領収書。
 現金出納帳。
 銀行通帳。

 一つずつ、
 照合していく。


 そのとき。

 300万円。

 修理代。

 金額が、
 目に留まった。

(……高っ!)

 思わず、
 顔を上げる。


 工場の奥で、
 田中が作業をしている。

「田中さん」


 夏美は、
 声をかけた。


「機械の修理代って
 高いもんなんですね」


「あー、それなぁ」


 田中は、
 笑って手を止めた。


「ほんま、
 困ったもんや」

 それだけ。


 そのとき。

 夏美の視界に、
 ふと、
 田中のパソコンの画面が入った。

 開かれているのは、
 エクセル。


 請求書。


(……あれ?)

 一瞬、
 思考が止まる。


(売上の請求書なら、
 自分で作る)

(でも……)

(修理代の請求書は、
 相手が出すもの

(なんで……
 エクセルの状態で
 田中さんのパソコンに?)


 胸の奥に、
 小さな違和感が残った。


 夏美は、
 何も言わなかった。


 ただ、
 請求書に書かれた
 業者名。
 住所。
 電話番号。


 そして、
 インボイス番号。


 そっと、
 メモをした。
 
 簿記のことは
 多少分かっても、
 税法に関しては
 まださっぱり分からない
 夏美であった。


 しかし、
 インボイス番号が、
 消費税の関係で
 どうやら重要な番号であることは
 なんとなく分かっていた。

 分かっていた、
 というよりも、
 正しく言えば、
 いつも源太郎が
 「インボイス、インボイス」と
 顧問先に対して
 言っている光景が
 記憶に残っていた。


 源太郎の事務所。

 夕方。


「どうやった?」

 源太郎が聞いた。

「田中さんの工場」

「親切にしてくれはったか?」


「うん」

 夏美は、
 少し間を置いて言った。

「……でも」

「ちょっと、
 気になることがあって」


 説明を聞いた源太郎の表情が、
 ゆっくりと変わる。

「……ほう」


 パソコンを立ち上げる。

 国税庁の
 インボイス番号検索サイト。

 夏美が控えてきた番号を、
 打ち込む。


 該当なし。


 住所。
 社名。
 電話番号。

 
 どれも、
 存在しなかった。 


 ヤマゲンは、
 画面を見つめたまま、
 小さく息を吐いた。

「……田中さん」


 低く、
 つぶやく。


やりよったな……


 そして、
 一瞬だけ、
 目を閉じた。


「……せやけど」

 ポツリと続ける。


なんでや

 

 その答えが、
 重たいものであることを、
 このときのヤマゲンは、
 もう、
 分かっていた。



「なっちゃん……」

「田中さんに、電話や。アポ、取って。」

 夏美は、
 これまで
 見たことのない形相の
 源太郎を見て
 ただならぬ空気を感じた。

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