源太郎と並んで、
事務所のドアを開けた。
朝の静けさが残っている。
「ほれ、
頭、拭いとき」
源太郎は、
夏美にタオルを差し出すと、
そのまま何も言わず、
奥の席へ向かった。
椅子に腰を下ろし、
いつものように新聞を広げる。
夏美も、
自分の席に座った。
パソコンを開く。
だが、
手が動かない。
さっきのことが、
頭から離れない。
数分。
「源太郎おじさん」
「ん?」
「わたし……」
言葉が詰まる。
「わたし、今まで、
何を見てたんだろって思って」
源太郎は、
新聞から目を離さない。
「社長さんたちのこと、
ずっと“妖怪”やと思ってました」
「でも……違いました」
「わたしが、勝手に
そう見てただけで」
夏美は、
ゆっくりと言葉を選ぶ。
「妖怪ナガバナシも」
「妖怪イカリオヤジも」
「マルナゲも、
イチエンも、
ナキゴトも、
リソウロンも、
ムチャブリも……」
一拍。
「全部……」
「わたしの中にも、ありました」
源太郎は、
小さく笑った。
「そやろな」
夏美は顔を上げる。
「え……?」
「なっちゃんだけやないで」
源太郎は言う。
「みんな、そうや」
「人の中にあるもんはな、
自分の中にもある」
「せやから、
人見て腹立つんや」
夏美は、
黙って聞いている。
「ほんまに自分に無いもんはな、
気にもならん」
静かな声だった。
「今回、それが見えたんやな」
夏美は、
小さくうなずいた。
「でも……」
「わたし、どうしたらいいか、
分からなくなりました」
「未熟だし」
「知らないことだらけだし」
「そんな状態で、
社長に何か言っていいのかって……」
源太郎は、
新聞をたたんだ。
「ええんちゃうか」
「え?」
「別に、
完璧な人間しか
仕事したらアカンわけやないやろ」
一拍。
「むしろな」
源太郎は続けた。
「自分が未熟やって分かってる人間の方が、
ええ仕事するで」
夏美は、
その言葉を噛みしめる。
「分かってへんのに、
分かったフリするのが一番アカン」
一瞬、
東和の顔が浮かんだ。
そして。
自分の顔も。
夏美は、
ゆっくりと息を吐いた。
「……はい」
竹岡税務会計事務所
経営が見えない!を数字でクリアに。
まずは、お気軽に無料相談を。
電話番号:090-7499-8552
営業時間:10:00~19:00
定休日 : 土日祝
所在地 : 大阪府富田林市須賀1-19-17 事務所概要はこちら