もはや今の時代には合ってへんのよ。」
「そうよね、女性も働く時代だし、
なんなら女性起業家もいる時代だし」
「そう、そこやねん!
ミサちゃんだって、整体サロンの女性起業家やん、れっきとした。
昔みたいに、奥さんは家を守り、家事育児に専念しなさい、なんて時代とちゃう。 でも、法律が未だにそれに追いついてへんねん・・・。
そして、未だに配偶者控除とかで奥さんを外に出さないようにしてしまっている訳や」
「そっかぁ、結局、日本ってそういう古い慣習に縛られている訳ね・・・」
「そう。でも、これっておかしいやん!って人たちも沢山いるよ。
これをテーマに論文を書いている大学教授もいるし、
国会での審議事項に取り上げた国会議員さんもいる。」
「そやけど・・・」と竹岡は言った。
「そやけど?・・・どうしたの?」
「世の中には、色んな人がいるやん。
ミサちゃんみたく、バリバリ仕事したろって人もおるけど、
夫の扶養の範囲内で働きたい人や、
そもそも結婚したら働きたくないって人も実際にはいるやんかぁ?」
「そうね、私だって、仕事をしなくてもイイのなら、
その方がラクだけど・・・。
でも、私の場合は、仕事が好きみたい。
ただ、きっと、育った環境とか、親御さんやお姑さんとかの影響
あるかも知れないわね。」
「そうや、日本は狭い国って言っても、
北から南まで、東京みたいな大都市ばかりじゃないからなぁ。
今風な発展的な考え方の人もおれば、
古風な考えを大切にしている人たちもいるわなぁ」
「ただ、問題は・・・」と、竹岡は続けた。
「選択の余地がないってところやねん」
「選択の余地?」
「うん。選択できへんってのが問題やねん。
これだけ多様化の時代になったんやから、
こういう場合はこうで、
こういう場合はこうできまっせ、ってすればかなり柔軟になる。」
「うん、そうね」
「ただ、選択の余地があり過ぎたり、柔軟にしすぎると、
税務署というか、財務省というか、
税を集める立場の国家としては、
ケースバイケースの事例が多すぎて、複雑化しすぎて、
公平な課税を達成することが難しくなるし、
国民としても税制が複雑になり過ぎたらパニックになってまう。
だから、どこかで線引きが必要になるってのも、事実やねん」
「ん~、なんだか、わたし、
とても難しい問題に出会ちゃったみたいね・・・」
「そうやねん。
家族への支払いは経費に落ちへんで!
それが法律でっせ!
・・・って単純な話じゃなく、
明治から戦前、戦後、そして現代へと至る、
日本の家族制度の変化も背景にあるから、
そうなると、民法とか憲法とかも関係してくるから、
税法だけじゃなくて、
めちゃめちゃ難しい問題でもあるねん」
「ただ、少なくとも・・・」
「なに?」
「弘志君については、コウセイノセイキュウ(更正の請求)って手続きをすれば、
ミサちゃんからもらった売上を取消することができるから、
払った税金が還付される可能性が高いな。
ぜひ、それもやったほうがイイよ」
「あぁ、それそれ!!
それも聞こうと思っていたのよ!!
ヒロくん、(じゃあ、おれが君からもらった売上はどうなるんだ?)
って言ってたのよね!」
「そらそうや。
ミサちゃんの経費が否認されただけでは、
話のつじつまが合わへんもん。」
「よかった!!
今度、税務署に修正申告の具体的なやり方を聞きに行くから、
そのとき、調査官に、
コウセイノセイキュウについても言ってみるね!!」
「そうやな、絶対言わんとあかん。
なんなら、OsakanナンバーファイブHOT税理士から言われました!
って堂々と言ったたらエエねん」
「ナンバーファイブ?」
「そうや、気持ち的にはナンバーワンやけど、
大阪にも4人くらいは俺以上にHOTな情熱の奴がおるやろうから、
ナンバーファイブや」
「謙虚なのか、そうでないのか、
竹ちゃんって相変わらずね・・・」
「どういう意味やねん!!!」
(完)