ヤマゲンは、
イチゴポッキーの箱を
机の端に寄せたまま、
一枚の領収書を取り出した。
「田中さん」
その紙を、
指でつまむ。
「これ、
何の領収書か、
覚えてます?」
田中は、
一瞬考えてから答えた。
「……接待、
やったと思います」
「“やったと思う”」
ヤマゲンは、
その言葉を繰り返した。
声は静かだ。
「このな」
領収書を軽く振る。
「“やったと思う”
が一番、
税務署に嫌われます」
田中は、
思わず姿勢を正した。
「経費ってな」
ヤマゲンは続ける。
「払った事実より」
「何のために使ったか
が大事です」
「金額ちゃいます」
「理由です」
理由。
「これ、
勘違い多いんですけど」
ヤマゲンは、
淡々と言った。
「仕事に関係してたら
何でも経費、
ちゃいます」
田中の胸に、
少しチクっと刺さる。
「税務署が見るのは」
指を二本立てる。
「業務関連性」
「必要性」
「この二つ、
説明できるかどうかです」
ヤマゲンは、
領収書を指さした。
「この接待」
「誰と
何の目的で
次の仕事に
どうつながったか」
「これ、
言えます?」
田中は、
口を開きかけて、
止まった。
「……正直、
今は言えません」
「それが正解です」
即答だった。
「無理に
“それっぽい理由”
作ったら」
ヤマゲンは、
はっきり言った。
「調査で、
一発アウト
です」
アウト。
「否認されたらな」
声が、少し低くなる。
「税金取られるだけや
思ってません?」
田中は、
小さくうなずいた。
「それだけやないです」
「延滞税
加算税」
「下手したら」
一拍も置かずに続ける。
「“意図的”と判断されたら
重加算税
です」
空気が、
ぐっと重くなった。
「せやから」
ヤマゲンは、
少し声を和らげる。
「僕はな」
「グレーは、
基本やらん」
「白か、
やらないか」
「その代わり」
領収書をまとめて置く。
「堂々と使える経費
は、
ちゃんと使います」
田中は、
思わず聞いた。
「……その違いは、
何ですか?」
ヤマゲンは、
少しだけ笑った。
「説明できるかどうか
です」
「第三者に」
「税務署に」
「銀行に」
「奥さんに」
最後の一言で、
田中は吹き出しそうになった。
「奥さんにも?」
「一番、
厳しい審査員です」
ヤマゲンは、
真顔で言う。
「そこで
通らん理由は」
「だいたい、
税務署でも
通りません」
ヤマゲンは、
ここでようやく
イチゴポッキーを一本取った。
カリッ。
「田中さん」
噛みながら言う。
「経費ってな」
「“入れる技術”
やないです」
「“守る技術”
です」
「後で
否認されへんように」
「調査で
眠れへん夜を
作らんように」
田中は、
ゆっくり息を吐いた。
今までの自分は、
「入れられるかどうか」
しか考えていなかった。
「これからは」
ヤマゲンは、
ポッキーを机に置いて言った。
「経費、
一枚見るたびに」
「これ、
説明できるか?
って聞いてください」
それだけで、
判断は、
かなり変わります」
田中は、
静かにうなずいた。
経費は、
節税の道具じゃない。
会社を守るための、
防具なのだと、
初めて分かった気がした。
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