ヤマゲンは、
机の引き出しから
一冊のファイルを取り出した。
表紙には、
何も書いていない。
「田中さん」
ファイルを、
トン、と机に置く。
「税務調査って聞くと」
「何見られるか、
分からん思ってません?」
田中は、
正直にうなずいた。
「はい……
全部、ですか?」
「全部は、
見ません」
即答だった。
「時間も
人手も
限られてますから」
ヤマゲンは、
指を三本立てた。
「必ず見るのは、
この3つ
です」
「一つ目」
ヤマゲンは、
売上台帳を開く。
「売上の計上漏れ」
「これがな」
少し笑う。
「一番多い」
田中の表情が、
固まった。
「現金売上
端数
期ズレ」
「悪気なくても」
はっきり言う。
「漏れてたら、
アウト
です」
「特に見られるのは」
指でなぞる。
「・決算月の前後
・売上が急に落ちてる月
・消費税が絡むライン」
「売上ってな」
ヤマゲンは、
静かに言った。
「隠そうと思わんでも、
“落ちる”もん
です」
「二つ目」
今度は、
領収書の束。
「経費」
「第22話で話したやつです」
田中は、
苦笑した。
「税務署はな」
ヤマゲンは、
淡々と続ける。
「金額より」
「“なんで使ったか”
を聞きます」
「ここで
“たぶん”
“いつも”
“慣例で”」
指を折る。
「これ、
全部アウトワードです」
「一回な」
ヤマゲンは、
過去を思い出すように言った。
「“社長の気分転換です”
って言うた人、おって」
「その瞬間」
首を横に振る。
「全否認
でした」
田中は、
思わず息をのんだ。
「三つ目」
ヤマゲンは、
通帳を指で叩く。
「お金の流れ」
「これがな」
声を落とす。
「一番、
ウソつけへん」
「売上は
誤魔化せても」
「経費は
理由つけても」
「現金の動きは」
きっぱり言う。
「必ず、
足跡残ります」
田中は、
思わず自分の通帳を思い浮かべた。
「特に見られるのは」
「・私的な引き出し
・急に増えた現金
・説明できない入金」
「これ、
説明できへんと」
ヤマゲンは、
少し間を置かずに続ける。
「売上認定
されます」
売上認定。
「税務署が」
「“これは売上やろ”
って決めるやつです」
「反論、
ほぼ通りません」
空気が、
重くなった。
ヤマゲンは、
ここでファイルを閉じた。
「でな」
少し柔らかく言う。
「これ、
教科書に
載ってませんけど」
田中を見る。
「一番見られてるの、
社長の態度
です」
「態度……?」
「ええ」
「聞かれたことに
ちゃんと答えるか」
「分からんことを
“分からん”
言えるか」
「変に
取り繕わへんか」
「ここでな」
はっきり言う。
「嘘ついた瞬間、
全部、疑われます」
田中は、
大きく息を吐いた。
「田中さん」
ヤマゲンは、
イチゴポッキーを一本取り、
まだ食べずに言った。
「税務調査ってな」
「怖いイベント
ちゃいます」
「日頃の処理が
ちゃんとしてるかの
確認作業
です」
「逆に言うたら」
少し笑う。
「ここ3つ
ちゃんとできてたら」
「調査、
だいたい静かに終わります」
田中は、
静かにうなずいた。
調査は、
突然来る。
でも、
準備は、
今日からできる。
そう思えた。
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