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連続税務小説 ヤマゲン 第47話 「流れ」

2026/02/14
連続税務小説 ヤマゲン 第47話 「流れ」

 現金が合うようになって、一週間。

 

 田中の机の上は、少しだけ整っていた。

 

 出納帳はまっすぐに閉じられ、

 金庫の鍵は、決まった場所に置かれている。

 

「次や」

 

 ヤマゲンは、通帳のコピーを広げた。

 

「預金や」

 

 田中は、少しだけ胸を張る。

 

「通帳は、ちゃんとコピー取ってます」

 

「うん」

 

「でもな」

 

 一拍。

 

「それだけやったら、足らん」

 

 通帳には、無機質な文字が並んでいる。

 

 振込

 振替

 カード

 口座振替

 

「ここに書いてあるんは、“事実”や」

 

「でも、“意味”は書いてない」

 

 ヤマゲンは、コピーの横に白紙を置いた。

 

「通帳のコピーとは別に、補足資料を作る」

 

「手書きでもエクセルでもええ」

「ネットバンキング使ってるんやったら、
 エクセルに出力した方がええ」

 

「入出金の内容を、
 第三者が見ても分かるように、
 はっきりと書く」

 

 田中が、ペンを持つ。

 

「たとえば――」

 

 ○○製作所 加工代入金

 △△鋼材  材料仕入

 □□電力  電気代

 オオイシヨシコ 工場家賃

 

「こうやって書くと」

 

「何のカネが、どこから来て、どこへ行ったか」

 

「自分で説明できるようになる」

「そして、大事なことは……」

 ヤマゲンは続けた。

「会計は報告書や。
 常に、”第三者が見ても分かるか”
 という、客観的な目線が必要や」

「自分がわかることは当然、
 自分しか分からん資料ってのは、
 ワシら税理士も困る」

 と、ヤマゲンは笑った。 

 夏美が、静かに補足する。

 

「通帳は“記録”ですけど、

 この資料は“理解”と"報告"ですね」

 

 ヤマゲンがうなずく。

 

「そうや」

 

「経営は、理解や」


「会計は、報告や」

 ヤマゲンは、別のページを指さした。

 

【●●●クレジット】

 

「これ、なんや?」

 

「クレジットカードの引落です」

 

「一行やな」

 

「でも中身は?」

 

 田中は、黙る。

 

 ヤマゲンは言う。

 

「ガソリンもあれば、工具もある」

 

「高速代もあれば、ネット広告もある」

 

「それを“カード”でまとめたらあかん」

 

「カード会社の明細、エクセルに出力する」

 

「そこに内容説明を書く」

 

「ここで整理しといたら」

 

「会計ソフトでの作業が、一気に楽になる」

「どうせやらなあかん作業は、
 先にやっとけ……
 そういうこっちゃ」

 

 田中は、ゆっくりとうなずいた。

 

「現金は、“点”や」

 

「その日、その瞬間」

 

「でも預金は、“流れ”や」

 

「入って、出て、残る」

 

「この流れが読めるようになったら、

 やっと会社の体温が分かる」


「田中さん、
 資金繰表とか、
 キャッシュフローとか、
 聞いたこと、あるか?」

「あ、はい、
 なんとなく……」

「でも、
 めちゃくちゃ
 難しいイメージが……」

「ワシに言わせたら、
 あれは、
 会社の体温計や」


「いくら、
 売上が良くても、
 カネ回りが悪かったら、
 会社は熱を出しとる」 

「利益が出とっても、
 カネがない、
 残らない、
 それも病気と同じや」

「今、覚えてもらっとる作業は、
 そのような事態を招かんようにするための、
 布石でもあるんや」

 なるほど……
 田中よりも、
 むしろ夏美の方が
 大きく頷いた。
 

 工場の外で、トラックの音がした。

 

 田中は、通帳を見つめる。

 

 これまで、ただの数字だった。

 

 今は、動いて見える。

 

「……先生」

 

「なんや」

 

「預金は、通帳見たらええ、
 残高だけ合えばええ、

 それで終わりやと思ってました」

 

「残高が合うだけやったら、

 当たり前の話や、
 合わへんほうがおかしい」

 

「でもな」

 

 一拍。

 

「残高が合う、は“経理”や」

 

「流れが読める、は“経営”や」

 

 田中の目が、少しだけ変わる。

 

「ほな、次や」

 

 ヤマゲンが通帳を閉じる。

 

「現金は整った」

 

「預金の流れも、
 これから見えるようになる」

 

 間。

 

「次は――」

 

「まだ入ってきてへんカネや」

 

 田中が、顔を上げる。

 

「売掛金や」

 

「請求してるのに、まだ手元に無いカネ」

 

「ここを放っとく社長はな」

 

 ヤマゲンの声が、少しだけ低くなる。

 

「法人化なんか、絶対したらあかん」

 

 工場の空気が、静かに張りつめた。

 

 そのとき。

 

 ヤマゲンは、ポケットをごそごそと探った。

 

「……おじさ、いえ、先生?」

 

 取り出したのは、小さな箱。

 

 イチゴポッキー。

 

「信用の話はな」

 

 一本、くわえる。

 

「甘いようで、甘ない」

 

 ポキッと折れる音。

 

「せやから、甘いもんが要る」

 

 田中は、思わず笑った。

 

 夏美も、くすっと笑う。

 

 張りつめた空気が、少しだけ和らいだ。

 

 土台は、現金。

 

 流れは、預金。

 

 そして――信用は、売掛金。

 

 物語は、まだ続く。

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