未払金と預り金の話から、数日。
工場の隅。
旋盤の横に、小さな折り畳み机が置かれている。
その上に、通帳のコピーと、返済予定表。
ヤマゲンは、それを黙って見ていた。
「借入、何本ある」
田中は、少しだけ間を置いた。
「……二本です」
「言うてみ」
「旋盤の分と、運転資金です」
静寂。
旋盤は、何も言わずにそこにある。
「まずは、これやな」
ヤマゲンは旋盤を軽く叩いた。
「五年前、借入で買った」
「はい」
「あと何年残っとる」
田中は予定表をめくる。
「……確か、あと三年くらいです」
「毎月、元本いくら落ちとる」
田中は、すぐに答えられなかった。
口座からは、
利息を含めて、
毎月15万円くらい、
引き落としされている。
だが、元本は曖昧だ。
ヤマゲンは、静かに言う。
「ええか、田中さん、
「借入金はな」
「放っといても減るカネやない」
「元本返済額と利息や」
「どっちも経費ですよね?」
「ちゃう、
返済は、経費やない」
田中が顔を上げる。
「え?」
「経費になるんは、利息だけや」
「元本は、負債が減るだけや」
田中は、うなずきながらも、少し混乱した顔をしている。
「せやからな」
「利益が出てへんのに元本返済が続いたら」
「現金だけが減っていく」
工場の空気が、少しだけ重くなる。
「次は、運転資金や」
ヤマゲンは通帳を指さした。
「これは何のために借りた」
「……資金繰りが厳しいときに」
「旋盤みたいに、形はあるか」
「ありません」
「そうや」
一拍。
「設備資金はな」
「未来を作るための借入や」
「旋盤が稼いでくれる」
「せやから、意味がある」
「でも、運転資金は違う」
ヤマゲンは静かに続ける。
「これはな」
「時間をつなぐための借入や」
田中は黙る。
「借入は悪やない」
「銀行は敵やない」
「銀行はな、信用を金に替えてくれた相手や」
旋盤のモーターが、低く唸る。
「せやけどな」
「借入は、前借りや」
「未来の売上を、今、使うっちゅうことや」
「返済原資は、何や」
「……利益です」
「そや」
「利益がなければ、借入はただの重りや」
田中は、返済予定表をじっと見つめた。
毎月の数字。
規則正しく並ぶ元本。
逃げ場はない。
「短期と長期、分かれとるな」
「はい」
「一年以内に返す分は、短期に振替や」
「決算で忘れたらあかん」
「借入ごとに借入金台帳を作って、
残高も管理するんや」
「銀行からもらった返済予定表では、
ヤマゲンの声は、強くない。
だが、重い。
旋盤に、そっと手を置く。
五年前、この機械は希望やった。
今は、責任や。
「借入はな」
ヤマゲンが言う。
「金の話やない」
「覚悟の話や」
土台は、現金。
流れは、預金。
信用は、売掛金。
責任は、買掛金。
時間は、固定資産。
そして――
借入は、前借り。
未来を、先に使うということ。
田中は、ゆっくりとうなずいた。
「しっかり、
管理して、
返していきます」
静寂。
竹岡税務会計事務所
経営が見えない!を数字でクリアに。
まずは、お気軽に無料相談を。
電話番号:090-7499-8552
営業時間:10:00~19:00
定休日 : 土日祝
所在地 : 大阪府富田林市須賀1-19-17 事務所概要はこちら