ヤマゲンから電話があったのは、
土曜の夕方だった。
着信表示を見た瞬間、
田中 恒一の胸が、
どくん、と鳴った。
(……まさか)
頭に浮かんだのは、
エクセルで作った、
あの架空の修理代請求書だった。
(もう、
バレたんか……?)
一瞬、
指が止まる。
だが、
出ないわけにはいかない。
「……はい、田中です」
『田中さん』
聞き慣れた声。
『明日、日曜ですやろ』
拍子抜けするほど、
軽い口調だった。
『前から言うてたやつです』
『金剛山、
一緒に登りませんか』
一瞬、
頭が追いつかなかった。
登山?
山?
税務の話でも、
帳簿の話でもない。
ましてや
架空請求書の話でもない。
「……登山、ですか」
『せや』
『天気もええみたいやし』
『たまには
体、動かしましょ』
その言葉を聞いて、
田中は、
ようやく息を吐いた。
(……ちゃうんか)
(まだ、
気付いてへんのか)
胸の奥に溜まっていたものが、
すっと下がる。
だが同時に、
別の感情が湧いた。
安堵と、
後ろめたさ。
「……分かりました」
「明日、
よろしくお願いします」
電話を切ったあと、
田中は、
しばらく受話器を見つめていた。
逃げ切れたかもしれない。
そう思った自分が、
少しだけ、
情けなかった。
翌日の日曜日。
朝。
田中 恒一は、
金剛山へと
車を走らせていた。
天気で言えば
いわゆる
絶好の登山日和。
運転席に差し込む
朝の光。
潔白過ぎるほどの
そのまぶしい光が
田中を
よりいっそう、
影へと
追いやる気がした。
300万円。
帳簿に載らない現金。
架空請求書。
そして、
音信不通の麻里子。
(……ヤマゲンは、
気付いてへんかも知れん)
(わざわざ、
自分から言わんでも……)
そんな考えが、
何度も浮かんでは消える。
逃げたい。
だが、
逃げ切れる気も、
しなかった。
金剛山、登山口。
日差しに反して、
朝の空気は、
冷たかった。
ヤマゲンは、
すでに来ていた。
登山慣れした服装。
表情も軽い。
「お、田中さん、おはようさん」
「おはようございます」
田中の声は、
いつもより
少し硬かった。
「ほな、
行きましょか」
「絶好の、
登山日和でっせ」
ヤマゲンはそう言って、
登山道の方を指さした。
歩き始めは、
まだ余裕があった。
鳥の声。
木々の匂い。
だが、
次第に傾斜がきつくなる。
息が上がる。
太ももが張る。
田中の頭の中では、
300万と麻里子が、
何度も何度も
行き来していた。
(なんで、
あんなことを……)
(なんで、
嘘でごまかそうと
したんや)
横を見ると、
ヤマゲンは平然としている。
息一つ乱れていない。
(この人、
なんでこんなに
体力あるんや……)
山頂が近づくころ。
田中は、
完全にクタクタだった。
息は荒く、
足は重い。
だが、
ヤマゲンはピンピンしている。
「あー」
ヤマゲンが言った。
「腹、減りましたなぁ」
「ちょうど昼ですし」
「山小屋、
ありまっせ」
金剛山、山頂。
食堂が併設されていた。
二人は、
そのまま中に入った。
田中は、
椅子に座った瞬間、
深く息を吐いた。
(今や)
(今、言わな)
これ以上、
この人に
嘘を重ねたくなかった。
「ヤマゲンさん」
田中は、
意を決して口を開いた。
その瞬間。
「田中さん」
ヤマゲンが、
さらっと言った。
「どっちでっか?」
(……え?)
田中は、
言葉を飲み込んだ。
「せやから」
「うどん」
「きつねと、たぬき」
「どっちにします?」
(……え、うどん?)
「あ、あぁ……」
田中はひと呼吸おいて、
「きつね」とつぶやいた。
「おねーちゃーん」
ヤマゲンが声を張る。
「きつねうどん、
2つな!」
ほどなくして。
「おまたせしました」
女性店員が、
盆を持って現れた。
田中は、
なにげなく顔を上げる。
――そして、
凍りついた。
麻里子だった。
「……な」
「なんで……」
「こんなとこに……」
声が震えた。
麻里子は、
にやりと笑った。
「田中さん」
「女のあんな言葉に
騙されたら
アカンで」
そう言って、
田中のうどんの横に
封筒を置いた。
ずしり。
中身は、
分かっていた。
300万円。
「ど、どういうことやねん……」
田中の頭は、
完全に追いついていなかった。
そのとき。
ヤマゲンが、
ぽつりと言った。
「300万の
事業主貸が」
うどんを一口すすり、
「事業主借として
帰ってきましたな」
田中は、
何も言えなかった。
湯気の立つうどんと、
麻里子と、
封筒と、
何事もなかったかのように
箸を動かすヤマゲンを
見ているしかなかった。
金剛山、山頂。
田中の人生は、
この日、
静かに、
しかし確実に、
向きを変え始めていた。
数日後。
クラブ・リバプールに行っても、
麻里子はいなかった。
「今日はお休みです」
そう言われた。
翌日も。
その翌日も。
電話は、
つながらない。
メッセージは、
既読にならない。
田中 恒一は、
工場の隅で、
一人、立ち尽くしていた。
消えた。
そう思った瞬間、
胃の奥が、
きゅっと縮んだ。
300万円。
現金。
帳簿に載らない金。
「……どうしよう」
誰にも言えない。
妻には、
絶対に無理だ。
ヤマゲンにも、
言えるわけがない。
そのとき、
ふと、
頭に浮かんだ。
機械の修理代。
最近、
調子の悪い設備は、
確かにある。
修理したことにすればいい。
請求書と領収書さえ、
あれば。
「……修理したかどうかなんて、
妻には分からん」
「ヤマゲンにも……
分からへんやろ」
そう思いたかった。
田中は、
パソコンを立ち上げた。
エクセル。
白い画面。
カーソルが、
点滅する。
「……そうや」
「そうしよ」
誰に言うでもなく、
つぶやいた。
数日後。
ヤマゲンの税理士事務所。
午後の静かな時間。
「なっちゃん」
ヤマゲンが、
書類から目を離さずに言った。
「気ぃついたら、
もう一か月やな」
「ほんまや」
夏美は、
少し照れたように笑った。
正直、
ヤマゲンは思っていた。
一週間も持たんやろ。
だが、
夏美は意外と続いていた。
コピーも、
ファイル整理も、
雑用も。
そして何より、
数字の飲み込みが早い。
それもそのはず。
夏美は、
大学の商学部に在籍中、
簿記2級の資格を
取っていたのだ。
「なっちゃん」
ヤマゲンは、
ふと顔を上げた。
「外、出てみるか」
「え?」
「顧問先回りや」
夏美は、
一瞬、目を丸くした。
「いきなり
大きい会社は無理やからな」
「個人事業のとこ」
「……田中さんの工場くらいが、
ちょうどええ」
ヤマゲンは、
そう言って、
軽く笑った。
「真面目な人や」
「接しやすいで」
翌日。
町工場。
夏美は、
少し緊張した面持ちで、
帳簿を開いていた。
請求書。
領収書。
現金出納帳。
銀行通帳。
一つずつ、
照合していく。
そのとき。
300万円。
修理代。
金額が、
目に留まった。
(……高っ!)
思わず、
顔を上げる。
工場の奥で、
田中が作業をしている。
「田中さん」
夏美は、
声をかけた。
「機械の修理代って
高いもんなんですね」
「あー、それなぁ」
田中は、
笑って手を止めた。
「ほんま、
困ったもんや」
それだけ。
そのとき。
夏美の視界に、
ふと、
田中のパソコンの画面が入った。
開かれているのは、
エクセル。
請求書。
(……あれ?)
一瞬、
思考が止まる。
(売上の請求書なら、
自分で作る)
(でも……)
(修理代の請求書は、
相手が出すもの)
(なんでそれが……
エクセルの状態で
田中さんのパソコンに?)
胸の奥に、
小さな違和感が残った。
夏美は、
何も言わなかった。
ただ、
請求書に書かれた
業者名。
住所。
電話番号。
そして、
インボイス番号。
そっと、
メモをした。
簿記のことは
多少分かっても、
税法に関しては
まださっぱり分からない
夏美であった。
しかし、
インボイス番号が、
消費税の関係で
どうやら重要な番号であることは
なんとなく分かっていた。
分かっていた、
というよりも、
正しく言えば、
いつも源太郎が
「インボイス、インボイス」と
顧問先に対して
言っている光景が
記憶に残っていた。
源太郎の事務所。
夕方。
「どうやった?」
源太郎が聞いた。
「田中さんの工場」
「親切にしてくれはったか?」
「うん」
夏美は、
少し間を置いて言った。
「……でも」
「ちょっと、
気になることがあって」
説明を聞いた源太郎の表情が、
ゆっくりと変わる。
「……ほう」
パソコンを立ち上げる。
国税庁の
インボイス番号検索サイト。
夏美が控えてきた番号を、
打ち込む。
該当なし。
住所。
社名。
電話番号。
どれも、
存在しなかった。
ヤマゲンは、
画面を見つめたまま、
小さく息を吐いた。
「……田中さん」
低く、
つぶやく。
「やりよったな……」
そして、
一瞬だけ、
目を閉じた。
「……せやけど」
ポツリと続ける。
「なんでや」
その答えが、
重たいものであることを、
このときのヤマゲンは、
もう、
分かっていた。
「なっちゃん……」
夜。
工場のシャッターを下ろしたあと、
田中 恒一は、車を市内へ走らせた。
家とは逆方向。
ハンドルを握る手に、
少しだけ力が入る。
その店は、
派手ではない。
看板も控えめで、
入口はどこか落ち着いている。
クラブ・リバプール。
田中が、
ここに通うようになったのは、
いつからだっただろう。
「いらっしゃいませ」
「お待ちしてました」
柔らかい声。
彼女は微笑んだ。
年は、
田中よりずっと若い。
でも、
話し方は大人びていて、
どこか影があった。
「今日もお仕事、大変でした?」
その一言で、
胸の奥が、
すっと軽くなる。
「麻里子ちゃんの顔を見たら
ホッとするわ」
「うれしい!」
「わたしも
田中さんの顔見たら
なんだか安心しちゃうな」
社交辞令だと
分かっている。
しかし、
一日中機械を回し、
疲れた体だと
分かっていても、
熱い血潮が
否応なしに
頚椎から込み上げてくる。
やや心拍数が上がる。
「田中さん、
ボトルあと少しやから
新しいの、イイよね?」
うん、と田中がうなずくと
麻里子は
「お願いしまーす」と
ボーイを呼んだ。
家では、
弱音は吐かない。
工場では、
迷いを見せない。
でも、
ここでは違った。
彼女は、
田中の話を、
否定せずに聞いた。
それだけで、
十分だった。
最初は、
得意先の社長に
連れてきてもらったのが
きっかけだった。
そして、
何度か
連れてきてもらううち、
馴染みの女の子も増えてき、
自ずと
通う回数は、
増えていった。
ボトル。
麻里子。
指名。
同伴。
財布は、
軽くなっていく。
家では、
妻が不思議そうに言った。
「最近、
まとまったお金、
ちょこちょこ無くなってへん?」
「……そうか?」
「機械も
結構、
修理代とか
消耗品とか
かかるからなぁ」
田中は、
目を合わせなかった。
ある夜。
クラブ・リバプール。
麻里子は、
珍しく、
深刻な
顔を見せた。
「どないしたん、
麻里子ちゃん?」
「えらい今日は
"お澄ましさん"やん」
「……実は」
声を落とす。
「ちょっと、
困ってて」
「なんや?
変な男にでも
言い寄られてるんか?」
「それは、あらへんよ」
麻里子は
少しだけ表情を緩めた。
「わたし、
田中さん以上に
優しい人、
おらへんと思ってるもん」
「あー、よかった、
麻里子ちゃんは
オレのもんやからなぁ」
水割りの氷が
白々しく
カラリ、
と音を立てる。
「実は・・・」
と言うと、
麻里子は
田中の耳元に、
その艷やかな
グロスで覆われた
唇を
近づけた。
麻里子の
体温が
吐息を通して
田中の耳に伝わる。
「ママには・・・
絶対に、
言わんといて欲しいの」
話は、
よくあるものだった。
田舎で一人暮らしの父親。
入院。
手術。
自分は一人娘。
これまで
昼の仕事と夜の仕事を
掛け持ちして、
なんとか
仕送りをしてきたこと。
田中は、
黙って聞いていた。
なんとなく
先の言葉も
予想できた。
しかし、
目を潤ませながら
少し紅潮した表情の
麻里子を
見ていると
真剣な彼女には
申し訳ないが、
改めて
「いい女」だと思った。
水割りが
心地よく回る。
その数字は、
田中の年商の中で
決して小さくはなかった。
「300万、いるんです」
カラン、と
グラスが鳴り、
数字が、
頭の中で反響した。
工場の設備。
税金。
運転資金。
瞬時に、
いろんなものが、
よぎる。
しかし、
麻里子の
その目を見た瞬間、
田中は
考えることをやめた。
「……分かった」
その一言で、
彼女は、
涙を浮かべた。
翌日。
現金。
帳簿には、
載らない金。
理由の説明も、
できない金。
今日は休みだという
麻里子と
夜に待ち合わせた。
そして、
二人は、
長い時間を過ごした。
それ以上のことは、
田中の記憶の中だけに、
残った。
ヤマゲンの税理士事務所。
来客中だった。
机の向こうには、
別の顧問先の社長。
そのとき。
ドアが、
勢いよく開いた。
「源太郎おじさーん!」
やけに明るい声。
場の空気が、
一瞬で止まった。
「こらっ!」
ヤマゲンが、
思わず声を荒げる。
「来客中や!」
社長が、
目を丸くした。
「あっ」
若い女性は、
ぴたりと止まる。
そして次の瞬間、
ぺろっと舌を出した。
「ごめんなさい」
ぺこりと
頭を下げる。
ヤマゲンは、
額を押さえた。
「……まったく」
社長に向き直る。
「すんません。
身内でして」
社長は、
苦笑いした。
「いえ……
お元気ですね」
面談が終わり、
社長が帰ったあと。
ヤマゲンは、
改めて彼女を見た。
「……で?」
ヤマゲンは
イチゴポッキーを
1本つまみ出した。
「なっちゃん、何しに来たんや?」
「今日からです!」
彼女は、
さも当然のように言う。
「お世話になります!」
「誰が決めた?」
「お母さん!!」
即答だった。
ヤマゲンは、
深くため息をついた。
姉の顔が、
頭に浮かぶ。
「源太郎おじさん、
ひょっとして
お母さんから
なんも聞いてへんの?」
姉からは
そう言えば
しばらく前に
電話があった。
娘の夏美が
「そういえば、聞いとる、お母さんから」
「良かった!」
「もし、勝手に来てたら、
わたし、KYやんもんね!」
「なんやねん、ケーワイって」
「大阪で有名なとんかつ屋か?」
「源太郎おじさん、相変わらず面白なぁ」
アハハと夏美は笑った。
夏美が小さい頃、
源太郎は
よく遊んでやったものだ。
その頃の
表情と
何も変わっていない。
そう言えば、
姉も
夏美と全く同じ
笑い方をする。
なんとなく、
夏美を見ていると
姉が思い出された。
久しく会っていない。
(元気にしてるんやろうか・・・)
すると突然、
夏美は
姿勢を正し、
凛とした表情を
源太郎に見せた。
「改めまして、
就職浪人中の
一条 夏美です」
「分かっとるわ・・・」
「今日から、
よろしくお願いします!」
「しゃーないなぁ・・・」
と言う源太郎の言葉に
重ねるように
夏美は言った。
「ところで、源太郎おじさん」
そんなものはマダだと
源太郎は首を横に振った。
「えー、
入社日やのに
名刺も用意してくれてへんの?!」
「……明日にでも発注しといたるわ」
ヤマゲンは、
内心で思った。
どうせ一週間もしたら、
飽きて辞めるだろう。
だから、
明日も
発注するつもりはない。
「とりあえず、なっちゃん・・・」
ヤマゲンは言った。
「今日は
コピーと
ファイル整理」
「はい!」
と元気に返事をした。
そして、
キョロキョロと
事務所の中を見回している。
「へえー」
「ここが、
源太郎おじさんの職場なんや」
「感想はいらん」
「えー」
源太郎は、
小さく首を振った。
やれやれ。
面倒なことが、一つ増えた。
大和源太郎税理士の事務所。
午後の静かな時間。
エアコンの音だけが、
低く響いている。
机の上には、
見慣れた試算表が一枚。
そして、
もう一枚。
田中は、
その二枚を見比べていた。
「……これ」
思わず、声が漏れた。
「同じ数字、
ですよね?」
「ええ」
ヤマゲンは、
あっさり言った。
「同じ売上、
同じ利益
です」
「左が今」
「右が、
法人にした場合」
田中は、
数字を追った。
売上。
経費。
利益。
そして、
税金。
「……あれ?」
眉をひそめる。
「思ってたほど、
変わらへん
ですね」
ヤマゲンは、
何も言わない。
イチゴポッキーを一本、
袋から出す。
「田中さん」
ポッキーを机に置いたまま、
ヤマゲンは言った。
「法人にしたら
税金が安なる」
「この話な」
少し笑う。
「半分、ウソです」
田中は、
思わず顔を上げた。
「確かに」
ヤマゲンは続ける。
「所得が大きくなったら」
「個人の
累進課税より」
「法人税の方が
率は低くなる」
「でもな」
イチゴポッキーを一本立てる。
「そこだけ見たら
危ない」
「まず」
「税金の種類が増えます」
ヤマゲンは、
指を折りながら言った。
「法人税」
「法人住民税」
「事業税」
「それに」
少し間を置く。
「均等割な」
田中は、
首を傾げた。
「個人事業の
田中さんは
知らんで
当然や」
「法人になったら・・・」
「赤字の年でも」
「必ず払わんとアカン
均等割っちゅう税金
があるんですわ」
田中は、
小さく息を吐いた。
「それから」
ヤマゲンは、
少し声を落とした。
「社会保険」
田中の表情が、
引き締まる。
「法人になったら」
「原則、
加入です」
「社長一人でも」
「会社と個人で
半分ずつ」
「毎月、
固定で出ていきます」
「売上落ちても
関係ありません」
田中は、
無言になった。
「ここまで聞いて」
ヤマゲンは、
田中を見る。
「法人の方が
安いと思います?」
田中は少し言葉に詰まる。
「……正直、
微妙ですね」
「それが、
普通の答えです」
ヤマゲンは、
即答した。
「せやけどな」
ここで、
話を切り替える。
「法人にした方が
ええ人
は、
確実におる」
田中は、
顔を上げた。
「それは・・・」
「利益を
全部使い切らへん人」
「会社に
お金を残したい人」
「人を雇う予定がある人」
「自分が
現場から
少しずつ
離れたい人」
「そして・・・」
「税金の安さ
より」
はっきり言う。
「使い方
が変わる人です」
田中は、
自分を振り返った。
今は、
稼いだ分を
ほぼ生活に回している。
会社に
残す余裕は、
正直まだ少ない。
ヤマゲンは、
ポッキーをかじった。
カリッ。
「田中さん」
「今日の数字見て」
「法人にしたら
得か損か
を決める必要は
ありません」
「決めるのは」
少しだけ、
声を柔らげる。
「この先、
どう働きたいか
です」
「税金は」
「その結果として
ついてくるだけ」
田中は、
深く息を吐いた。
頭の中で、
「法人=節税」
という単純な図式が、
崩れていく。
「ヤマゲンさん」
「……法人化って」
「数字見る前に
決めたら
あかんですね」
「当たり前です」
ヤマゲンは、
イチゴ柄のネクタイを整えた。
「数字見ずに作る会社ほど、
長持ちせえへん」
事務所を出たあと。
田中は、
少し足取りが重かった。
でも、
不思議と後悔はなかった。
安くなるかどうか。
その問いは、
もうどうでもよかった。
代わりに残ったのは、
もっと本質的な疑問。
この仕事を、
どんな形で
続けたいのか。
町工場に差し込む日差しが、
以前より少し強く感じられた。
機械の音は止まらない。
注文も、
問い合わせも、
確実に増えている。
田中 恒一は、
作業台に腰を下ろし、
汗をぬぐった。
悪くない。
むしろ、
順調だ。
最近、
周りの声が変わってきた。
「田中さんとこ、
だいぶ儲かってきてるやろ」
「そろそろ、
法人にした方が
ええんちゃう?」
取引先。
同業者。
昔からの知り合い。
「法人にしたら
信用ちゃうで」
「株式会社ってだけで
見られ方、変わる」
そんな言葉が、
妙に引っかかった。
夜。
帳簿を閉じたあと、
田中は天井を見た。
「……法人にした方が、
トクなんかな」
税金。
信用。
周りの評価。
頭の中で、
整理がつかない。
翌日。
ヤマゲンの事務所。
イチゴ柄のネクタイは、
今日も控えめだ。
机の上には、
試算表。
田中は、
少し照れくさそうに切り出した。
「ヤマゲンさん」
「最近、
よう言われるんですわ」
「“儲かってきたら
法人にした方がええ”
って」
「信用も上がる、
言われまして」
ヤマゲンは、
すぐには答えなかった。
イチゴポッキーを一本、
袋から取り出す。
「田中さん」
静かに言った。
「それ、
半分は正解です」
田中は、
少し身を乗り出した。
「確かにな」
ヤマゲンは、
淡々と言う。
「法人の方が
社会的な信用
は上がります」
「銀行」
「大手の取引先」
「新規の企業」
「個人事業より
法人の方が
話が早い
場面は多い」
田中は、
ゆっくりうなずいた。
実感があった。
「でもな」
ヤマゲンは、
ここで一度、言葉を切った。
「“法人”と一口に言うても、
中身はピンキリです」
ポッキーを
指でくるりと回す。
「今な」
「資本金、
1円でも
会社は作れます」
「極端な話・・・
個人事業と
何も変わらん規模の
スモール法人が
山ほどあります」
田中は、
少し驚いた。
「じゃあ、
法人やからって
全部が信用される
わけやないんですね」
「そのとおり」
即答だった。
「もう一個」
ヤマゲンは、
声を少し落とした。
「これ、
あんまり
言われへん話ですけど」
「法人作っても、
5年持たん会社、
めちゃくちゃ多い」
田中は、
言葉を失った。
「個人事業より
早よ潰れるケースも
あります」
「理由は単純でな」
「会社にしただけで、
中身が変わってへん
からです」
「田中さん」
ヤマゲンは、
はっきり言った。
「法人化ってな」
「税金の話だけでも」
「信用の話だけでも」
「肩書きの話でも
ありません」
「中身が追いついてへん法人
ほど、しんどいもんはない」
「固定費は増える」
「責任も増える」
「やめたくても
簡単には
やめられへん」
田中は、
腕を組んだ。
確かに、
最近は忙しい。
でも、
人は増えていない。
全部、
自分が回している。
「ヤマゲンさん」
田中が、
ゆっくり言った。
「……法人にしたら、
楽になると思ってました」
「ほぼ、逆ですわ」
ヤマゲンは、苦笑した。
「せやけどな」
ヤマゲンは、
少しだけ表情を和らげた。
「それでも法人化を考え始めた
ってこと自体は」
「悪いことやない」
「それはな」
「今のやり方の限界
が、
見え始めてる証拠や」
田中は、
ハッとした。
「次はな」
ヤマゲンは、
軽く笑った。
「数字で見ましょ」
「今のまま個人で行ったら
どうなるか」
「法人にしたら
どう変わるか」
「税金だけやなく」
「働き方も
責任も
全部込みで」
ポッキーをかじる。
カリッ。
帰り道。
田中の頭の中から、
「法人にしたらトク」
という言葉が、
少し薄れていた。
代わりに残ったのは、
もっと重たい問い。
自分は、
この先
どこまでやりたいのか。
法人化は、
まだ決断じゃない。
でも、
避けて通れないテーマに
なった。
田中 恒一は、工場の電気を一つずつ落としていた。
機械の音が止まり、
静けさが戻る。
その静けさの中で、
ふと、頭をよぎった。
「……青色申告って、
そんなに大事なんかな」
きっかけは、
同業者との何気ない会話だった。
「うちは白やで。
別に困ってへん」
軽い口調。
深い意味は、なかったはずだ。
でも、
なぜか引っかかった。
翌日。
ヤマゲンの事務所。
イチゴ柄のネクタイは、
今日も一見すると地味だ。
でも、
よく見れば、
やっぱりイチゴだ。
「ヤマゲンさん」
田中は、
前置きなしに聞いた。
「青色申告って、
正直、
そこまで重要なんですか」
ヤマゲンは、
すぐには答えなかった。
机の上で、
イチゴポッキーを一本転がす。
「……田中さん」
静かに言う。
「それな」
「保険いらんでも
生きていけますか?
って聞かれてるのと
同じですわ」
田中は、
一瞬、言葉に詰まった。
「生きてはいけます」
「せやけど」
ヤマゲンは続ける。
「何かあった瞬間、
一発で詰みます」
「たとえばな」
ヤマゲンは、
さらっと言った。
「パソコンとか
機械、買ったとします」
「10万円以上やったら」
一拍も置かず続ける。
「原則、固定資産です」
「耐用年数で
毎年ちょっとずつ
減価償却」
田中は、
思わず顔をしかめた。
「でもな」
ヤマゲンは、
指を一本立てる。
「ここから
申告区分で差が出る」
「青色申告してたら
1点が10万円以上30万円未満の固定資産は
その年に全額、経費にできますねん」
田中は、
目を見開いた。
「……一発で?」
「そうです」
「ただし」
ヤマゲンは、
すぐに釘を刺す。
「年間上限、
300万円まで」
「超えた分は」
淡々と言う。
「アウト」
「固定資産扱いで
減価償却」
「ここ、
管理できてへん人
多いです」
「しかもな」
ヤマゲンは、
少し声のトーンを変えた。
「2026年4月1日以降取得分から」
「この30万円」
「40万円未満
まで緩和されます」
田中は、
思わず身を乗り出した。
「枠、
広がるんですね」
「せやけど」
すぐに続く。
「青色申告が前提
です」
「白色は、今まで通り
10万円以上は、原則、減価償却」
田中は、
小さく息を吐いた。
「同じ買い物で、
ここまで違うんですね」
「それが
税務です」
「ただな」
ヤマゲンは、
ここで少し間を置いた。
「白色でも
使える特例
もあります」
田中は、
少し驚いた。
「10万円以上
20万円未満」
「この固定資産」
「一括償却資産
って扱いにできます」
「名前、
ややこしいですけど」
にやっと笑う。
「一発で
経費ちゃいます」
「3年間で
均等償却
です」
「これはな」
「青色でも
白色でも
使えます」
「しかも」
指を一本立てる。
「年間上限、
ありません」
田中は、
ゆっくりうなずいた。
「名前に
だまされたら
あかんですね」
「せやから
税理士がおるんです」
「もう一個」
ヤマゲンの声が、
少しだけ低くなった。
「ここ、
ほぼ全員
忘れてます」
田中は、
背筋が伸びた。
「パソコンでも
機械でも」
「固定資産を
持ってたら」
「毎年1月」
「市役所に」
「償却資産申告書
出さなあきません」
「前年までに
取得した固定資産を
全部まとめて」
田中は、
眉をひそめた。
「……経費にしたやつも?」
「含まれます」
即答だった。
「30万円未満で
一発経費にしたやつも」
「2026年以降の
40万円未満も」
「全部、
償却資産税の対象」
「累計が」
「150万円超えたら」
「1.4%」
「毎年、
払います」
田中は、
思わず天井を見た。
「でも」
ヤマゲンは、
指を一本立てる。
「さっき言うた
一括償却資産」
「10万〜20万で
3年均等のやつ」
「これは
償却資産税の対象外
です」
田中は、
大きく息を吐いた。
「……知らんと
怖すぎますね」
償却資産税の話が終わり、
田中は、少し疲れた表情で言った。
「……青色申告って、
思ってたより
やること多いですね」
「そら、
そうです」
ヤマゲンは、
あっさり言った。
「そう言えば、青色の一番デカい特典
まだ話してまへんでしたな」
田中は、
顔を上げた。
「……65万円控除、
ですよね?」
「それです」
ヤマゲンは、
指を一本立てた。
「多い誤解がな」
ヤマゲンは、
静かに言う。
「青色にしたら
自動的に
65万円引かれる
思てる人」
「それ、
完全にアウト
です」
田中は、
苦笑した。
「……正直、
ちょっと
そう思ってました」
「ほな、
今日聞けて
正解です」
ヤマゲンは、
淡々と続ける。
「65万円控除を
取るには」
「条件があります」
「まず」
「複式簿記」
「家計簿レベル
ちゃいます」
「貸借対照表と
損益計算書が
ちゃんと
つながる帳簿」
「これが
前提です」
田中は、
小さくうなずいた。
「次」
ヤマゲンは、
間を置かず言う。
「電子申告」
「紙で出したら」
「65万円は
もらえません」
「減って」
「55万円
です」
「さらに」
「電子申告もせず
帳簿も甘かったら」
「10万円
まで落ちます」
田中は、
思わずため息をついた。
「差、
大きいですね……」
「せやから」
ヤマゲンは、
即答する。
「65万円控除は
“選ばれた人”の制度
なんです」
「あと」
ヤマゲンは、
少し声を落とした。
「これ、
正直な話ですけど」
「今後、
要件は
緩くなりません」
「税制改正で」
「“形だけ青色”」
「“中身分かってへん人”」
「切られていきます」
田中は、
背筋が伸びた。
「65万円控除ってな」
ヤマゲンは、
はっきり言った。
「国からの
信用ポイント
みたいなもんです」
「ちゃんと
数字を管理して」
「電子申告もして」
「ちゃんと
説明できる人」
「そこまで
できてる人だけ
どうぞ、
って話です」
「さらにな」
「税制改正後は
電子帳簿保存したり
請求書とかの電子保存まですると
65万控除が75万控除になりますねん」
ヤマゲンは、
イチゴポッキーを一本かじった。
カリッ。
「田中さん」
「青色申告ってな」
「節税のための
裏技
ちゃいます」
「固定資産の扱いも」
「65万円控除も」
「全部」
少し間を置く。
「“管理できる人”に
有利な制度
なんです」
「楽したい人には
向いてへん」
「でも」
語気を和らげる。
「会社を続けたい人には
一番、
味方になる制度
です」
田中は、
深くうなずいた。
青色申告。
ただの申告区分だと
思っていた。
でも今は、
会社の覚悟・体力・姿勢
全部を問われている
制度に見えていた。
「ヤマゲンさん」
田中が言う。
「……これ、
青色に“なる”前に
ちゃんと
覚悟決めな
あかんですね」
「正解です」
ヤマゲンは、
イチゴ柄のネクタイを
整えた。
「青色は
“なってから考える”
制度ちゃいます」
「考えた人だけが
使いこなせる制度
です」
田中はめまいがしそうな思いだった。
「せやけど」
ヤマゲンは言った。
「そのために
顧問税理士が付いてますねん」
(あ、ポッキー、足元に一本落ちとった!)
嬉しそうな顔で
無邪気にポッキーを拾い上げるヤマゲンを見て
田中は微笑ましくも
頼もしく思った。
大和源太郎税理士。
ヤマゲン先生。。。
ヤマゲンさん。。。
この人、ホンモノや。
税務調査が終わった翌日。
田中 恒一は、
何もない事務所で、
一人、机に向かっていた。
調査官はいない。
書類も片付いている。
なのに、
妙に落ち着かない。
「終わった・・・んですよね?」
その日の夕方、
ヤマゲンの事務所に顔を出した。
「終わりましたで」
ヤマゲンは、
あっさり言った。
イチゴポッキーを一本、
かじりながら。
「じゃあ、
これで終わりですね?」
田中がそう聞くと、
ヤマゲンは首を横に振った。
「ここからが、
本番です」
その言葉に、
田中は少し驚いた。
ヤマゲンは、
調査結果のメモを机に置いた。
「調査終わった直後ってな」
「だいたいの人が」
「“気ぃつけます”で終わります」
「それ、意味ないです」
きっぱり言う。
「大事なんは
なぜ、そこがズレたかです」
売上計上のタイミング。
経費の説明不足。
書類の保存方法。
「ミスそのものより・・・
仕組みです」
「次」
ヤマゲンは、
少しトーンを落とす。
「調査後に
一番あかんのは」
「“誰が悪かったか”
探すことです」
田中は、
思い当たる節があった。
「事務の人が…」
「それ、
違います」
即答だった。
「人が変わったら
また起きます」
「せやから」
「人に頼らん流れを作る」
これが、
調査後の一番の仕事です」
「三つ目」
ヤマゲンは、
少しだけ笑った。
「これ、
意外とやらへん」
「税務署が
どこを見たか
社内で共有する」
田中は、
はっとした。
「確かに、
自分だけで
分かった気に
なってました」
「それ、
危険です」
「社長だけ
分かってても
現場が変わらんかったら
また、
同じとこ突かれます」
「最後」
ヤマゲンは、
はっきり言った。
「次の調査は、
必ずあります」
田中は、
思わず苦笑した。
「脅しですか」
「現実です」
淡々と続ける。
「せやから」
「今回で
終わったと思わんこと」
「今回を
基準にすること」
「これが」
指を一本立てる。
「一番、賢いやり方です」
ヤマゲンは、
イチゴポッキーの箱を閉じた。
「田中さん」
「税務調査ってな」
「点数付けの場とちゃいます」
「会社の弱点チェックです」
「せやから」
「終わったあとに
何も変えへん会社は・・・」
少しだけ、
厳しい声になる。
「同じこと、
繰り返します」
田中は、
深くうなずいた。
調査は、
終わった。
でも、
会社は続く。
「ヤマゲンさん」
田中が言う。
「……税務調査って」
「“嫌な思い出”にするか」
「“会社を強くした出来事”にするか」
「選べるんですね」
「せやから・・・」
ヤマゲンは、
にやっと笑った。
「顧問税理士は、
調査の“後”が
本番なんです」
イチゴ柄のネクタイが、
少しだけ揺れた。
ヤマゲンは、
珍しく何も説明せず、
コーヒーを一口飲んだ。
イチゴポッキーも、
まだ開けない。
「田中さん」
静かに言う。
「税務調査ってな」
「来るか、来えへんか
より」
「来たときに
どうなるか
の方が、
よっぽど大事です」
田中は、
黙ってうなずいた。
「まずな」
ヤマゲンは、
はっきり言った。
「慌てる会社の社長ほど、
一人で何とかしようとします」
田中は、
耳が痛かった。
「調査の連絡来た瞬間・・・
◯ネット検索
◯知り合いに電話
◯昔の資料をひっくり返す」
「これ、
だいたい失敗パターンです」
「逆に」
少し間を置く。
「慌てへん会社は」
「まず最初に
顧問税理士に電話します」
「それだけでな」
ヤマゲンは、
軽く肩をすくめた。
「半分、終わってます」
「二つ目」
ヤマゲンは、
棚の方を指した。
「書類が
どこにあるか
分かってる会社」
「これ、
めちゃくちゃ強いです」
田中は、
思わず苦笑した。
「探し物してる時点で」
「調査官はな」
「“管理が甘い”
って判断します」
「逆に」
「すぐ出てくると」
トーンが変わる。
「“整ってる会社”
になります」
「三つ目」
ヤマゲンは、
少し意外なことを言った。
「完璧やと思ってない会社」
田中は、
首をかしげた。
「完璧ちゃう方が
ええんですか?」
「ええ」
即答だった。
「“絶対問題ないです”
って会社ほど」
「一個出たら
一気に崩れます」
「慌てへん会社は」
淡々と言う。
「“ズレてる可能性はある”
前提で来てます」
「せやから」
「一個指摘されても」
「“そこですね”
で済むんです」
「四つ目」
「これ、
めっちゃ大事です」
ヤマゲンの声が、
少し強くなる。
「修正は、
負けちゃいます」
「でもな」
「揉める方が、
よっぽど負け
です」
田中は、
深くうなずいた。
「慌てへん会社は」
「修正が必要なら」
「事実として
淡々と受け止めます」
「感情、
入れません」
「最後」
ヤマゲンは、
少し笑った。
「これ、
意外でしょ」
「調査が始まると」
「“今日で何日目や”
“いつ終わるんや”
って気になる」
「でもな」
指を一本立てる。
「終わりを気にする会社ほど、
余計なことします」
「慌てへん会社は」
「やることだけ
淡々とやる」
「結果」
あっさり言う。
「早く終わります」
ヤマゲンは、
ここでようやく
イチゴポッキーを開けた。
一本、
口に運ぶ。
カリッ。
「田中さん」
「税務調査ってな」
「度胸の問題
ちゃいます」
「準備と
考え方の問題
です」
「来たらどうしよう、
やなくて」
「来ても
いつも通りやれるか」
「そこです」
田中は、
大きく息を吐いた。
不安は、
完全には消えない。
でも、
「どう振る舞えばいいか」は
見えてきた。
「ヤマゲンさん」
田中が言う。
「……税務調査って」
「“イベント”やなくて」
「“延長戦”
みたいなもんですね」
「ええこと言いますやん」
ヤマゲンは、
イチゴ柄のネクタイを
軽く整えた。
「日常がちゃんとしてたら、
延長戦も
ちゃんと戦えます」
ヤマゲンは、
売上表でも
決算書でもなく、
試算表を机に広げた。
「田中さん」
ネクタイのイチゴ柄を、
指で軽く押さえながら言う。
「税務調査を
完全に防ぐ方法
は、ありません」
田中は、
正直にうなずいた。
「……ですよね」
「せやけどな」
ヤマゲンは、
少しだけ口角を上げる。
「呼ばれにくくする会社
は、
作れます」
「一つ目」
試算表を
トン、と叩く。
「月次で数字を
見てる会社」
「これだけでな」
はっきり言う。
「調査対象から
一段、外れます」
田中は、
少し意外そうだった。
「税務署な」
ヤマゲンは続ける。
「“決算だけ
キレイな会社”
より」
「毎月、
同じ温度で
数字見てる会社
を信用します」
「決算月だけ
急に動く数字」
「これが
一番、
怪しまれます」
「二つ目」
今度は、
売掛金一覧。
「売上と入金のズレ」
「これな」
声が少し低くなる。
「説明できたら
問題ない」
「説明できへんかったら」
一拍も置かず言う。
「調査理由
になります」
請求日。
納品日。
入金日。
「この三つが
頭の中で
つながってる会社」
「ほぼ、
呼ばれません」
「三つ目」
ヤマゲンは、
消費税申告書を
横に置いた。
「消費税」
短く言う。
「これはな」
「利益の話ちゃいます」
「資金繰りの話
です」
田中は、
第30話を思い出していた。
「売上入金時点で」
「消費税分を
頭の中で
切り分けてる会社」
「これ、
めちゃくちゃ
強いです」
「逆に」
「消費税を
経費感覚で
見てる会社」
ヤマゲンは、
首を横に振る。
「だいたい、
どこかで
歪みます」
「四つ目」
領収書ではなく、
予定表を指す。
「経費な」
「使ったあとに
考える人、
多いですけど」
「本当は」
少し身を乗り出す。
「使う前に
考える」
「これ、
めちゃくちゃ
大事です」
「使う前に」
「誰と
何のために
どこにつながるか」
「これ、
一言で言えたら」
にやっと笑う。
「ほぼ、
セーフ
です」
「最後」
ヤマゲンは、
田中を見る。
「社長が
自分の会社の数字を
語れること」
「完璧で
ある必要はないです」
「でも」
指を一本立てる。
「売上
利益
消費税」
「この三つを」
「自分の言葉で
説明できる」
「これだけで」
静かに言う。
「調査官の見る目、
変わります」
ヤマゲンは、
ここでようやく
イチゴポッキーを一本取った。
カリッ。
「田中さん」
「税務調査ってな」
「突然来るイベント
ちゃいます」
「日常の積み重ねの
結果
です」
「せやから」
「今日から
一個ずつ
整えていったら」
少し笑う。
「気づいたら、
呼ばれにくい会社
になってます」
田中は、
深く息を吐いた。
怖がる話だと
思っていた税務調査が、
少しだけ
現実的に見えた。
「ヤマゲンさん」
田中が言う。
「……税務調査って」
「対策、
今日からできるんですね」
「せやから」
ヤマゲンは、
イチゴ柄のネクタイを
軽く整えた。
「顧問は、
日常の仕事
なんです」
ヤマゲンは、
珍しくポッキーに手を伸ばさなかった。
ネクタイのイチゴ柄だけが、
やけに目に入る。
「田中さん」
少し低い声で言う。
「税務調査ってな」
「完全にランダム
ちゃいます」
田中は、
その一言で察した。
「……何か、
特徴があるんですか」
「あります」
即答だった。
「しかもな」
ヤマゲンは、
あっさり言う。
「だいたい、
重なります」
「一つ目」
ヤマゲンは、
売上推移のグラフを指した。
「毎年」
「ほぼ同じ売上
ほぼ同じ利益」
「これな」
少し笑う。
「経営的には
優秀
です」
田中は、
一瞬、安心しかけた。
「でも」
すぐ続く。
「税務的には」
トーンが変わる。
「“作ってる可能性”
を疑われます」
田中の眉が、
ぴくりと動いた。
「特に」
「決算月だけ
利益が調整されてる」
「消費税の境目で
止まってる」
「こういう数字」
はっきり言う。
「見られます」
「二つ目」
今度は、
通帳のコピー。
「現金」
ヤマゲンは、
短く言った。
「売上は
入ってない」
「でも」
「生活できてる」
田中は、
黙り込んだ。
「税務署な」
「ここ、
一番嫌います」
「説明できへん現金は」
間を置かず言う。
「全部、
売上候補
です」
「三つ目」
領収書の束を、
軽く叩く。
「経費多い会社、
山ほどあります」
「でもな」
「同じ科目に
異常に偏ってる」
「これ、
引っかかります」
交際費。
旅費交通費。
外注費。
「毎年、
同じ時期」
「同じ金額帯」
「同じ店」
「これな」
ヤマゲンは、
静かに言う。
「“考えて入れてる”
痕跡
です」
田中は、
ここで思わず聞いた。
「……それも
関係あるんですか」
「あります」
きっぱり。
「税理士変わる理由、
色々あります」
「でも」
「短期間で
コロコロ変わる」
「これは」
少し言葉を選ぶ。
「“何かある会社”
扱いされます」
田中は、
背筋が伸びた。
「最後」
ヤマゲンは、
田中を見る。
「社長が
自分の数字を
説明できへん」
田中は、
耳が痛かった。
「売上
利益
消費税」
「“税理士に任せてます”」
その言葉を、
ヤマゲンは
はっきり否定した。
「これ、
一番あかん」
「税務署からしたら」
「“じゃあ、
誰が責任持ってるん?”
です」
ヤマゲンは、
ようやくポッキーを一本取った。
だが、
すぐには食べない。
「田中さん」
「調査来る会社ってな」
「悪い会社
ちゃいます」
「説明できへん会社
です」
その言葉は、
重かった。
「逆に言うたら」
少し笑う。
「数字が説明できて」
「現金の流れが見えて」
「税務の考え方、
分かってたら」
「調査、
怖がる必要ない」
田中は、
深く息を吐いた。
自分の会社は、
どうだろう。
少なくとも、
「考える材料」は
はっきりした。
「ヤマゲンさん」
田中が言う。
「……これ、
全部、
事前に直せます?」
「直せます」
即答だった。
そして、
ポッキーをかじる。
「せやから、
顧問なんです」
甘い音が、
静かに響いた。
税務調査の話になると、
田中 恒一は、
いつも同じ疑問が浮かんでいた。
「……ヤマゲンさん」
「税務調査のときって」
「税理士さんは、
何してくれるんですか?」
ヤマゲンは、
少しだけ笑った。
「ええ質問ですね」
そして、
即答しなかった。
「派手なことは、
何もしません」
その一言に、
田中は拍子抜けした。
「派手なこと、
しないんですか」
「せえへんです」
きっぱり言う。
「怒鳴らへん
論破せえへん
裏技もない」
田中は、
少し笑った。
「ほな、
何を……」
ヤマゲンは、
机の上に
一枚の紙を置いた。
「交通整理
です」
「交通整理?」
「ええ」
ヤマゲンは、
指で紙に線を引く。
「税務調査ってな」
「社長
税務署
税理士」
「三者が
同時に喋ったら」
線が、
絡まる。
「必ず事故ります」
「一つ目の仕事」
ヤマゲンは、
田中を見る。
「社長を、
喋らせすぎない」
田中は、
少し驚いた。
「それ、
守ってくれてる
ってことですか?」
「そうです」
即答だった。
「社長はな」
「良かれと思って
説明しすぎる」
「でもな」
声を落とす。
「調査は、
説明会ちゃいます」
「聞かれたことだけ
答える」
「それ以外は」
少し間を置く。
「税理士が引き取ります」
「二つ目」
ヤマゲンは、
軽く笑う。
「翻訳
です」
「翻訳?」
「ええ」
「社長の言葉を
税務署向けに」
「税務署の言葉を
社長向けに」
「そのまま
投げ合ったら、
必ずズレます」
田中は、
深くうなずいた。
確かに、
同じ日本語なのに、
意味が違う。
「三つ目」
ヤマゲンの声が、
少し低くなる。
「ここが、
一番大事
です」
「全部、
否定する税理士」
「全部、
認める税理士」
「どっちも、
あかん」
田中は、
息をのんだ。
「認めるべきは、
認める」
「守るべきは、
守る」
「その線、
その場で
引くのが」
はっきり言う。
「顧問税理士の仕事
です」
「四つ目」
ヤマゲンは、
少し表情を和らげた。
「空気作り
です」
「空気?」
「ええ」
「調査官も、
人です」
「敵に回したら
長引く」
「味方にしても
意味ない」
田中は、
首をかしげた。
「じゃあ……」
「“仕事しやすい相手”
になるんです」
ヤマゲンは、
さらっと言った。
「失礼なく
無理せず
事実ベースで」
「これだけで」
「調査の温度、
かなり変わります」
ヤマゲンは、
イチゴポッキーを一本取り、
今度はちゃんとかじった。
カリッ。
「田中さん」
静かに言う。
「顧問税理士な」
「税務調査のために
存在してる
わけちゃいます」
「でも」
少しだけ、
声を強める。
「税務調査のときに
一番、
力を発揮します」
田中は、
深く息を吐いた。
顧問料。
今までは、
毎月の経費だと
思っていた。
でも今は、
意味が違って見える。
「ヤマゲンさん」
田中が言う。
「……来ても、
大丈夫な気が
してきました」
「来えへんのが
一番ええですけどね」
ヤマゲンは、
少し笑った。
「せやけど」
「来ても、
一人ちゃいます」
その言葉は、
田中の胸に
静かに残った。
ヤマゲンは、
調査の話になると、
必ず最初にこう言う。
「田中さん」
「税務調査でな」
「“やったらあかん行動”は、
言葉より多い
です」
田中は、
少し身構えた。
「行動、ですか」
「ええ」
ヤマゲンは、
軽くうなずく。
「喋らんように気ぃつけてても」
「行動で
全部台無しになる人、
多いです」
ヤマゲンは、
机の上にファイルを二つ並べた。
「これな」
「聞かれてない資料、
出したらあかん」
田中は、
少し驚いた。
「でも、
全部出した方が
誠実ちゃいます?」
「それな」
ヤマゲンは、
首を横に振る。
「誠実と親切、
別モンです」
「調査官は」
「必要なもんだけ
聞きます」
「そこに」
指で机を叩く。
「余計な資料を
自分から乗せる
必要、ありません」
「結果な」
「調査範囲、
広がるだけ
です」
田中は、
黙ってうなずいた。
「二つ目」
ヤマゲンは、
少し声を落とす。
「その場で
即答しない」
「分からんことを
分かった顔で
言う」
「これ、
最悪です」
田中は、
前回の話を思い出した。
「“確認します”
ですよね」
「正解」
即答だった。
「その場で
言い切った言葉は」
「記録に残ります」
「後から」
「“やっぱ違いました”
は、
ほぼ通りません」
ここで、
ヤマゲンは
少し笑った。
「これ、
一番多いです」
「雑談?」
「ええ」
「調査官な」
「いきなり
数字の話、
しません」
「天気
業界
最近どうです?」
田中は、
うなずく。
確かに、
ありそうだ。
「そこでな」
ヤマゲンは、
はっきり言った。
「喋りすぎたら
負け
です」
「雑談の中で」
「“最近売上落ちてて”
とか」
「“実は現金取引もあって”
とか」
「地雷、
踏みます」
田中は、
思わず顔をしかめた。
「四つ目」
ヤマゲンの声が、
さらに低くなる。
「“すぐ直します”
って言葉」
「これな」
田中は、
ピンと来た。
「認めたことに
なるんですか」
「そうです」
即答だった。
「“直します”=
“間違ってました”」
「調査官は」
「“じゃあ、
追徴ですね”
になります」
「直すかどうかは」
指を一本立てる。
「調査、
終わってから
です」
ヤマゲンは、
イチゴポッキーを一本取った。
だが、
まだ食べない。
「田中さん」
静かに言う。
「税務調査ってな」
「戦う場
ちゃいます」
「でも」
少しだけ間を置く。
「無防備で
立つ場でもない」
「守るルールさえ
知ってたら」
「だいたい、
大事故には
なりません」
田中は、
大きく息を吐いた。
調査は、
怖いものだと思っていた。
でも今は、
「準備と姿勢」の問題だと
分かってきた。
「ヤマゲンさん」
田中が言う。
「……税務調査って」
「知らんことが
一番怖いんですね」
「せやから」
ヤマゲンは、
ここでようやく
ポッキーをかじった。
「知ってる人が
横におるんです」
甘い音が、
静かな部屋に響いた。
ヤマゲンは、
椅子に深く腰かけたまま、
腕を組んだ。
イチゴポッキーには、
まだ手を伸ばさない。
「田中さん」
静かに言う。
「税務調査でな」
「これだけは、
言うたらあかん
って一言、
あります」
田中は、
ごくりと唾を飲んだ。
「……何ですか」
ヤマゲンは、
少しだけ笑った。
でも、
目は笑っていない。
「“みんな、
そうしてます”
です」
田中は、
一瞬、意味が分からなかった。
「みんな……?」
「ええ」
ヤマゲンは、
ゆっくり続ける。
「“他の会社もやってます”
“周りも同じです”
“前の税理士が言いました”」
「全部、
同じ意味です」
田中の顔が、
少しずつ曇る。
「それ、
あかんのですか?」
「あきません」
即答だった。
「税務調査でな」
ヤマゲンは、
指を一本立てる。
「“他人基準”は、
何の防御にも
なりません」
「税務署が見るのは」
決算書を指す。
「田中さんの会社
です」
「隣の会社でも
同業でも
親戚でもない」
田中は、
黙ってうなずいた。
「実務ではな」
ヤマゲンは、
少し踏み込む。
「“みんなやってる”
って言葉が出た瞬間」
「調査官の頭は、
こうなります」
少し間を置かず、
言い切る。
「“ほな、
どこまで広がってるか
見よか”」
田中は、
思わず息をのんだ。
「つまりな」
ヤマゲンは、
低い声で続ける。
「自分一人で
終わる話が」
「業界全体の話に
引き上げられる」
それは、
最悪の展開だ。
「他にもな」
ヤマゲンは、
指を折っていく。
「“昔からそうです”」
「“慣例です”」
「“細かいことは
気にしてません”」
「これな」
はっきり言う。
「全部、
“見直す理由”
になります」
田中は、
思わず苦笑した。
どれも、
言いそうだ。
「じゃあ」
田中が、
恐る恐る聞く。
「分からんときは、
どう言えば……」
ヤマゲンは、
少しだけ表情を緩めた。
「ええ質問です」
そして、
こう言った。
「“確認します”
です」
「確認?」
「ええ」
「調査の場でな」
「その場しのぎの
説明、
一番あかん」
「分からんことを
分かったフリしたら」
「後で、
必ず矛盾出ます」
ヤマゲンは、
静かに続けた。
「せやから」
「分からんときは」
「“顧問税理士に
確認します”」
「それで
ええんです」
田中は、
大きく息を吐いた。
「……正直、
助かります」
「でしょ」
ヤマゲンは、
ここでようやく
イチゴポッキーを一本取った。
カリッ。
「税務調査ってな」
噛みながら言う。
「頭の良さ比べ
ちゃいます」
「一貫性の勝負
です」
「最後に」
ヤマゲンは、
指を一本立てた。
「これだけ
覚えといてください」
「調査官の前では」
「説明は、
短く」
「聞かれたことだけ
答える」
「余計な親切、
いらんです」
田中は、
深くうなずいた。
今までの自分は、
良かれと思って
喋りすぎていた。
「田中さん」
ヤマゲンは、
穏やかに言った。
「税務調査はな」
「黙る勇気
も、
立派な対策です」
イチゴポッキーの箱が、
机の端に置かれている。
甘い匂い。
でも、
今日の話は、
かなり苦い。
その苦さが、
田中には
やけにリアルだった。
ヤマゲンは、
机の引き出しから
一冊のファイルを取り出した。
表紙には、
何も書いていない。
「田中さん」
ファイルを、
トン、と机に置く。
「税務調査って聞くと」
「何見られるか、
分からん思ってません?」
田中は、
正直にうなずいた。
「はい……
全部、ですか?」
「全部は、
見ません」
即答だった。
「時間も
人手も
限られてますから」
ヤマゲンは、
指を三本立てた。
「必ず見るのは、
この3つ
です」
「一つ目」
ヤマゲンは、
売上台帳を開く。
「売上の計上漏れ」
「これがな」
少し笑う。
「一番多い」
田中の表情が、
固まった。
「現金売上
端数
期ズレ」
「悪気なくても」
はっきり言う。
「漏れてたら、
アウト
です」
「特に見られるのは」
指でなぞる。
「・決算月の前後
・売上が急に落ちてる月
・消費税が絡むライン」
「売上ってな」
ヤマゲンは、
静かに言った。
「隠そうと思わんでも、
“落ちる”もん
です」
「二つ目」
今度は、
領収書の束。
「経費」
「第22話で話したやつです」
田中は、
苦笑した。
「税務署はな」
ヤマゲンは、
淡々と続ける。
「金額より」
「“なんで使ったか”
を聞きます」
「ここで
“たぶん”
“いつも”
“慣例で”」
指を折る。
「これ、
全部アウトワードです」
「一回な」
ヤマゲンは、
過去を思い出すように言った。
「“社長の気分転換です”
って言うた人、おって」
「その瞬間」
首を横に振る。
「全否認
でした」
田中は、
思わず息をのんだ。
「三つ目」
ヤマゲンは、
通帳を指で叩く。
「お金の流れ」
「これがな」
声を落とす。
「一番、
ウソつけへん」
「売上は
誤魔化せても」
「経費は
理由つけても」
「現金の動きは」
きっぱり言う。
「必ず、
足跡残ります」
田中は、
思わず自分の通帳を思い浮かべた。
「特に見られるのは」
「・私的な引き出し
・急に増えた現金
・説明できない入金」
「これ、
説明できへんと」
ヤマゲンは、
少し間を置かずに続ける。
「売上認定
されます」
売上認定。
「税務署が」
「“これは売上やろ”
って決めるやつです」
「反論、
ほぼ通りません」
空気が、
重くなった。
ヤマゲンは、
ここでファイルを閉じた。
「でな」
少し柔らかく言う。
「これ、
教科書に
載ってませんけど」
田中を見る。
「一番見られてるの、
社長の態度
です」
「態度……?」
「ええ」
「聞かれたことに
ちゃんと答えるか」
「分からんことを
“分からん”
言えるか」
「変に
取り繕わへんか」
「ここでな」
はっきり言う。
「嘘ついた瞬間、
全部、疑われます」
田中は、
大きく息を吐いた。
「田中さん」
ヤマゲンは、
イチゴポッキーを一本取り、
まだ食べずに言った。
「税務調査ってな」
「怖いイベント
ちゃいます」
「日頃の処理が
ちゃんとしてるかの
確認作業
です」
「逆に言うたら」
少し笑う。
「ここ3つ
ちゃんとできてたら」
「調査、
だいたい静かに終わります」
田中は、
静かにうなずいた。
調査は、
突然来る。
でも、
準備は、
今日からできる。
そう思えた。
ヤマゲンは、
イチゴポッキーの箱を
机の端に寄せたまま、
一枚の領収書を取り出した。
「田中さん」
その紙を、
指でつまむ。
「これ、
何の領収書か、
覚えてます?」
田中は、
一瞬考えてから答えた。
「……接待、
やったと思います」
「“やったと思う”」
ヤマゲンは、
その言葉を繰り返した。
声は静かだ。
「このな」
領収書を軽く振る。
「“やったと思う”
が一番、
税務署に嫌われます」
田中は、
思わず姿勢を正した。
「経費ってな」
ヤマゲンは続ける。
「払った事実より」
「何のために使ったか
が大事です」
「金額ちゃいます」
「理由です」
理由。
「これ、
勘違い多いんですけど」
ヤマゲンは、
淡々と言った。
「仕事に関係してたら
何でも経費、
ちゃいます」
田中の胸に、
少しチクっと刺さる。
「税務署が見るのは」
指を二本立てる。
「業務関連性」
「必要性」
「この二つ、
説明できるかどうかです」
ヤマゲンは、
領収書を指さした。
「この接待」
「誰と
何の目的で
次の仕事に
どうつながったか」
「これ、
言えます?」
田中は、
口を開きかけて、
止まった。
「……正直、
今は言えません」
「それが正解です」
即答だった。
「無理に
“それっぽい理由”
作ったら」
ヤマゲンは、
はっきり言った。
「調査で、
一発アウト
です」
アウト。
「否認されたらな」
声が、少し低くなる。
「税金取られるだけや
思ってません?」
田中は、
小さくうなずいた。
「それだけやないです」
「延滞税
加算税」
「下手したら」
一拍も置かずに続ける。
「“意図的”と判断されたら
重加算税
です」
空気が、
ぐっと重くなった。
「せやから」
ヤマゲンは、
少し声を和らげる。
「僕はな」
「グレーは、
基本やらん」
「白か、
やらないか」
「その代わり」
領収書をまとめて置く。
「堂々と使える経費
は、
ちゃんと使います」
田中は、
思わず聞いた。
「……その違いは、
何ですか?」
ヤマゲンは、
少しだけ笑った。
「説明できるかどうか
です」
「第三者に」
「税務署に」
「銀行に」
「奥さんに」
最後の一言で、
田中は吹き出しそうになった。
「奥さんにも?」
「一番、
厳しい審査員です」
ヤマゲンは、
真顔で言う。
「そこで
通らん理由は」
「だいたい、
税務署でも
通りません」
ヤマゲンは、
ここでようやく
イチゴポッキーを一本取った。
カリッ。
「田中さん」
噛みながら言う。
「経費ってな」
「“入れる技術”
やないです」
「“守る技術”
です」
「後で
否認されへんように」
「調査で
眠れへん夜を
作らんように」
田中は、
ゆっくり息を吐いた。
今までの自分は、
「入れられるかどうか」
しか考えていなかった。
「これからは」
ヤマゲンは、
ポッキーを机に置いて言った。
「経費、
一枚見るたびに」
「これ、
説明できるか?
って聞いてください」
それだけで、
判断は、
かなり変わります」
田中は、
静かにうなずいた。
経費は、
節税の道具じゃない。
会社を守るための、
防具なのだと、
初めて分かった気がした。
イチゴポッキーの箱は、
机の端に置かれたままだった。
ヤマゲンは、
ネクタイのイチゴ柄を整えながら、
資料に目を落としている。
「……ヤマゲンさん」
田中 恒一が、
少し言いづらそうに切り出した。
「率直に聞いても、
ええですか」
「どうぞ」
「節税って、
何かできることあります?」
その瞬間だった。
ヤマゲンの手が、
ほんの一瞬、止まった。
ポッキーには触れない。
ネクタイもいじらない。
視線だけを、
田中に向けた。
「……田中さん」
声は穏やかだが、
空気が変わる。
「その言葉な」
ゆっくり言う。
「税理士が一番、
誤解されやすい言葉
ですわ」
田中は、
背筋を伸ばした。
「節税いうと」
ヤマゲンは続ける。
「税金を
減らすテクニック、
思われがちですけど」
資料の一行を、
指で叩く。
「実務ではな」
「利益を
どう“壊さずに残すか”
の話です」
「壊さずに……」
「ええ」
ヤマゲンは、
数字を追いながら話す。
「たとえば」
「利益を減らすために
無理に経費使う」
「これは
税金は減ります」
少し間を置く。
「でも」
「現金も減ります」
田中は、
黙ってうなずいた。
「税務署な」
ヤマゲンは、
淡々と言った。
「経費の金額より
“理由”
見てます」
「節税目的だけの支出、
説明つかへんかったら」
「普通に
否認されます」
否認。
その言葉が、
ずしっと来る。
「それに」
ヤマゲンは、
決算書を閉じた。
「銀行は
もっとシビアです」
「節税で
利益削ってる会社」
「融資、
一番嫌われます」
田中は、
思わず聞き返した。
「税金、
少ない方が
ええんちゃいます?」
「ちゃいます」
即答だった。
「銀行が見たいのは」
「税金を払ったあとに
何が残ってるか
です」
ヤマゲンは、
ここで初めて
イチゴポッキーを一本取った。
だが、
口には入れず、
机に置く。
「節税いう言葉な」
静かに言う。
「“先に言うたらあかん言葉”
です」
「先に?」
「順番があるんです」
指を三本立てる。
「まず
利益を出す」
「次に
現金を残す」
「最後に
税金をコントロールする」
「この順番、
ひっくり返したら」
ヤマゲンは、
はっきり言った。
「だいたい、
事故ります」
田中は、
苦笑した。
思い当たる節が、
多すぎた。
「せやから」
ヤマゲンは、
ネクタイのイチゴを
軽くつまむ。
「僕が言う
節税はな」
「“減らす”やなくて
“耐える”ための設計
です」
耐える。
「税金は」
一拍置かず、
言い切る。
「必ず来ます」
「せやから」
「来る前提で
壊れへん形に
しておく」
「それが
顧問税理士の仕事です」
田中は、
大きく息を吐いた。
節税。
今まで、
便利な言葉だと思っていた。
でも実際は、
扱いを間違えたら
一番危ない言葉だった。
「ヤマゲンさん」
田中が言う。
「……今日、
節税の話、
聞いてよかったです」
「え?」
「やらなあかんこと、
先に分かりました」
ヤマゲンは、
少しだけ笑った。
「それでええんです」
そして、
ようやくポッキーをかじる。
「節税は、
一番最後の話
ですから」
契約を交わしてから、
初めての打ち合わせだった。
事務所のドアを開けた瞬間、
田中 恒一は、
ほんの一瞬、違和感を覚えた。
机の上に、
赤い箱が置いてある。
やけに、目立つ。
――イチゴポッキー。
「……それ」
思わず、口から出た。
「気になります?」
ヤマゲンは、
悪びれもせず、箱を手に取った。
「イチゴポッキーですわ」
田中は、
一瞬、言葉に詰まった。
税理士事務所。
顧問契約後、初回の打ち合わせ。
机の上の、イチゴ。
そして、
もう一つ。
視線を上げた瞬間、
田中は気づいた。
――ネクタイ。
よく見ないと分からない。
でも確かに、
小さなイチゴ柄。
「……あの」
田中は、
少し言いづらそうに言った。
「ネクタイも、
イチゴですよね?」
ヤマゲンは、
一瞬だけ間を置いてから、
にやっと笑った。
「よう気づきましたね」
ネクタイを、
指で軽くつまむ。
「これな、
わざとです」
「……わざと?」
「はい」
即答だった。
「税理士事務所ってな」
ヤマゲンは、
椅子に腰かけながら言う。
「入った瞬間、
肩に力入りすぎるんです」
「せやから」
イチゴポッキーの箱と、
ネクタイを、
交互に指す。
「最初に一個、
違和感置いとく」
田中は、
思わず笑いそうになるのを、
こらえた。
「お客さん側からしたら」
ヤマゲンは続ける。
「『イチゴ好きなん?』
『センスないん?』
どっちか思うでしょ」
「……正直、
思いました」
「でしょ」
満足そうにうなずく。
「その瞬間な」
声のトーンが、
少し落ちる。
「税理士=怖い
が、一段落ちるんです」
ヤマゲンは、
イチゴポッキーを一本取り、
田中の前に差し出した。
「どうぞ」
「……いただきます」
甘い。
思っていたより、
ずっと甘い。
そして、
肩の力が抜けた。
「ここからな」
ヤマゲンは、
ポッキーを机に置いた。
空気が、
はっきり変わる。
「契約した以上」
資料を開く。
「本音で行きます」
「遠慮、
いりません」
「数字、
全部出してもらいます」
売上。
原価。
人件費。
「“だいたい”は、
禁止です」
田中は、
小さく息をのんだ。
でも、
嫌な感じはしなかった。
「安心してください」
ヤマゲンは、
ネクタイのイチゴを
軽く叩く。
「緩めるところは緩める。
締めるところは締める」
「その切り替えのための
イチゴですわ」
田中は、
赤い箱とネクタイを見た。
さっきまで感じていた
違和感。
それが、
安心感に変わっている。
「ヤマゲンさん」
そう呼ぶと、
ヤマゲンは満足そうにうなずいた。
「ええですね」
「ほな、改めて」
資料を閉じる。
「顧問税理士・
大和源太郎として、
本気で行きます」
田中は、
もう一度、
イチゴポッキーをかじった。
甘い。
でも、
この先の話は、
きっと甘くない。
それが、
なぜかはっきり分かった。
田中 恒一は、少しだけ背筋を伸ばしていた。
机の上には、
白い紙が一枚。
よく見れば、
それは契約書だった。
「……これが、
顧問契約書ですか」
田中がそう言うと、
先生は、軽くうなずいた。
「そうですわ」
紙を指でトントンと叩く。
「別に、
怖いもんちゃいます」
「……正直、
契約書って聞くと、
ちょっと身構えます」
先生は、すぐに笑った。
「分かります分かります」
「大阪人な、
“縛られる”って言葉、
生理的に嫌いですから」
田中も、
思わず苦笑した。
「せやからな」
先生は、少し身を乗り出す。
「これは、
縛るための紙やないです」
「ほな、
何のためですか」
「逃げんため
ですわ」
即答だった。
「僕も、
田中さんも」
少し間を置いて続ける。
「ええ加減な関係に
ならんための紙です」
田中は、
その言葉を
静かに受け止めた。
ここまでの相談は、
確かに、どこか様子見だった。
「料金も、
ここに書いてますけど」
先生は、あえて淡々と言った。
「正直な話な」
「一番大事なんは、
金額やない」
田中は、
少し意外そうに顔を上げた。
「これから先は」
先生は、
声のトーンを落とす。
「田中さんが
迷ったときに」
「僕が
“それは違う”って
言う立場になる
いうことです」
田中の胸が、
少しだけ締まった。
「優しいことばっかり
言う税理士、
ちゃいますよ」
「嫌われ役も、
ちゃんとやります」
田中は、
小さく息を吐いた。
「……それ、
もう分かってます」
「でしょ」
先生は、
軽く笑った。
そして、
契約書の最後のページを
田中の前に差し出す。
「ここに、
田中さんの名前」
指をずらす。
「で、
ここに、
僕の名前が入ります」
田中は、
ペンを持ったまま、
ふと止まった。
「……そういえば」
「先生のお名刺、
頂いてませんでした」
その瞬間、
先生は少しだけ
間を置いた。
「ああ、
確かに」
軽く咳払いをしてから、
さっと差し出した。
「改めまして
大和 源太郎(やまと げんたろう)
です」
「……大和、
源太郎」
「ちょっと硬いでしょ」
大和源太郎は、
少し照れたように笑う。
「顧問先の社長さんからは
「ヤマゲン
って呼ばれてますねん」
ヤマゲン。
田中は、
その名前を
頭の中で転がしてみた。
妙に、しっくり来た。
「ヤマゲン先生、
ですね」
「先生、
要らんです」
源太郎は、即座に言った。
「仕事の話は
税理士・大和源太郎」
「それ以外は
ヤマゲン」
「そのくらいが
ちょうどええですわ」
田中は、
ゆっくりと
自分の名前を書いた。
そして、
源太郎の署名を見る。
そこには、
崩れすぎていない、
でも迷いのない字で
「大和 源太郎」と書かれていた。
「……名前、
書くと」
田中が言う。
「急に、
現実味出ますね」
「出ます」
源太郎は、
はっきりとうなずいた。
「せやから、
ここで書くんです」
「覚悟、
共有するために」
契約書を閉じ、
源太郎は立ち上がった。
「ほな、田中さん」
「ここからは」
一呼吸おいて、
こう言った。
「遠慮なしで行きましょ」
田中は、
静かにうなずいた。
先生でも、
税理士でもない。
大和源太郎――ヤマゲン。
この人となら、
厳しい話も、
ちゃんと受け止められる。
田中は、
そう思っていた。
机の上に、二つの紙が並んでいた。
一つは、税務署からの「お尋ね」。
もう一つは、白紙のメモ用紙。
田中 恒一は、しばらく、その二つを見比べていた。
一人で書く。
それも、できなくはない。
材料費が増えた理由。
外注費の内容。
家事按分の考え方。
先生と話したことを思い出せば、
文章にはできそうだ。
「……自分で、やるか」
そう呟いて、
ペンを取った。
まずは、材料費。
〈前年より受注量が増加したため〉
書いてみる。
間違ってはいない。
次に、外注費。
〈一時的に作業量が増えたため〉
これも、嘘ではない。
家事按分。
〈工場兼自宅のため、合理的に按分〉
――合理的。
便利な言葉だ。
でも、その中身は、
どこか薄い。
「……これで、ええんか?」
田中は、
ペンを止めた。
書けてはいる。
でも、
守られている感じがしない。
もし、この文書で、
税務署から追加の質問が来たら。
もし、
「具体的には?」
と聞かれたら。
そのたびに、
自分一人で、
判断しなければならない。
正解かどうか、
分からないまま。
田中は、
ふと、先生の言葉を思い出した。
責任。
それは、
怒られるかどうか、
という話だけじゃない。
この判断が、
数年後の自分を、
苦しめないかどうか。
そこまで、
背負えるかどうか。
田中は、
スマートフォンを手に取った。
先生の番号を開いて、
少しだけ、迷う。
無料で教えてもらえる、
そんな段階は、
もう終わった。
それは、
今日の田中にも、
はっきり分かっていた。
それでも。
田中は、電話をかけた。
「先生……
あの、やっぱり、
一人で書くのは、不安で」
電話の向こうで、
先生は、すぐには答えなかった。
少しの沈黙。
そして、
落ち着いた声。
「正直に言いますね」
田中は、息を飲んだ。
「その感覚、
めちゃくちゃ大事ですわ」
否定じゃなかった。
「一人で書くいう選択も、
全然アリです」
「でもな」
一拍。
「不安なまま出すのが、
一番あかん」
田中は、
無言でうなずいた。
「お金払ういうんはな」
先生は、続けた。
「作業代やないです」
「……」
「判断を一人で背負わんでええ、
いう状態を買う
いうことです」
田中の胸の奥で、
何かが、
すとんと落ちた。
申告書を作る。
文章を書く。
それだけなら、
自分でもできる。
でも。
この判断でいいのか。
もっといい書き方があるんじゃないか。
あとから問題にならないか。
その不安を、
一人で抱えなくていい。
「田中さん」
先生は、
ゆっくり言った。
「ここから先、
一緒にやるなら」
「僕は、
“答え方”まで考えます」
田中は、
深く、息を吐いた。
「……お願いします」
言葉は、
自然に出た。
決断した、というより、
納得した、
そんな感じだった。
電話を切ったあと、
田中は、
机の上の白紙を、
そっと裏返した。
一人で書く、という選択。
それは、
「できるかどうか」ではない。
「背負うかどうか」
の選択なのだと、
田中は、はっきり理解した。
その封筒は、前よりも薄かった。
色も、文字も、見慣れている。
差出人は、また――税務署。
「……今度は何や」
田中 恒一は、机の上に封筒を置いたまま、
すぐには開けなかった。
嫌な予感、というほどではない。
でも、軽くもない。
ようやく開けると、
中には一枚の紙。
「お尋ね」
調査、ではない。
呼び出し、でもない。
ただ、
いくつかの質問が並んでいる。
・材料費が前年より増加している理由
・外注費の内容と支払先
・家事按分の考え方
「……来たな」
心臓が、
一段、強く打った。
これまでやってきたことが、
頭の中を駆け巡る。
理由はある。
説明も、たぶんできる。
でも。
これを、自分の判断で返してええんか?
田中は、
先生に電話をかけた。
「先生、
税務署から“お尋ね”来ました」
電話の向こうで、
先生は、すぐに答えた。
「ええ。
よくあるやつですわ」
少し安心しかけた、その瞬間。
「せやけどな」
一拍。
「ここから先は、
立場、変わります」
田中は、言葉を失った。
「……どういう意味ですか?」
先生の声は、
いつもより、少し低かった。
「今まではな」
ゆっくり、言葉を選ぶ。
「考え方を整理したり、
一般論を話したり、
“自分で判断するための材料”を
渡してただけです」
それは、確かにそうだ。
「でも、この紙な」
先生は続ける。
「税務署に出す文書ですわ」
田中は、
手元の紙を見つめた。
「ここに何を書くかで、
結果が変わる可能性があります」
胸の奥が、
きゅっと締まる。
「どこまで説明するか
どういう言葉を使うか
それはな」
先生は、はっきり言った。
「責任が乗る判断です」
沈黙。
電話口で、
田中の呼吸音だけが聞こえる。
「田中さん」
先生は、
少しだけ声を和らげた。
「ここまでは、
無料でええと思ってました」
はっきりと、
そう言った。
田中は、
思わず姿勢を正した。
「でもな」
「これから先は、
僕の名前と判断が乗ります」
名前。
その言葉が、
重く響いた。
「タダでやる、
いう話やないです」
先生は、淡々と言った。
「逆に言うたらな」
一拍。
「ここから先は、
ちゃんと僕の仕事として、
一緒にやれます」
田中は、
何も言えなかった。
“断られた”感じは、しない。
でも、
“線を引かれた”のは、分かる。
「急に決めんでええです」
先生は続けた。
「自分で書いて出す、
いう選択もあります」
少し間を置いて、
こう付け加えた。
「せやけどな」
「一緒にやるなら、
立場、はっきりさせましょ」
電話を切ったあと、
田中は、しばらく動けなかった。
今まで、
先生は“助言者”だった。
でも今、
その先に、
もう一段、深い場所があると知った。
責任。
判断。
立場。
それは、
お金の話でもある。
でも、それ以上に。
誰と、この事業を進めるのか
という話だった。
田中は、
お尋ねの紙を、
もう一度読み返した。
質問は、
さっきより、
少し違って見えた。
これは、
試されている。
数字じゃない。
向き合い方を。
決算書は、きれいにまとまっていた。
売上。
経費。
利益。
どの数字も、
会計ソフトの中では、
きちんと整列している。
「……ちゃんと合ってるよな」
田中 恒一は、
何度目か分からない確認をした。
ズレはない。
計算ミスもない。
それでも、
胸の奥に、
小さな不安が残る。
数字は合っている。
でも、
説明できるかと聞かれると、
自信がない。
先生との打ち合わせ。
田中は、決算書を差し出した。
「数字自体は、
大丈夫そうですよね?」
先生は、しばらく黙って資料を見ていたが、
やがて顔を上げた。
「ええ。
数字は、きれいですわ」
その言葉に、
田中は、少し安心しかけた。
「せやけどな」
一拍。
「税務署が見るんは、
数字そのものちゃいます」
田中は、思わず眉をひそめた。
「……え?」
先生は、ペンを取り、
決算書の一部を指した。
「この材料費、
去年より増えてますよね」
「はい。
仕事量が増えたんで」
「それ、
口で説明できます?」
田中は、言葉に詰まった。
増えた理由は、分かっている。
でも、
それを順序立てて、
第三者に説明することは、
考えたことがなかった。
「税務署な」
先生は、淡々と言った。
「合ってるかどうかより、
納得できるかどうか
見てきます」
納得。
「急に増えた数字があったら、
『なんで?』
って思うの、
人として普通ですわ」
田中は、
自分が税務署側の立場だったら、
と想像してみた。
確かに、
理由の分からない数字は、
気になる。
「帳簿ってな」
先生は、少し声を落とした。
「記録である前に、
説明書です」
「説明書……」
「はい。
この会社は、
どうやって稼いで、
どうやって使ってるか」
田中は、
決算書を見つめ直した。
そこには、
数字しか書いていない。
理由も、背景も、
載っていない。
「せやからな」
先生は、続けた。
「メモが、
めちゃくちゃ大事になります」
「メモ、ですか」
「ええ。
『大型案件が増えた』とか、
『材料価格が上がった』とか」
ほんの一言でいい。
でも、それがあるだけで、
数字は、急に意味を持つ。
「数字はな」
先生は、ゆっくり言った。
「嘘はつかへんけど、
何も語らへん」
田中は、
その言葉を、
静かに噛みしめた。
合っている。
それだけでは、足りない。
説明できる。
それが、次の段階だ。
打ち合わせの帰り道、
田中は、ノートを開いた。
材料費が増えた理由。
外注費が一時的に増えた背景。
設備修理の経緯。
今なら、思い出せる。
でも、
数年後はどうだろう。
書いておかないと、
自分自身が説明できなくなる。
その夜、
田中は、帳簿の横に、
小さなメモ欄を作った。
数字の横に、
言葉を添える。
たったそれだけで、
帳簿が、
急に“生き物”のように感じられた。
数字は合っている。
でも、それだけじゃない。
納得できるかどうか。
それが、
次に越える壁だと、
田中ははっきり理解した。
決算書の数字を見ながら、
田中 恒一は、首をひねっていた。
「……あれ?」
会計ソフトの画面。
青色申告特別控除――10万円。
その表示を見て、
思わず画面を二度見した。
「65万円、ちゃうんか……?」
青色申告だ。
帳簿も付けている。
ソフトも使っている。
条件は、そろっているはずだった。
それなのに、
なぜか、10万円。
田中は、
先生の顔を思い浮かべ、
すぐに電話をかけた。
「先生、
青色の65万円控除って……
自動で取れるもんちゃうんですか?」
電話の向こうで、
先生は、少し笑った気配を見せた。
「それ、
めちゃくちゃ多い勘違いですわ」
田中は、苦笑した。
「やっぱり……」
「ほな、
一個ずつ、確認しましょか」
先生の声は、落ち着いている。
「まずな、
複式簿記で付けてはります?」
「……たぶん」
「“たぶん”は、
だいたいアウトです」
先生は、はっきり言った。
「会計ソフト使ててもな、
設定間違ってたら、
単式扱いになります」
田中は、思わず背筋を伸ばした。
「次」
先生は続ける。
「期限内に申告してます?」
「……去年、
ちょっと遅れました」
「それも、
即アウトです」
田中は、額に手を当てた。
「あと、
e-Taxか、電子帳簿保存
やってはります?」
「……やってないです」
「ほな、
65万円は取れません」
淡々とした口調が、
逆に、重く響く。
「条件はな、
ちゃんと書いてあるんです」
先生は言った。
「せやけど、
誰も読まへん」
田中は、
思わず笑ってしまった。
笑えたのは、
責められていないからだ。
「つまりな」
先生は、整理するように言った。
「65万円控除は、
ご褒美みたいなもんです」
「ご褒美?」
「ちゃんと帳簿付けて、
期限守って、
データで出した人だけの、な」
田中は、
ゆっくりうなずいた。
楽して取れるものじゃない。
でも、
無理なものでもない。
「正直な話」
先生は、少し声を落とした。
「これ、
毎年何十万円も差が出ます」
「……ですよね」
「せやから、
“取れてへん”って分かった時点で、
もう半分は成功ですわ」
田中は、
その言葉を噛みしめた。
知らずに損する。
それが、一番怖い。
「今年からな」
先生は言った。
「設定も、
申告方法も、
全部そろえましょ」
「はい」
返事は、迷わなかった。
電話を切ったあと、
田中は、決算書をもう一度見た。
そこにあるはずだった、
65万円。
今までは、
「取れなかった損」
だと思っていた。
でも今は、違う。
「取れる形を知らなかっただけ」
そう思えた。
知れば、
準備できる。
準備すれば、
結果は変わる。
青色申告65万円控除は、
魔法じゃない。
ちゃんとやった人にだけ、
ちゃんと返ってくる制度
なのだと、
田中は、ようやく腹落ちした。
その人は、よく工場に来ていた。
元・同僚。
独立する前、同じ会社で働いていた男だ。
「今、ちょっと時間あんねん。
手、足りてる?」
そう言われると、
田中 恒一は、つい甘えてしまう。
「じゃあ、この加工、お願いできる?」
図面を渡す。
作業は、慣れたものだ。
終わったあと、
封筒に現金を入れて渡す。
「助かったわ」
「ええよ、ええよ」
その関係が、
もう何度も続いていた。
月末。
田中は、会計ソフトの前で手を止めていた。
「……これ、外注費でええよな?」
請求書はない。
領収書もない。
あるのは、
田中の記憶と、
作業が終わった事実だけ。
外注。
便利な言葉だ。
社員じゃない。
家族でもない。
だから、
給与じゃない――
そう思っていた。
その夜、
田中は先生に電話をした。
「先生、
知り合いに手伝ってもろた場合って、
外注費でいけますよね?」
電話の向こうで、
先生は、少しだけ間を置いた。
「状況、教えてもらえます?」
田中は、
作業内容、頻度、支払い方を説明した。
しばらくして、
先生が言った。
「……田中さん」
声は穏やかだが、
トーンが、少し変わった。
「それ、
外注ちゃいますわ」
田中は、言葉を失った。
「え……?」
「外注いうんはな」
先生は、ゆっくり説明した。
「仕事のやり方を、
相手が自分で決めてる
状態です」
「やり方……」
「時間も、
指示も、
道具も」
一つずつ、言葉を置く。
「田中さん、
この人に、
『何時から来て』
『この手順でやって』
言うてません?」
田中は、
無言でうなずいた。
「それな」
先生は、はっきり言った。
「限りなく、給与です」
胸の奥が、
ずしんと重くなった。
「請求書があるかどうかやないんです」
先生は続ける。
「実態ですわ」
・指揮命令している
・継続的に来ている
・報酬が時間や作業量ベース
・他の仕事を断って来ている
「これ、
雇われてるのと同じ
判断されます」
田中は、
思わず机に肘をついた。
「知らんかった……」
「知らんでも、
関係ないです」
先生は、きっぱり言った。
「税務も、労務も、
そこはシビアです」
「じゃあ、
どうしたら……」
先生は、少し声を和らげた。
「二択です」
一つ。
「ほんまの外注にする」
「契約書作って、
やり方は相手に任せる。
成果物で払う」
もう一つ。
「給与として扱う」
「源泉徴収して、
帳簿に載せる」
田中は、
大きく息を吐いた。
「中途半端が、
一番あかん、ってことですね」
「その通りですわ」
先生は、少し笑った。
「みんな、
楽なとこ取り
したなるんです」
楽に見える。
でも、
後で一番痛い。
「外注費と給与の違いってな」
先生は、最後にこう言った。
「呼び方やなくて、
関係性の話です」
電話を切ったあと、
田中は、工場の中を見渡した。
自分が指示を出し、
段取りを組み、
責任を負っている。
その中で、
手伝ってもらっている人がいる。
なら、
それにふさわしい扱いを
しなければならない。
翌日、
田中はその元同僚に電話をした。
「なあ、
これからの話なんやけど」
少し、緊張した声。
「ちゃんと、
形、決めよか」
相手は、
一瞬黙ってから、言った。
「……それが、ええと思うわ」
田中は、電話を切り、
ノートを開いた。
・外注か、給与か
・指示の出し方
・支払い方法
曖昧にしてきた関係に、
言葉を与える。
それは、
縛ることじゃない。
守るための整理
なのだと、
田中は、少し分かった気がした。
工場の片隅で、妻が伝票を並べていた。
「これ、今月分。
請求書も、そろってるで」
田中 恒一は、旋盤の手を止めた。
「助かるわ。
ほんま、毎回ありがとうな」
独立してから、
妻はずっと、事務を手伝ってくれている。
電話対応。
請求書の発行。
材料の発注。
気づけば、
“ついで”と呼べる量ではなくなっていた。
「なあ……」
田中は、少し間を置いてから言った。
「これ、
ちゃんと給料として出した方がええんかな」
妻は首をかしげた。
「うーん。
家計は一緒やし、
別にええんちゃう?」
田中は、
その言葉に、すぐにはうなずかなかった。
――それ、
税務的には、
通らへん気がする。
その夜、
田中は先生に電話をかけた。
「先生、
家族に給料払う話なんですけど……
条件、ありますよね?」
電話の向こうで、
先生は少し間を置いてから答えた。
「あります。
しかも、結構はっきり」
田中は、背筋を伸ばした。
「まず前提としてな」
先生の声は、落ち着いている。
「田中さん、
青色申告の届け、出してはります?」
「……出してます」
「ほな、スタートラインには立ってます」
少し、安心した。
「でもな」
先生は、続けた。
「それだけやと、足りません」
「……え?」
「家族に給料を“経費”にしたいならな」
一拍。
「青色専従者給与の届出書
これ、出してなあきません」
田中は、思わずメモを取った。
「出してないと……?」
「どれだけ働いてもろても、
原則、経費にはなりません」
言葉は穏やかだが、
内容は、はっきりしていた。
「じゃあ、
白色申告の場合は?」
田中が聞くと、
先生は少し苦笑した。
「白色でもな、
一応、控除はあります」
「一応、って……」
「上限、かなり低いですわ」
田中は、すぐ理解した。
今の仕事量。
今の関わり方。
それを考えると、
実務的ではない。
「つまりな」
先生は、整理するように言った。
「家族に給料払いたいなら」
・青色申告をしていること
・青色専従者給与の届出を出していること
・仕事内容と金額が妥当であること
・実際に支払っていること
「この四つ、全部そろって、初めて“経費”です」
田中は、ゆっくりうなずいた。
「知らんまま払ってたら……」
「アウトですわ」
先生は、きっぱり言った。
「悪気なくても、
否認されます」
その言葉は重かった。
でも、不思議と怖さはなかった。
理由が、はっきりしたからだ。
「なあ、田中さん」
先生は、少し声を和らげた。
「これな、
節税の話やないです」
また、その言葉だ。
「仕事として頼んでるなら、
制度も、ちゃんと使いましょ」
電話を切ったあと、
田中は工場に戻った。
「なあ」
妻に声をかける。
「給料の話、
ちゃんと整理せなあかんみたいや」
「どういうこと?」
「青色申告で、
ちゃんと届出せんと、
経費にならへんねん」
妻は、少し驚いた顔をした。
「そんなん、知らんかったわ」
「俺もや」
二人で、少し笑った。
その夜、
田中はノートに書いた。
・青色専従者給与の届出
・業務内容
・時間
・金額
・振込方法
感覚じゃない。
情でもない。
制度を知った上で、
どう使うかを決める。
家族に払う給料は、
“なんとなく”では、成り立たない。
事業として、
ちゃんと向き合っているかどうか
それが、
問われているのだと、
田中は初めて腑に落ちた。
工場のシャッターを半分下ろすと、
中は、仕事と生活の境目が、ますます分からなくなる。
田中 恒一の工場は、自宅の一角にあった。
旋盤の音が止まると、
そのまま台所の物音が聞こえてくる。
「……ここ、全部仕事ってわけでもないしな」
月末。
田中は、光熱費の請求書を広げていた。
電気。
水道。
ガス。
どれも、家と工場が一緒だ。
会計ソフトの画面には、
「家事按分」という言葉が表示されている。
「……按分、ね」
何となく、
半分くらい?
そんな感覚で、今までやってきた。
理由は、説明できない。
ただ、
「それくらいかな」
という気持ち。
田中は、先生の顔を思い出し、
スマートフォンを手に取った。
「先生、家事按分って……
正直、どこまでが正解なんですか」
少し間があって、
返事が来た。
「正解はな、
一個やないです」
思わず、画面を見つめる。
「え?」
「大事なんはな、
数字より理由ですわ」
先生は、電話口で続けた。
「たとえばやで。
工場、何時間動かしてます?」
「平日は、だいたい八時間くらいです」
「ほな、
家は、二十四時間使てますよね」
田中は、黙ってうなずいた。
「面積は?」
「工場が、全体の三割くらいです」
「ええですね」
先生の声は、相変わらず落ち着いている。
「ほなな、
時間と面積、どっちを基準にするか
決めたらええんです」
「……どっちが正しい、じゃなくて?」
「せやから、
筋が通ってるかです」
田中は、メモを取りながら聞いた。
「半分、っていうのがな」
先生は、少し笑った。
「いちばん多いんですわ。
理由のない半分」
胸が、ちくりとした。
「それ、
税務署に聞かれたら、
どう説明します?」
田中は、言葉に詰まった。
「……できない、です」
「でしょ」
先生は、優しく言った。
「按分いうんはな、
ズルするためのもんちゃいます」
一拍置いて、続ける。
「自分で、
『ここまでは仕事』
って線を引くためのもんです」
田中は、請求書を見つめ直した。
電気を一番使うのは、
機械が回っている時間だ。
水道も、
冷却や清掃で、
工場の使用が多い。
ガスは、
ほとんど生活だ。
「……電気と水道は、
工場三割、
ガスは、ほぼゼロ、
でいけそうですね」
「ええと思います」
先生は、即答した。
「その代わりな、
メモ残しときましょ」
「メモ?」
「はい。
『機械稼働時間が長いため』とか、
『工場面積が三割のため』とか」
田中は、ノートに書き込んだ。
理由を書く。
考え方を書く。
「これな」
先生は、少し声を落とした。
「税務署のため、
やないです」
「……え?」
「未来の田中さんのためですわ」
数年後。
今のことを、
正確に覚えている自信はない。
でも、
理由が書いてあれば、
自分でも、納得できる。
「家事按分ってな」
先生は、最後にこう言った。
「あいまいなもんを、
あいまいなまま放っとかん
ための作業です」
電話を切ったあと、
田中は、静かに入力を始めた。
半分、ではない。
感覚、でもない。
自分なりの、
説明できる数字。
入力を終えたとき、
胸の奥に、
小さな達成感が残った。
完璧じゃない。
でも、
逃げていない。
家と工場。
生活と仕事。
混ざり合っているからこそ、
考える意味がある。
田中は、画面を閉じ、
深く息を吐いた。
あいまいな壁は、
壊すものじゃない。
言葉で、
説明できるようにするもの
なのだと、
少し分かった気がした。
翌週、田中 恒一は、先生の事務所をもう一度訪れていた。
前回と同じ席。
同じ机。
けれど、気持ちは少し違う。
田中は、机の上に新しい通帳を置いた。
真新しい、事業用口座。
「……とりあえず、作ってきました」
先生は通帳を一瞥して、軽くうなずいた。
「ええですね。
これだけで、もう一歩前進ですわ」
田中は、少し照れくさそうに笑った。
「正直、
こんなんで何が変わるんかな、って思ってました」
先生は、椅子に深く腰掛け、
腕を組んだ。
「ほな、聞きますけどな」
一拍。
「今、通帳の残高見て、
全部使ってええお金や、思います?」
田中は、はっとして、首を振った。
「……思わないです」
「でしょ」
先生は、ペンを取り、
紙に大きく二つの丸を書いた。
ひとつは「事業」。
もうひとつは「生活」。
「今まではな、
これ、重なってたんですわ」
二つの丸を、ぐっと重ねる。
「せやから、
残高見た瞬間に、
判断が狂う」
次に、丸を少し離した。
「分けたらな、
考えんでええことが増えるんです」
「考えんでええこと……?」
「そうですわ。
これは事業。
これは生活。
迷う回数が、減る」
田中は、その紙を見つめた。
確かに。
昨日、新しい通帳を見たとき、
変な安心感があった。
金額は、決して多くない。
でも、
「事業のお金だけ」が、
そこに並んでいた。
「それからな」
先生は、もう一つ丸を書き足した。
そこには、こう書かれている。
――税金。
「これ、
まだ払ってへんけど、
もう“あなたのお金ちゃう”
思といた方がええです」
田中は、思わず苦笑した。
「……耳が痛いです」
「みんな、そう言わはります」
先生は、さらりと言った。
「税金を怖がる人ほどな、
実は、
自分のお金やと思って使てしまう
ことが多いんです」
その言葉が、
過去の自分に、ぴたりと重なった。
売上が入ったとき。
残高が増えたとき。
あれは、
全部“自由に使えるお金”
だと思っていた。
「分ける、いうんはな」
先生は、少し声を落とした。
「締め付けることやないです」
田中を見る。
「安心するためですわ」
その言葉に、
胸の奥が、すっとした。
管理。
制限。
我慢。
そんなイメージばかりだった。
でも、これは違う。
不安を、
外に出す作業なのだ。
「正直な話な」
先生は、少し笑った。
「これできひんまま、
十年やってる社長さんも、
ぎょうさんいます」
「……十年」
「せやけどな、
田中さんは、
まだ三年目ですわ」
田中は、その言葉を噛みしめた。
「今、気づけたんは、
めちゃくちゃ早いです」
事務所を出るとき、
田中のスマートフォンが震えた。
銀行からの通知。
事業用口座への、
初めての入金。
金額は、小さい。
でも。
田中は、画面を見て、
はっきりと思った。
――これは、
仕事のためのお金だ。
生活費とは、違う。
税金とも、違う。
たったそれだけのことが、
こんなにも、
頭を軽くするとは思わなかった。
分ける。
ただ、それだけ。
でも、その一歩は、
田中の中で、
確かに、世界を分け始めていた。
事務所は、想像していたよりも静かだった。
田中 恒一は、少し早めに着き、
入口の前で深呼吸をした。
税理士事務所。
もっと堅くて、
もっと“正される場所”だと思っていた。
「どうぞ」
扉を開けると、
電話口で聞いた、あの落ち着いた声の主がいた。
年齢は、田中とそう変わらないだろう。
白衣でもスーツでもない、
少しラフな服装。
「田中さんですよね。
今日はわざわざ、ありがとうございます」
そう言って、軽く頭を下げる。
――この人が、“先生”。
そう呼ぶのは、まだ少し照れくさい。
席に着き、
田中は持ってきた資料を、
机の上に並べた。
通帳のコピー。
会計ソフトの試算表。
レシートの束。
「……正直、
どこから見てもらったらええか分からなくて」
そう言うと、先生は、
書類には目を落とさず、
田中の方を見た。
「ほなな、数字の前に
一個だけ聞いてもええですか」
少し間を置いて、
先生は続けた。
「田中さん、
今いちばん、不安なんは何です?」
田中は、言葉に詰まった。
税金。
お金。
帳簿。
どれも正解のはずなのに、
どれも、しっくり来ない。
しばらく考えてから、
ゆっくり口を開いた。
「……ちゃんとやってる“つもり”やのに、
間違ってたらどうしよう、って」
先生は、小さく頷いた。
「それな。
ちゃんと考えてはる証拠ですわ」
その一言で、
胸の奥が、じんわりと温かくなった。
怒られなかった。
否定されなかった。
先生は、ようやく資料に目を向けた。
ページをめくりながら、
淡々と話す。
「黒字ですね。
仕事は、ちゃんと取れてはります」
次のページ。
「せやけどな、
現金は減りやすい形してますわ」
田中は、思わず身を乗り出した。
「……やっぱり、そうですか」
「ええ。
製造業では、ようある話です」
先生は、ペンを取り、
紙に、簡単な図を描いた。
売上。
材料。
設備。
税金。
矢印が、
少しずつ、ズレていく。
「利益いうんはな、
結果なんですわ」
一拍置いて、続ける。
「でも現金は、
流れなんです」
田中は、
その図を見つめた。
今まで、
感覚だけで感じていた違和感が、
形になっていく。
「今日はな、
全部いっぺんに解決せんでええです」
先生は、そう言って、
ペンを置いた。
「まずは、
分けましょ」
「分ける……?」
「事業のお金と、
生活のお金。
それからな、
まだ払ってへん税金」
田中は、はっとした。
財布。
通帳。
頭の中。
全部、混ざっていた。
「これができるだけでな、
不安、半分になります」
数字の話をしているはずなのに、
先生の言葉は、
なぜか、心の整理のようだった。
帰り際、
田中は、思わず聞いた。
「……先生って、
いつも、こんな話し方なんですか?」
先生は、少し笑った。
「数字いうんはな、
人の“結果”ですさかい」
「結果……?」
「生き方とか、
選択とか、
そういうもんの、ですわ」
田中は、
その言葉を、
何度も、頭の中で繰り返した。
税理士は、
数字を正す人だと思っていた。
でも、この人は。
数字の向こう側を、
一緒に見よか、言うてくれる人
なのかもしれない。
事務所を出たとき、
空は、少し明るくなっていた。
問題は、まだ山ほどある。
でも。
進む方向だけは、
はっきりした気がした。
田中 恒一は、名刺を手に取ったまま、しばらく動かなかった。
そこには、黒い文字で、肩書きと名前。
そして、その下に小さく――税理士。
「……電話、するか」
独り言のように呟いて、
スマートフォンを手に取る。
すぐには、番号を押せなかった。
今さら、何を聞けばいいのか。
どこから説明すればいいのか。
黒字なのに苦しい。
利益が出ているのに、お金がない。
そんなことを言って、
笑われないだろうか。
田中は、一度、通帳アプリを閉じ、
ノートを開いた。
利益と現金。
同じだと思っていた二つの言葉を、
横に並べて書く。
利益。
現金。
しばらく見つめて、
線を引いた。
同じじゃない。
そう、はっきり分かる。
利益は、計算の結果だ。
売上から経費を引いた、数字の上の答え。
現金は、
実際に、
出入りするお金。
材料を買えば、出ていく。
設備を直せば、出ていく。
税金を払えば、出ていく。
でも、その多くは、
利益が出た“後”に、やってくる。
「……ズレてるんだ」
時間が。
利益は、
今の数字。
現金は、
少し遅れて動く。
そのズレを、
今まで、ちゃんと意識してこなかった。
田中は、名刺の裏に、
小さく書き込んだ。
「利益≠現金」
その瞬間、
少しだけ、気持ちが軽くなった。
分からないまま苦しいのと、
分かって苦しいのとでは、
全然、違う。
そして、
分かってしまった以上、
次にやるべきことも、
うっすら見えてくる。
――聞いてみよう。
田中は、ついに番号を押した。
数回の呼び出し音のあと、
落ち着いた声が、耳に届いた。
「はい、〇〇税理士事務所です」
一瞬、言葉に詰まる。
「あ、あの……製造業をやっている、田中といいます」
自分の声が、少し硬い。
「ええ。どうされました?」
その声は、
思っていたよりも、淡々としていた。
責めるでもなく、
急かすでもなく。
田中は、深呼吸をして、
こう言った。
「黒字なんですが……
お金が、残らなくて」
一拍。
電話の向こうで、
声が、少しだけ、柔らかくなった。
「……それは、多いですね」
その一言で、
田中の肩から、
力が抜けた。
笑われなかった。
否定されなかった。
むしろ、
「よくあること」
として、受け止められた。
「一度、資料を見ながら、
整理しましょうか」
整理。
その言葉が、
妙に、心に残った。
「はい……お願いします」
電話を切ったあと、
田中は、しばらく動けなかった。
問題が、
消えたわけじゃない。
でも。
一人で抱えなくていい
そう思えた瞬間だった。
利益と現金は、別の生き物。
そのことを、
初めて“誰かと共有できた”夜だった。
決算月が近づくと、田中 恒一の気持ちは、少し沈んだ。
売上は悪くない。
むしろ、前年より伸びている。
会計ソフトの画面にも、
はっきりと「黒字」と表示されていた。
「……なのに、だ」
通帳を開く。
数字を見て、眉をひそめる。
思っていたほど、残っていない。
材料費は払った。
外注費も払った。
工具も買った。
それでも、
利益は出ているはずだ。
「黒字って……何なんだ?」
独り言が、誰もいない工場に響く。
田中は、作業台に腰を下ろし、
頭の中で簡単に計算してみる。
売上から、経費を引く。
残ったのが、利益。
理屈は、分かる。
でも、
その“利益”が、
現金として、ここにない。
ふと、去年のことを思い出した。
決算が終わり、
税金の通知が来た日。
「……こんなに?」
思わず声が出た。
黒字だから、税金がかかる。
それは理解している。
けれど、
その支払いのとき、
通帳の残高は、
一気に心細くなった。
そのあと、
設備の修理が重なり、
材料の仕入れが続き、
気づけば、資金はギリギリだった。
「黒字なのに、苦しい……」
その感覚が、
また、胸の奥から顔を出す。
田中は、ノートを開き、
こう書いた。
売上
- 経費
= 利益
その下に、もう一行、書き足す。
利益
- 税金
- 設備投資
- 借入返済
= 現金残高
「……ああ、そういうことか」
黒字でも、
お金は出ていく。
しかも、
税金は、
後から、まとめて来る。
売上が入ったときには、
まだ払っていない。
だから、
「使っていいお金」
だと、錯覚してしまう。
田中は、通帳の数字を、
もう一度見た。
そこに並んでいるのは、
“全部使えるお金”ではない。
まだ払っていない税金も、
もう返すと決まっている借入金も、
全部ひっくるめた数字だ。
そのことに、
今さらながら、気づいた。
「……分かってなかったな、俺」
黒字=安心。
そう思っていた。
でも実際は、
黒字は、
責任の始まりでもある。
税金を払う責任。
お金を管理する責任。
その夜、田中は、
一枚の名刺を眺めていた。
以前、同業者の集まりで、
何気なく受け取ったものだ。
――税理士。
特に印象的な会話をしたわけでもない。
ただ、
「製造業、多いですよ」
そう言われたのを、
なぜか覚えている。
名刺を裏返し、
しばらく考える。
黒字なのに苦しい。
それを、
自分一人で解決しようとしてきた。
でも。
この違和感は、
誰かと一緒に考えるべきものなのかもしれない。
田中は、名刺を机の上に置いた。
まだ、電話はしない。
でも、
しまい込むこともしなかった。
黒字なのに残らない。
その理由が、
少しだけ、輪郭を持ち始めていた。
田中 恒一の財布は、ずっと一つだった。
独立する前から使っている、黒い革の長財布。
現金も、クレジットカードも、
仕事用も生活用も、全部そこに入っている。
「分けるの、面倒だしな」
それが、正直な理由だった。
この日も、午前中は工場で作業をし、
昼前に材料を買いに車を走らせた。
現金払い。
財布から、すっと札を出す。
午後、今度はスーパーに寄る。
夕飯の材料。
牛乳とパン。
同じ財布から、同じように支払う。
夜、家に戻り、通帳アプリを開く。
入金。
出金。
そこには、
仕事のお金と、生活のお金が、
何の区別もなく並んでいた。
「……どこからが、仕事だっけ」
自分でやっておきながら、
自分で分からなくなる。
会計ソフトに向かい、
今日の支出を思い出しながら入力する。
午前の材料費。
これは、間違いなく仕事。
昼のコンビニ。
弁当。
これは……?
工場で食べた。
でも、家でも食べる。
田中は、手を止めた。
財布が一つ。
通帳も一つ。
その状態で、
「これは仕事」「これは生活」
と切り分けるのは、
思っていた以上に、神経を使う。
「……俺、何を基準にやってるんだ?」
ふと、過去の自分を思い出す。
独立したばかりの頃。
お金が入るだけで嬉しかった。
通帳の残高が増える。
それだけで、やっていける気がした。
でも今は違う。
残高はある。
それなりに。
なのに、
「使っていいお金」と
「取っておくべきお金」
その区別が、つかない。
ある月、税金を払ったあと、
急に資金が足りなくなったことを思い出す。
「こんなに持ってたはずなのに……」
原因は、後になって分かった。
全部、同じ通帳に入っていたからだ。
生活で使っていいお金も、
税金のために残すべきお金も、
同じ“残高”として見ていた。
つまり。
自分のお金なのか、事業のお金なのか、
分からなくなっていた。
田中は、通帳の画面を閉じ、
深く息を吐いた。
「これ、どこかで線を引かないと……」
財布を見つめる。
長年使ってきた、慣れた重み。
でも、その便利さが、
今は少し、怖く感じられた。
そのとき、スマートフォンに通知が入る。
銀行からの案内だった。
「事業用口座の開設について」
偶然かもしれない。
でも、タイミングが良すぎた。
田中は、その画面を開いたまま、
しばらく動かなかった。
事業用の口座。
財布を分ける。
お金を分ける。
それは、
「面倒になる」
ことじゃない。
「見えるようになる」
ということだ。
何が残り、
何を守り、
何を使っていいのか。
田中は、画面を閉じる前に、
メモ帳を開き、
こう書いた。
「事業用口座、作る」
たった一行。
でも、それは、
今まで避けてきたことへの、
小さな一歩だった。
そして同時に、
頭の片隅に、
あの存在が、はっきりと浮かび始めていた。
――先生に、聞いてみるか。
まだ会っていない。
まだ話してもいない。
でも、
「一人で決めなくていいことがある」
そう思えるようになった自分に、
田中は少し驚いていた。
その日は、朝から雨だった。
工場の屋根を打つ音が、やけに大きく聞こえる。
田中 恒一は、作業着に着替えながら、
ふと、昨日買ったものを思い出していた。
ホームセンターで買った安全靴。
それから、作業用の手袋。
ついでに、切れていた電球と洗剤。
レジでまとめて払った。
もちろん、クレジットカードだ。
「……これ、どこまで経費だ?」
事務所に戻り、レシートを広げる。
安全靴。
手袋。
洗剤。
電球。
仕事に使っている。
少なくとも、安全靴と手袋は、間違いなく現場用だ。
けれど、洗剤と電球はどうだろう。
家でも使う。
工場でも使う。
「全部まとめて、経費でいいよな……?」
そう思いたい気持ちと、
どこかでブレーキを踏む感覚が、同時にあった。
会計ソフトの画面に、
「消耗品費」という科目が並ぶ。
便利な言葉だ。
何でも飲み込んでくれそうな響きがある。
田中は、一度、全額を入力した。
そして、しばらくその画面を見つめた。
――本当に、全部仕事か?
自分に問いかけてみる。
安全靴は、仕事だ。
手袋も、仕事だ。
でも、洗剤は?
電球は?
仕事に使っている。
けれど、生活とも切り離せない。
「……線引き、ってやつか」
誰に教わったわけでもない。
でも、なんとなく分かる。
税金の世界では、
“使った”だけでは足りない。
“仕事のためかどうか”
それが問われる。
田中は、レシートを二つに分けた。
安全靴と手袋。
洗剤と電球。
後者を見つめながら、ため息をつく。
「払ったのに、経費にならないって……」
理屈は分かる。
でも、感情が追いつかない。
工場で使っているのは事実だ。
仕事がなければ、買っていない。
それでも、
“全部”は通らない。
田中は、洗剤と電球の金額を、
半分だけ経費に入力した。
根拠はない。
ただの感覚だ。
入力を終えたあと、
妙な気持ちが残った。
損をしたような。
でも、少しだけ、胸を張れるような。
「……これ、誰かに聞けたらな」
そう呟いた瞬間、
頭に浮かんだのは、あの検索履歴だった。
「税理士 製造業 相談」
まだ顔も知らない。
声も知らない。
それでも、
“聞いてもいい人がいる”
というだけで、
気持ちは少し軽くなる。
田中は、レシートの余白に、
こう書き足した。
「工場と自宅で共用
使用割合およそ半分」
完璧じゃない。
でも、逃げてはいない。
そう思えた。
雨音が、少し弱まってきた。
シャッターの向こうが、明るくなる。
田中は立ち上がり、
安全靴に足を通した。
仕事と生活。
経費とそうでないもの。
その境目は、
思っていたより、
曖昧で、
そして――
自分で考え続けなければいけない場所
なのだと、
初めて実感していた。
その工具は、急に必要になった。
取引先からの電話は、いつも突然だ。
「田中さん、例の部品、今日中に一部だけでも欲しいんですが」
工場の中を見回し、田中は瞬時に判断した。
今ある工具では、精度が足りない。
――買うしかない。
パソコンを開き、工具メーカーのサイトにアクセスする。
在庫あり。即日発送。
支払い方法は、クレジットカード。
「……頼む」
迷っている時間はなかった。
決済完了の画面を見て、田中は息をついた。
数日後、工具は届き、仕事は無事に終わった。
取引先からも、感謝の連絡が入る。
現場としては、完璧だった。
月末。
会計ソフトを開いた田中は、カード明細を見ながら入力を始めた。
「工具代……これでいいよな」
日付、金額、利用先。
すべて揃っている。
ふと、手が止まった。
――領収書、ダウンロードしてたっけ?
サイトにログインし直す。
注文履歴は残っているが、
「領収書発行」のボタンは見当たらない。
「……まあ、カード明細があるし」
自分に言い聞かせるように、入力を進める。
カードで払った。
仕事に使った。
事実だ。
けれど、頭のどこかで、
昼間ゴミ袋を漁った自分の姿がよみがえった。
その夜、田中はまた検索していた。
「クレジットカード 明細 経費」
出てくる答えは、またしても曖昧だった。
「原則としては不可」
「補助資料としては有効」
「取引内容が分かることが重要」
「……結局、どっちなんだよ」
椅子にもたれ、天井を見る。
カード明細は、
お金を払った証拠ではある。
でも、
何を買ったか
なぜ必要だったか
までは、語ってくれない。
もし聞かれたら、説明できるか?
「この工具は、どんな仕事に使いましたか?」
田中は、少し考えた。
説明はできる。
でも、それは口頭だけだ。
書類として、残っていない。
ふと、昼間見たブログの一文を思い出す。
――証拠が弱いほど、説明は重くなる。
机の上には、
カード明細のコピー。
会計ソフトの画面。
そして、税務署の封筒。
田中は、カード明細の余白に、
ペンで小さくメモを書いた。
「〇〇社向け製品加工用工具
急ぎ対応のためネット購入」
それを書き終えたとき、
少しだけ、肩の力が抜けた。
完璧じゃない。
でも、昨日よりは、前に進んだ気がした。
領収書がない。
カード明細しかない。
それでも、
何も残さないよりは、ずっといい。
田中は、画面を閉じる前に、
もう一度、検索履歴を開いた。
「税理士 製造業 相談 実務」
まだ、連絡はしていない。
でも、その文字列は、
もう“他人事”ではなかった。
田中は思った。
税金は、
ルールを知る前に、
向き合い方を知らなければいけない。
その向き合い方を、
教えてくれる人が、
世の中にはいるのかもしれない、と。
ゴミ出しは、いつも夜だった。
工場のシャッターを下ろし、機械の電源を落とし、
最後に、作業着のポケットを探る。
その日も、同じだった。
油で黒くなったウエス。
メモの切れ端。
くしゃっと丸まったレシート。
「……いらないな」
何気なく、ゴミ袋に放り込んだ。
深く考えたわけじゃない。
ただ、いつもの癖だった。
家に戻って風呂を済ませ、
パソコンの前に座ったとき、
ふと、昼間の材料購入を思い出した。
あれ。
レシート、どこにやったっけ。
胸の奥が、すっと冷えた。
ゴミ袋は、もう玄関の外だ。
明日の朝には、回収される。
「……まさか」
田中は、慌てて靴を履き、外に出た。
街灯の下で、黒いゴミ袋を開く。
鼻をつく油の匂い。
紙くず。
弁当の空箱。
指先が、探している。
――あった。
くしゃくしゃになった、白い紙。
店名も金額も、まだ読める。
ほっとした、その瞬間。
田中は、妙な感情に包まれた。
安心よりも、虚しさだった。
「……俺、何やってるんだろうな」
領収書一枚のために、
夜道でゴミ袋を漁る。
製品を作る技術はある。
取引先からの信頼も、少しずつ積み上げてきた。
それなのに。
家に戻り、机の上にその領収書を置く。
しばらく、じっと見つめた。
これがあれば、経費になる。
なければ、ならない。
たったそれだけの紙が、
こんなにも気持ちを振り回す。
田中は、パソコンを開いた。
「レシート 捨てた 経費」
出てくるのは、
「原則として」
「基本的には」
「ケースバイケース」
どの記事も、最後は曖昧だ。
そのとき、あるブログの一文が目に止まった。
――税金は、ルールではなく“説明の世界”です。
画面を、もう一度読む。
説明。
領収書がないなら、
なぜ必要だったのか。
どこで、何を、誰のために使ったのか。
田中は、ふとノートを開いた。
そして、その材料を使った仕事の内容を、
箇条書きで書き始めた。
・急ぎの追加注文
・通常ルートでは間に合わなかった
・当日の現金払い
・〇〇社向け製品に使用
書き終えて、ペンを置く。
「……これ、最初からやってればよかったのか」
レシートを残す。
メモを残す。
理由を残す。
それは、
税務署のためだけじゃない。
未来の自分のためだと、
初めて気づいた。
机の上には、
税務署の封筒。
そして、検索履歴。
「税理士 相談 製造業」
田中は、画面を見つめたまま、
小さく息を吐いた。
まだ、誰にも会っていない。
まだ、何も始まっていない。
けれど。
「一人で抱えるには、限界がある」
そんな感覚だけが、
確かに、芽生えていた。
月末になると、田中 恒一の机の上は、決まって雑然とした。
加工図面。
見積書。
取引先の名刺。
そして、茶色く油染みのついたレシートの束。
「……また、ない」
田中は、小さく舌打ちした。
先週、急ぎで材料が必要になった。
いつもの商社は時間がかかる。
仕方なく、近所の金属問屋で現金払いをした。
確かに、払った。
確かに、材料はここにある。
けれど――
肝心の領収書が、見当たらない。
「どこで落としたんだ……」
作業着のポケット。
車の助手席。
ゴミ箱。
どこにもない。
会計ソフトの画面には、
「材料費 〇月〇日 〇〇円」
と入力欄が、静かに待っている。
数字は覚えている。
材料の量も、使った現場も、はっきりしている。
でも、証拠がない。
「……まあ、いいか」
田中はそう呟いて、金額を入力した。
今までも、何度もそうしてきた。
製造業は、現場がすべてだ。
段取りが遅れれば、納期に間に合わない。
領収書の管理より、目の前の仕事が優先になる。
――ちゃんと使ってるんだから。
自分に言い聞かせるように、保存ボタンを押す。
けれど、胸の奥に、わずかな引っかかりが残った。
ふと、税務署の封筒が視界に入る。
まだ、開けていない。
もし。
もし、これを見られたら。
「これ、本当に経費ですか?」
そんな声が、頭の中で響く。
田中は、加工台の横に置かれた材料を見た。
削られ、形を変え、
確かに製品の一部になっている。
現場に立つ自分からすれば、
疑いようのない“仕事のための支出”だ。
それなのに。
「……説明しろって言われたら、どうする?」
領収書がない。
請求書もない。
あるのは、田中の記憶だけだ。
その日の夕方、同業者と電話で話す機会があった。
「うちはさ、レシート無いの、結構あるよ。
まあ、バレないって」
軽い調子の声。
田中は笑って相づちを打ったが、
電話を切ったあと、笑顔は残らなかった。
――バレなければ、いい。
その言葉が、妙に重く胸に残った。
領収書がない経費。
それは「ダメ」なのか。
それとも「説明できればいい」のか。
田中には、まだ分からない。
ただ一つ、分かるのは――
「自分は、その線を説明できる自信がない」
ということだった。
机の引き出しを閉めるとき、
レシートの束が、ばらりと崩れた。
拾い集めながら、田中は思った。
税金は、
払うか、払わないか、
という話だけじゃない。
「説明できるかどうか」
それが問われる世界なのだ、と。
その夜。
田中は、初めてこんな、検索をした。
「税理士 相談 どこまで聞いていい」
画面の光が、静かに部屋を照らしていた。
田中 恒一の仕事は、金属部品の加工だった。
町工場、と言うほど大きくはない。
旋盤とフライス盤、それに少し古くなった溶接機。
独立したとき、真っ先に頭にあったのは
「食っていけるかどうか」
それだけだった。
税金のことは、正直、後回しだった。
売上は、初年度が800万円ほど。
二年目で1,200万円。
三年目の今年は、どうやら1,500万円を超えそうだ。
「まだ小さいしな……」
誰に言われたわけでもない。
田中自身が、そう決めつけていた。
――売上が少なければ、税金は大したことない。
――個人事業主なんて、そんなもんだ。
開業届を出したとき、税務署の人は淡々としていた。
怒られもしなかったし、細かい説明もなかった。
だから余計に、
「この程度なら、問題ない」
と思ってしまった。
会計ソフトには、数字を入れている。
材料費。外注費。工具代。
思い出しながら、月に一度まとめて入力する。
それで黒字なら、良し。
赤字なら、まあ仕方ない。
――そうやって、三年が過ぎた。
その夜、田中はネットの記事を読んでいた。
「売上が少ない場合、申告は不要ですか?」
検索結果は、どれも歯切れが悪い。
「ケースによる」
「条件次第」
「一概には言えません」
腹の底が、じわりと冷える。
ふと、机の引き出しを開ける。
中には、束ねた領収書。
油で汚れたレシート。
文字がかすれて、もう読めないものもある。
「……これ、ちゃんとした帳簿って言えるのか?」
自分に問いかけて、答えは出なかった。
売上が少ないから大丈夫。
忙しいから後でやる。
分からないから調べない。
その積み重ねが、
「今は何も起きていない」
という安心感を作っていただけだった。
机の上の、税務署の封筒。
そこには、まだ何も書かれていない。
けれど田中は、初めてはっきりと感じていた。
「問題は、売上の額じゃない」
分かっていないこと、そのものが、
問題なのだと。
その時、スマートフォンが震えた。
取引先からの着信だった。
「田中さん、今度設備、もう一台入れるって話でしたよね?」
設備。
投資。
お金。
田中は、一瞬言葉に詰まった。
「……少し、考えさせてください」
電話を切った後、田中は小さく息を吐いた。
売上が少ないから大丈夫。
そう信じてきた自分が、
急に、心もとなく思えた。
知らないまま進むのは、
思っていたより、ずっと怖い。
その封筒は、ある朝、何気なくポストに入っていた。
白くて、少し厚みがあって、差出人には淡々とこう書かれている。
――税務署。
田中 恒一は、その文字を見た瞬間、胸の奥がきゅっと縮むのを感じた。
まだ何も起きていない。
なのに、心臓だけが先走る。
「……なんだよ、もう」
独り言が、事務所代わりの自宅リビングに落ちた。
田中は個人事業主だ。
独立して三年目。売上は少しずつ伸びている。
仕事は忙しい。依頼も増えている。
なのに、なぜか気持ちは晴れない。
黒字だと、帳簿には書いてある。
けれど、通帳を見ると、思ったほどお金は残っていない。
「こんなはずじゃ……」
封筒は、まだ開けていない。
ただ机の上に置いてあるだけだ。
開ければ、何かが始まってしまう気がして。
税金。
それは田中にとって、「よく分からないけれど、怖いもの」だった。
ちゃんと申告しているつもりだ。
会計ソフトも入れている。
ネットで調べながら、見よう見まねでやってきた。
――たぶん、大丈夫。
その「たぶん」が、胸の奥で何度も反響する。
事業を始めたときは、こんなことは考えなかった。
仕事が取れるか。食べていけるか。
考えていたのは、それだけだった。
いつの間にか、
「税金が怖い」
という感情だけが、後から静かに追いついてきた。
田中は、封筒に手を伸ばし、止めた。
まだだ。
今日は忙しい。
後でいい。
そう思いながらも、視線は何度もそこに戻る。
税金は、まだ来ていない。
でも、不安だけは、もうここにあった。
――知らない、というだけで。
その日の夜。
田中は、パソコンを開き、検索窓にこう打ち込んでいた。
「税金 よく分からない 不安」
それが、すべての始まりだった。
【1】顧問先の社長と日帰り登山



【2】私が顧問先社長を登山にお誘いする理由
新緑の登山シーズンとなって参りました🗻
ご参加される方はよろしくお願いします。
更新情報および重要なお知らせ
日 時
2025年5月11日(日)AM6:00集合(小雨決行)
集合場所
葛城登山口第1駐車場(住所:奈良県御所市くじら978)
・葛城山ロープウェイ登山口駅の下にあります
・駐車料1,000円
・第1駐車場は入庫時の前払い制ですのであらかじめ千円札をご用意頂く方がスムーズです
・第1駐車場が満車の場合、隣接の第2・第3駐車場をご利用ください。
(つつじがピークの時期のため、臨時駐車場も開設されるそうです)
アクセス(お車)
南阪奈道路(有料道路)葛城IC下車し右折 → 県道30号(山麓線)→櫛羅(くじら)交差点を右折 → 葛城登山口駐車場
※葛城IC下車後、櫛羅交差点までの間にコンビニが3か所ございます。
※グーグルマップでルート検索をした場合、葛城IC下車後、県道30号を経て県道254号へ誘導されますが、
県道254号沿いにはコンビニがありませんのでご注意下さい
行程表(予定)
装備リスト
雨天中止の場合
はじめに
令和7年度税制改正関連法が3月31日の参院本会議で可決、成立した。
所得税の課税最低ライン「年収103万円の壁」の見直しについては、
2月に政府が国会に提出した「123万円」にする案から、
自民・公明案の年収200万円以下の人は「160万円」に引き上げることが決まり、
令和7年分から適用される。
1.当初は「年収123万円の壁」で検討
これまで所得税においては、給与を得て働く人は・・・
・・・年収が低い層でも103万円は所得から差し引くことができた。
つまり、給与所得が103万円以下であれば、103万円差し引けるため、
所得税が掛からないことになっていた。
そのため、103万円を超えると所得税(年収に応じて5%~45%)がかかるので
「103万円の壁」と呼ばれていた。
例えば、年収130万円の人であれば、所得税率は5%なので、
(130万円―103万円)×5%=13,500円 となる。
これが今回の税制改正においては、
給与所得控除の最低保証額が55万円から65万円へ引き上げられる。
ポイントは基礎控除で、年収200万円以下の人は、基礎控除を95万円として、
非課税枠を103万円から「95万円(基礎控除)+65万円(給与所得控除)=160万円」に引き上げる。
そもそも、この2月に提出された政府案は、「基礎控除」を現在の48万円から58万円、
「給与所得控除」の最低限度額を55万円から65万円にそれぞれ引き上げ、
この2つを合わせた所得税のかかる壁も123万円にするとしていた。
これが年収200万円以下の人の所得税の壁が160万円になれば、
前述の年収130万円のケースでは税金が発生しない。
123万円の壁であれば、
(130万円―123万円)×5%=3,500円
となり、3,500円の所得税を納めなくてはならない。
つまり、所得税の壁が160万円になったことで、
103万円の壁と比べて13,500円分、
123万円の壁であったとしたら1万円分の税金の恩恵を受けられることになる。
2.「年収200万円超850万円以下」にも軽減措置
さらに今回の改正では、
年収が200万円超850万円以下にも税負担の軽減措置が設けられている。
具体的には・・・
(詳細は下記の図表参照)。

この見直しが行われると、
例えば、配偶者である妻が年間150万円働いたとしても、
妻は所得税が全くかからず、
その夫も年収が600万円だとしたら、
夫も所得税から「133万円」控除できるため、
税負担軽減の恩恵を受けることができる。
一方で、
今回の税金の壁の見直しは所得税の問題で個人住民税については見直されていない。
個人住民税は、自治体によって若干の違いがあるが、100万円を超えたら住民税を納める必要が出てくる。
これを一般的には「100万円の壁」と言っている。
今回の税制改正においては、都道府県や市町村などの地方財政が厳しいことから、
与野党ともにあえて個人住民税には触れなかった。
地方税は私たちの生活に身近な行政サービスに使われるもので、
一般的に地方税は、その地域に住む住民等が広く共同して負担しあうもの"地域社会の会費"的な意味合いが強いと言われる。
個人住民税が見直されなかったことで、所得税の壁が160万円に上がったとしても、個人住民税は発生してくる。
給与所得控除が65万円になることから、個人住民税額の計算上では110万円が「住民税の壁」となる。
まいどおおきに、竹岡です(^^)/
いやぁ、自分でもようやったなぁと思います。
せっかくの節目やし、今日はちょっといつもと違う話をしようと思てます。
制度とか節税とか、そんなんちゃうねん。
もっと、人の気持ちの話。
「なんで人は税金払いたくないって思うんやろ?」・・・です。
納税は「義務」やけど、「気持ちええもん」ではない
納税は国民の三大義務のひとつって、学校でも習いましたよね。
でも、現実はどうやろ?
「え、こんなに持ってかれるん?」
「払っても何にも変わらへんやん…」
そう思てる人、めっちゃ多い。
正直、僕もたまに「うわぁ…」ってなることあるもん(笑)税金って、「取られてる」って感じるもんやねんな
人って、自分で稼いだお金には思い入れがある。
そのお金が、強制的に持ってかれると感じたら、そらイヤにもなる。
しかも、どこに使われてるかよぅわからん。
って、モヤモヤすること、あるんちゃうかな。
「自分だけ損してる」って思ってまう瞬間もある
これ、めっちゃよう聞きます。
「頑張って働いて、税金もようけ払ってるのに、なんか損してる気がする」って。
逆に、うま〜く節税してる人とか、給付金もらってる人を見ると、
「なんやねんそれ…」って思ったこと、ないですか?“払いたくない”って、ほんまは「信じられてへん」ってことかもしれへん
これ、僕が仕事しててよう感じるとこなんですけど、
税金を払いたくないって感情の裏には、「ホンマにええ使い方されてるんか?」っていう不安とか、
不信感がある気がします。
もし相手が信頼できる人やったら、多少のお金やったら「まぁええか」ってなるやん。
国とか行政が、もうちょい信頼される存在になれたら、変わるんちゃうかなぁって。「気持ちよく払える税金」ってできるんやろか?
これ、理想かもしれへんけど――
たとえば、
ちょっとは“納得して払える税金”になるんちゃうかな〜って思います。
税理士としてできること、考えてみた
僕ら税理士って、つい数字とか制度の話ばっかりになってまうけど、
実は一番大事なんは、お客さんの気持ちに寄り添うことちゃうかなぁと思うんです。
「なんでこんなに取られるんや!」って言いたくなる気持ち、
ちゃんとわかった上で、一緒に考えて、一緒にやっていく。
そういうスタンス、大事にしたいなって。🛑 ちなみに、ちょっとだけ注意してほしいこと
最近、「誰でもできる節税テクニック!」みたいな広告とか、
「うちは税金こんなに減らせますよ!」っていうコンサル、よう見かけますよね。
あれ、全部がアカンとは言いません。
せやけど、税金を減らすことしか見てへんやり方って、後からトラブルになることもあるんです。
「税金=悪」「払う=負け」みたいな感覚を煽ってくるような人には、ほんま注意してほしい。
そういうとこほど、後からお客さんが泣くことになるケース、見てきましたから。
🤝 どんな税理士に相談すればええか、迷ったら
せやからこそ、誰に相談するかってめっちゃ大事です。
税理士って、数も多いし、正直どこも似たように見えるかもしれません。
せやけど、ちゃんと話を聞いてくれて、ほんまにその人の立場に立って考えてくれる人かどうか、
結局そこやと思うんです。
僕は、エエことばっかり言うつもりはないです。
節税にも限界あるし、できること・できへんことは正直に言います。
せやけど、「どうしたら納得して税金と付き合えるか」っていう視点では、一緒にトコトン考えます。
それができる税理士やと、自分では思てます。
もし、そういうスタンスがエエなぁと思ってくれたら、気軽に声かけてくださいね。
最 後 に
税金て、どっちか言うたら好きになられへん存在やと思います。
せやけど、ちゃんと向き合ってみたら、
「思ったほど悪もんちゃうな…」って感じる瞬間もあるかもしれへん。
僕は、そんなふうに思ってもらえるような仕事を、これからもしていきたいです。
ここまで読んでくれて、ホンマにおおきに、ありがとうございます!!
明日からブログは101日目・・・いや、それとも一休み??

1. 人生初の腰痛
2. 痛い箇所が原因ではない
3. 苦い経験
4. これが私の一丁目一番地
5. さいごに
1.役員退職金の支給を想定した役員報酬の増額
過大役員報酬の数値基準はありませんが、
①職務内容
②法人の収益状況
③従業員給与の支給状況
④同程度の規模の同業他社の役員報酬の状況
・・・などにより判断することになっています。
ちなみに、
大分地裁(H20.12/1判決)では、
役員報酬月額200万円の案件に対して、適正な役員報酬は月額130万円!
との判決を下しており、この程度の乖離でも「過大額」と判断され、
2.社長の職務内容からの主張
次に、H29.4/25の国税不服審判所の裁決を見てみます。
国税不服審判所で争われましたが、
次のとおり判断されて納税者の主張は認められませんでした。
以上の理由により、各事業年度における同業他社の「最高額」を超える部分は損金不算入となったのでした。
ちなみに、納税者は
「社長の仕事(職務内容)ちゅうもんは、法人の事業全般にわたるもんやから、高額でも問題ないんじゃ!」
と主張しましたが、
国税不服審判所は
「代表者の職務内容が法人の事業全般にわたることは(別に特別なことではなく)一般的なことですよ」と判断し、
納税者側の主張は認められませんでした。
3.役員報酬の増額をどう考えるのか?
役員報酬の適正額は上述の①~④などで判断される訳ですが、
中小企業の場合は同族役員の役員報酬のみを突出して上げることもある訳です。
ただし、会社の業績がいい状況においても③の従業員の給与も同様に上げていくことは難しいでしょう。
そういう意味では最低でも②の「法人の収益状況」を根拠に説明したいところです。
もちろん、収益が上がらなければ、役員報酬を増額できない訳ではありません。
現状の収益から判断すると、本来の適正な役員報酬は200万円なのに、100万円しか支給していないこともあるからです。
このような場合は法人の収益が一定の推移でも、増額することは認められます。
4.役員報酬の増額と最終報酬月額
退職前の数年間で増額した金額を最終報酬月額にすることには
確実に否認リスクがあると考えます。
これが否認されれば「過大役員報酬」と「過大役員退職給与」のダブルチ否認を喰らいますので、
結果、納税額も多額になっちゃいます💦
どうぞご注意下さいね。


【1】わたしの母は81才なのですが、「なんとかカラダが動くうちに、もう一度、故郷、大分の景色が見たい」と常々言っていました。

【2】大分は、母の故郷でもあり、わたしにとっては「九州のおばあちゃんち」です。


【3】祖母は「男の子はドンドン食べなさい」というタイプでした。

【4】そんな優しい祖母は、今から15年ほど前に他界しており、今回、久しぶりに訪れた祖母の家はすっかり解体され、雑草が生い茂るノッパラになっていました。

【5】翌朝、お袋は「おばあちゃん(母)が夢に出て来てくれたよ!」と興奮気味に私に報告してきました。

【6】今回の大分旅行、お袋は「連れて行ってくれてありがとう」とすごく喜んでくれました。






先日、読売ジャイアンツの坂本選手が東京国税局の税務調査を受け、
2020~2022年までの3年間でおよそ約2億4000万円の申告漏れを指摘され、
過少申告加算税を含めておよそ1億円の追徴課税となった
・・・とニュースで報じられていました。
1.よくあるケース
このような状況は多いと思いますが、
では、この場合、
妻が貯めた妻名義のヘソクリ(預貯金)は誰の財産となるのでしょうか?
2.裁決事例
これに関する判断がされた事例があります。
国税不服審判所の裁決(平成19年4月11日)です。
この事例においては、
妻名義の銀行預金、郵便貯金、債券などが約6,400万円あり、
納税者は「口頭で、夫(被相続人)から贈与を受けました!!」
と主張しました。
しかし、
国税不服審判所は次のとおり判断し、
納税者の主張を認めませんでした。
3.財産の管理状況はどうなっているのか?
ちなみに、この事例は
などの事実関係がありました。
そのため、
「妻は単に形式上の名義人」と認定された要素もありますが、
同じような状況になっている事例は多いものと思われます。
私が様々な贈与のご相談をお受けした際に必ずお伝えしていることは
「贈与後の財産の管理状況にご注意ください」
ということです。
印鑑が複数あるので
どれが銀行印か分からなくならないよう、
家族全員が同じ銀行印を使用している
・・・というケースもありますが、
税務調査を考えると望ましくありません。
贈与契約書に押す印鑑、
預貯金の登録印などは
年齢を問わず(0歳などであっても)、
各人ごとに分けるべきなのです。
もちろん、
印鑑が分けてありさえすれば問題が無い訳でもなく、
その印鑑の管理状況なども重要になります。
定期預金の書き換え手続きに伴う
銀行に保管されている書類の筆跡も
税務調査でチェックされる可能性があります。
この辺りの整理ができていないケースは多く、
税務調査で問題になることが多いのです。
4.相続税の税務調査を前提にすると
相続税の税務調査があれば、
は必ず調べられますし、
相続税の税務調査は
と言っても過言ではありません。
この場合、
相続人の収入では貯まらない額の預貯金があれば、それは
という問題に必ずなります。
過去の税務調査の状況が国税庁から発表されますが、
毎年の相続税における否認額のトップは
「現金・預貯金等」なのです。
その内訳は公開されていませんが、
「親族名義の預貯金→被相続人の預貯金」
と認定された事例は相当多いと考えられます。
みなさんはそうならないように
ご注意頂ければと思います。
1.役員報酬の改定はいつまで?
中小企業の場合、
「毎期の業績に合わせて役員報酬を設定できたらいいのになぁ」
って思うことはよくあります。
ただし、税法では
(注)
取締役が代表取締役に就任した場合の期中での増額、
経営状況が著しく悪化した場合の期中での減額は認められます。
よって、
中小企業にとっては至難の業とも言える<業績予想>をした上で、
役員報酬の額をうまく設定しないと、
ということも起こり得る訳です。
2.税法をよく読んでみると
税法では「通常の改定は期首から3か月以内」と書いています。
一般的な事業年度は1年間なので、
「1年間の中で期首から3か月以内の改定(=1年間の中で改定のタイミングは1回だけ)」
なお、通常の役員報酬のことを「定期同額給与」と呼びますが、
税法には次のとおり書いてあります。
法人税法施行令第69条(定期同額給与の範囲等)第1項第一号
イ 当該事業年度開始の日の属する会計期間の開始の日から
3か月を経過する日までにされた定期給与の額の改定
(はこれを損金として認めまっせ!)
と言うことは・・・
1年間の中で期首は「2回」存在することになります。
となる訳です!!
なお、変更の手続きとして必要なことは
(登記変更は必要ありません)
3.会社の業績が6か月間ならば見通せる?
1年間の業績の見通しが難しい場合でも、
6か月間ならある程度は見通せる、ということもあるはずです。
たとえば、不動産売買の仲介業や生命保険の代理店業などのように、
固定的な売上が(ほぼ)ない業種の場合、
毎期の期首では売上がゼロスタートとなるので、
なかなか1年間の業績が見通せないことも多いでしょう。
しかし、その業績に合わせた役員報酬を設定したいならば、
事業年度を6か月間に変更することも1つの方法なのです。
実際に、半年決算法人は存在していますし、
当然、違法でもありません。
国税庁の直近の統計データによれば、
1年決算法人の数、半年決算法人の数は次のとおりです。
半年決算法人の数は
1年決算法人の1パーセントにも満たないですが、
日本の企業の大半は中小企業ですから、
この内容をもっと多くの社長や経理担当者が知れば、
半年決算法人に変更する会社はもっと増えるかもしれませんね。
もちろん、事業年度を短くする訳ですから、
半年ごとに決算と税務申告を行う手間は発生し、
税理士に支払う決算報酬も年2回必要となります。
しかし、これは経費にもなるので、
この負担を考えても、
役員報酬を改定する自由度が上がるメリットは大きいのです。
毎年の役員報酬の設定で頭を悩ませておられる経営者さんは、
ぜひ、この対策をご検討してみてくださいね。
追伸
金銭以外の経済的利益による役員報酬(生命保険料や社宅家賃など)
が発生する場合もあり得ますが、
これらが期中で発生したとしても
「期首から3か月以内に改定しなければならない」
という規定は適用されません。
1. 1994年6月

2. 1994年6~同年8月

3-1. 1994年8月下旬 ニューヨーク立ち寄り

3-2. 1994年8月下旬 バージニア州の大学へ

4. 日本の大学との違い
1つ目は、大学の授業が市民にも開かれているという事です。
2つ目は、図書館が夜12時まで開いているということです。

3つ目は、先生が手厚く教えてくれるという点です。
4つ目は、学生も先生もフレンドリーという点です。
5. 英会話もダイジだけど・・・
6. 忘れられないあの景色(一生の思い出)


令和7年度税制改正大綱 法人課税編
◆中小企業者等の軽減税率の特例は2年延長
中小企業者等の法人税率は所得金額800万円以下について15%とされています。
この軽減税率の適用期限を2年延長したうえで、
所得金額が年10億円を超える事業年度については、税率を17%に引き上げます。
◆中小企業投資促進税制は2年延長
中小企業投資促進税制は、適用期限を2年延長します。
◆売上100億超を目指す中小企業の支援措置
中小企業経営強化税制は、
中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合に
特別償却または税額控除ができる制度です。
適用期限を2年延長したうえで対象に売上高100億円超を目指し、
一定の要件を満たす中小企業の設備投資を追加します。
うち建物および附属設備(合計額1,000万円以上)の特別償却率と税額控除率は、
供用年度の給与増加割合が2.5%以上の場合、それぞれ15%と1%、
給与増加割合が5%以上の場合、それぞれ25%、2%とします。
ほかにA類型は経営向上指標を見直し、
B類型は投資利益率を7%以上に引き上げ、
C類型のデジタル化設備、
暗号資産マイニング業の設備は対象から除外し、
新たに食品等事業者の設備が適用対象となります。
◆地域未来投資促進税制を3年延長
地域未来投資促進税制は、
地域経済牽引事業の促進区域内で特定事業用機械等を取得した場合に
特別償却または税額控除ができる制度です。
適用期限を3年延長し、機械装置及び器具備品の特別償却率を35%(現行40%)に引き下げ、
規模要件を1億円以上(現行2,000万円以上)、前年度の減価償却費の25%以上に引き上げたうえで
特別償却率50%、税額控除率5%とする上乗せ措置の対象設備に新たな類型を追加します。
◆企業版ふるさと納税を3年延長
企業版ふるさと納税制度は、
企業が寄附を通じてノウハウ、アイデア、人材を提供し、
官民連携で地方への資金の流れを創出、
人材還流を促して地域の社会課題の解決をはかる制度です。
企業は寄附額全額を法人税の損金に算入して約3割の税額を軽減、
4割は法人住民税の税額控除、
2割は法人事業税の税額控除を受けるので、
自己負担は1割で地方創生を応援することができます。
一方、地方再生計画の認定が取消される不適切事案が発生したため、令和7年度税制改正大綱 個人所得課税編
◆基礎控除と給与所得控除は10万円引上げ
物価上昇局面の税負担調整、就業調整への対応措置として、
基礎控除は合計所得金額2,350万円以下の控除額を10万円引き上げて58万円に、
給与所得控除は55万円の最低保障額を65万円に引き上げ、給与収入123万円まで課税されなくなります。
令和7年分以後の所得税に適用されます。
◆特定扶養控除(大学生年代の親族の扶養控除枠)を拡大
令和7年度の税制改正により、この給与収入上限額が150万円に引き上げられます。
年収150万円までは、改正前の扶養控除(特定扶養親族)と同額の63万円の控除を受けることができます。
改正後の内容
・対象者:19歳以上23歳未満の扶養親族を持つ納税者
・年収要件:103万円以下から150万円以下に引き上げ
・控除額:所得税63万円、住民税45万円(変更なし)
※150万円を超過すると段階的に控除額が縮小
・適用開始時期:令和7年分◆扶養控除、同一生計配偶者の要件も引上げ
基礎控除の引上げに伴い、人的控除が見直されます。
扶養親族、同一生計配偶者の合計所得金額の要件は58万円以下となり、
現行48万円から10万円引き上げられます。
個人住民税も給与所得控除の見直し、特定親族特別控除(仮称)の創設、扶養親族、同一生計配偶者の合計所得金額の要件等を改正し、
令和8年分から適用されます。
◆iDeCoの拠出限度額を引上げ
iDeCoは加入年齢を70歳未満に引き上げ、
拠出限度額は自営業者等は月額7.5万円(現行:月額6.8万円)、
企業年金加入者は月額6.2万円から確定給付企業年金の掛金額及び企業型確定拠出年金の掛金額を控除した額(現行:月額2.0万円)、
企業年金未加入者は月額6.2万円(現行:月額2.3万円)に引き上げ、
全額所得控除されます。
◆子育て世帯への支援措置を1年継続・拡充
①住宅ローン控除
住宅ローン借入限度額の上乗せ措置(認定住宅5,000万円、ZEH水準省エネ住宅4,500万円、省エネ基準適合住宅4,000万円)、
および床面積要件の緩和措置(合計所得金額1,000万円以下、40㎡以上)は令和7年限り適用されます。
②住宅リフォーム税制(継続)
工事費用相当額(上限250万円)の10%相当額を所得税額から控除する措置が令和7年限り適用されます。
③生命保険料控除(拡充)
新生命保険料に係る一般生命保険料控除は、令和7年度税制改正大綱 資産課税編
◆結婚・子育て資金の贈与非課税は2年延長
結婚・子育て資金の一括贈与非課税制度(直系尊属からの贈与について結婚資金は300万円まで、子育て資金は1,000万円までを非課税)は、
「こども未来戦略」の集中取組期間(令和8年度まで)にあることを勘案し、
2年間の延長となりました。
◆法人版事業承継は役員就任要件を見直し
事業承継における非上場株式等の贈与税の納税猶予制度の特例措置は、
経営承継円滑化法による特例承継計画の認定を受けた非上場会社の株式等を先代経営者から贈与により取得した後継者の贈与税の納税を猶予し、
贈与者の死亡等により猶予税額の納付を免除するものです。
特例措置の適用期限は、令和9年12月31日です。
これまで後継者である受贈者には贈与日まで引き続き3年以上、当該法人の役員に就任していることが要件となっていましたが、
令和6年12月31日で役員に就任していない場合でも、
贈与の直前に役員に就任していれば適用できるようになります。
令和7年1月1日以後の贈与から適用されます。
◆個人版事業承継は事業従事要件を見直し
事業承継における個人の事業用資産の贈与税の納税猶予制度の特例措置は、
経営承継円滑化法による個人事業承継計画の認定を受けた後継者が、
宅地等・建物・その他減価償却資産の事業用資産を先代経営者から贈与により取得した場合、
贈与税の納税を猶予し、
後継者の死亡等により猶予税額の納付を免除するものです。
特例措置の適用期限は、令和10年12月31日です。
これまで後継者である受贈者には贈与日まで引き続き3年以上、当該事業に従事していることが要件となっていましたが、
法人版事業承継税制の改正と併せて、贈与の直前に事業に従事していれば適用できるようになります。
令和7年1月1日以後の贈与から適用されます。
◆設備投資の固定資産税軽減は2年延長
中小企業等経営強化法に規定する先端設備等導入計画に基づき、
中小事業者の生産性向上や賃上げに資する機械・装置等の設備投資について
固定資産税の課税標準の特例措置を見直しのうえ2年延長します。
賃上げ方針を計画に位置付け、雇用者給与等支給額を1.5%以上引き上げる場合、
一般的な税務調査が行われる場合、
税務署の調査官から調査日(臨場日)について、
納税者、あるいは、顧問税理士へ、
事前に電話連絡が入ります。
これを「事前通知」と言い、
しかし、たまに
「調査日に前もって、
総勘定元帳と仕訳日記帳を提出して欲しい」
と調査官から要請されるケースがあります。
さて、この場合、
どのように対応すべきかご存じでしょうか?
調査官側からすると、
調査前に総勘定元帳等の資料を一通り確認しておくことで
臨場の日数は減り、調査効率が上がるということでしょうが、
納税者(顧問税理士)側からすると、
調査官が精査する時間が長くなる訳ですから、
否認指摘のリスクが高まることは明白であり、
もし仮に事前提出に応じるメリットがあるとすれば、
臨場の日数・時間が減ることくらいです。
特に昨今は、
ようですので、この論点を理解する必要があります。
さて、結論からお伝えすると、
論理的には下記が正しい理解となります。
🔴税務調査は(正確には質問検査権の行使は)
その場で元帳・資料等を確認すること
🔴その場でコピーして税務署に持ち帰るのであれば、
返還を要しないので下記の留置き(トメオキ)に該当しない
(ので、応じる義務がある)
🔴原本・現物を税務署に持ち帰る行為は
留置きに該当するので納税者の任意
【参考】事務運営指針第2章3(4)
⇒なお、要請された元帳が紙ではなくデータであった場合、
そもそもデータの提出義務はありません(任意)
以上から、調査【前】の元帳提出はあくまでも
調査官の要請(=お願い)であって、
応じる義務はないことになります。
一方で、調査前の元帳提出要請を断った場合、
調査官が食い下がってくるケースも想定されますが、
そのような場合は、
🔵調査前の元帳提出は任意ですか?強制ですか?
🔵任意であれば、あくまでも納税者(顧問税理士)の判断なので、事前の元帳提出には応じません
🔵質問検査権(受忍義務)の範囲内というのであれば、その法的根拠を明示してください
などの主張(あえての質問)が有効です。

1.オモロー50出し

2.グループ分けをしてみた

3.相関性を図にする

4.自分なりの結論(総まとめ)

値上げをするとお客さんが減る?!
2:6:2の法則とは?
自分が無理をして潰れてしまっては、それこそお客様に申し訳が付かない




今日は
「相続時精算課税制度を使った贈与の注意点」
についてお話します。
さてさて、
暦年贈与とは違って、
年間110万円までであれば、
相続開始前7年間の贈与財産が
相続財産に加算されることがないんです。
相続開始年分の贈与に関しても、
基礎控除額110万円が適用されます。
ちなみに、令和5年において、
相続時精算課税による贈与を受けた人は約4.9万人いるようです。
令和6年の実績数はまだ分かりませんが、
今後はさらに増えると思われます。
ここで、みなさんに覚えておいて欲しいことがあります。
それは・・・
相続時精算課税による贈与は
・・・という「当たり前のこと」です。
例を挙げてみますよ。
🔴 被相続人:父親
→ 相続時精算課税による贈与を使った贈与者
🔴 相続人:子供3人(長男、次男、三男)
→ 長男は相続時精算課税による贈与を使った受贈者
→ 贈与額は3,000万円(令和6年に1度に行なった)
🔴 被相続人の相続財産として、
3,000万円-110万円=2,890万円が加算される。
この場合、
長男さんだけに3,000万円を贈与したって事実が
相続税申告の際に、他の相続人に分かってしまうのです。
なぜなら、相続税申告書には、その旨がバーンと書かれているので。もちろん、これが問題にならないケースもあるでしょう。
正直なところ、
税金のことよりもこちらの方が問題💦
相続時精算課税による贈与は
「税金のこと」を考えて実行されることが多いんです。
しかし、これを優先させたが故に「相続人の人間関係が壊れた」
ということにもなりかねないんですよね。
当たり前ですが、このことは祖父母から孫への贈与でも
同じことが起き得ます。
相続人(子供)が複数いる場合でも、
「特定の孫にだけ相続時精算課税による贈与をする」
ということがあり得るからです。
なので、ぼくはお客様に・・・
・・・ということもお伝えしています。
法人税であれ、所得税であれ、相続税であれ、
税金を減らすことは簡単です。
しかし、税金を減らす行為が
本末転倒になってしまっては意味がないのです。
さらに大切なのは「節税」ではなく、
「税引き後のお金を増やすこと」なのです。
しかし、多くの方が
「税金を減らすことを意思決定の第1ステップにしてしまっている」
という現実があります。
こんなことじゃ、
相続であれ、事業承継であれ、会社の経営であれ、
「物ごとの本質」を見誤っちゃいますよね。
NGな意思決定:「この方法を採用すれば、税金が減る」
OKな意思決定:「この方法を採用した方がいいし、結果として税金も減る」
ぼくのクライアントさんからも、よく
「こういう風にすれば税金が減るが、どう思いますか?」
というご質問が出ることがあります。
しかし、その多くは「物ごとの本質」から逸脱した方法なのです。
繰り返しますよ。
大切なのは
「物ごとの本質から逸脱しないこと」

仕事のことを半強制的に忘れられる
登りのキツさは上昇している証拠
平地のありがたさを痛感する
晴れの日ばかりではないことを知る
達成感、そして、そこに立つ者だけが見れる景色
色々な登り方があることを知る
自分の限界を知る

相続における3つの選択
相続が発生すると相続人となる者は
・・・のいずれかを選ぶことになります。
相続放棄を選択するのは、一般的に借金が多い場合と考えられますが、
借金がなくとも相続にかかわりたくない、
財産分与ゼロでハンコを押すのはシャクだなど、
他の理由であっても自分の意思で選べます。
相続放棄の手順
(1)家庭裁判所へ相続放棄を申述する
相続放棄の申述は、民法により、
自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所にしなければならない、
と定められています。
申述書に申述内容を記入し、
被相続人の住民票除票又は戸籍附票や申述人(放棄する人)の戸籍謄本など(=申述人の被相続人との関係性により必要書類は変わってくる)を添付して
家庭裁判所に書類を送ります。
(2)家庭裁判所から「照会書」が届く
申述後、家庭裁判所から「照会書」が届き、
その申述が本人の真意によるものかの確認がなされます。
(3)「相続放棄申述受理通知書」で完了
家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」(相続放棄が無事に認められた旨の通知)
が届いて手続き完了となります。
なお、他の相続人が相続手続きをする際に
「相続放棄申述受理証明書」の原本が必要となります。
通常は、受理通知書が届いた後に受理証明書の交付申請を行いますが、
事前に受理証明書の交付申請を行えば
受理通知書に同封されて受理証明書も届きます。
相続放棄のデメリット
相続放棄が完了すると後から撤回できないため、
相続登記の申請の義務化(2024.4.1施行)
相続等により不動産を取得した相続人は、
その所有権を取得したことを知った日から3年以内に
相続登記の申請を行う必要があります。
また、遺産分割協議が行われた場合は、
遺産分割が成立した日から3年以内に、
その内容を踏まえた登記を申請する必要があります。
これらの登記懈怠には10万円以下の過料が課せられます。
なお、遺産未分割で、相続登記不可の場合は、
自分が相続人であることを法務局の登記官に申し出れば、
相続登記の申請義務履行とみなされます。
10年経過遺産の相続分(2023.4.1施行)
被相続人の死亡から10年を経過した後の遺産分割は、
原則として法定相続分によって画一的に行うこととされます。
住所変更登記義務化(2026.4.1施行)
登記簿上の不動産の所有者は、
所有者の氏名や住所を変更した日から2年以内に
住所等の変更登記の申請を行う必要があります。
登記懈怠には5万円以下の過料が課せられます。
なお、公的機関間情報による登記官職権登記も始まるので、
この職権登記があると、
住所等の変更登記の申請義務は履行済みとなります。
ただし、自然人の場合には、本人の了解が前提です。
DV被害者保護登記(2024.4.1施行)
DV被害者等を保護するため
登記事項証明書等に現住所に代わる事項を記載する特例があります。
所有不動産記録証明制度(2026.2.2施行)
不動産登記名義人の住所と氏名を全国的に一括して調査し、
所有不動産記録証明書というリストで証明する制度が始まります。
被相続人名義の不動産だけでなく、
存命の名義人や法人名義の不動産も調査できます。
請求人は本人、相続人、法定代理人等に限定です。
相続土地国庫帰属制度(2023.4.27施行)
国庫帰属申請をするには、
1筆の土地当たり1.4万円の審査手数料が必要であり、
審査を経て承認されると、
10年分の土地管理費相当額の負担金が必要です。
負担金額は原則20万円です。
共有制度の見直し(2023.4.1施行)
●共有物に軽微な変更では、全員の同意は不要、過半数持分で決定、
令和6年1月より事業者に電子取引データの保存が義務付けられましたが、緩和措置もあります。
◆ECサイトで物品を購入した場合
ECサイトでの取引記録は電子取引データとして保存が求められます。
ECサイトの取引記録はダウンロードまたはPDFにて保存しますが、
ECサイトで領収書等の取引データを随時確認できる場合は、
必ずしもダウンロードして保存する必要はありません。
なお、「検索機能の確保」については、
基準期間(取引の行われた年の前々年)の売上高が5000万円以下の事業者、
または、
電子取引の記録を書面で出力し、取引年月日その他の日付、取引金額、取引先ごとに整理して提示・提出できるようにしている事業者が、
税務職員の求めに応じて当該取引データをダウンロードできるようにしている場合は、
検索要件を満たしているものとして取り扱われます。
◆クレジットカードで購入した場合
ECサイトで購入した物品の支払をクレジットカードで行う場合、
カード会社の利用明細も電子取引に該当し、
電子取引データとしての保存が必要になります。
この場合も利用明細をカード会社のサイトで随時確認できればダウンロードは必要ありません。
◆インターネットバンクの利用記録で保存
ECサイトで購入した物品の支払代金をインターネットバンキングを利用して振込、またはクレジットカードで引落した場合も
EDI取引として電子取引データとしての保存が必要になります。
この場合もオンライン上の通帳や入出金明細等で利用記録を確認できればダウンロードは必要ありません。
◆WEBサイトの保存期間に注意!
一方、税法上の領収書等の保存期間は、青色申告で原則7年、白色申告で5年ですが、
これらの期間、WEBサイトで取引データが保存されないことがあります。
この場合、WEB上のデータが確認できなくなる前に、ダウンロードまたはPDFで保存する必要がありますが、
WEBサイトで確認できるようになった段階での随時保存も有用といえます。
◆電子インボイスの保存
ECサイトで購入した物品の領収書等は、適格請求書等(電子インボイス)となりますが、
◆令和7年1月以後は
国税庁は今年1月4日、
『令和7年1月以後は『申告書等の控えへの収受日付印(税務署名や年月日等)の押捺を廃止する』と公表しました。
これは申告書等の持参又は郵送に対する措置です。
e-Taxによる申告では『受信通知』がメッセージボックスに格納されます。
税務行政のデジタル・トランスフォーメーション(DX)の取組の推進が目的です。
また、令和7年1月から、申告書等の提出(送付)の際は、申告書等の正本(提出用)のみを提出(送付)するように、と公示しています。
◆申告書等提出事実を証明する方法
それでは、申告書等を紙で提出する場合、今後はどのように申告等したことを証明すればよいのでしょうか。
①国税庁が公開したQ&Aによりますと、
令和7年1月以後の当分の間の対応として・・・
窓口で交付するリーフレットに申告書等を収受した日付や税務署名を記載した上で希望者に配付する、
この配布文書は提出事実の証明機能を持つ・・・と回答しています。
②所轄税務署に「申告書等閲覧申請書」を提出することで、
申告済みの申告書等を閲覧することができます。
そこには収受印が押されています。
閲覧に手数料はかかりませんが、あくまで閲覧サービスのため、
コピーの提供は受けられません。
ただし、申請書の「写真撮影の希望」欄にチェックをつけることで
写真撮影が可能となります。
③納税証明書の交付請求を行い、
納税額と滞納の有無の表示を介して、提出済み申告書の内容を間接的に証明します。
④個人だけのケースとしては、
申告書等情報取得サービス(オンライン請求のみ)、
保有個人情報の開示請求(写しの交付請求は1か月程度)
などがあります。
◆銀行等は対応を変えないと
これまでは・・・

















確定申告も残り2週間ほど。 ここまで来ると、さすがにヘトヘトです。 (ぼくのタイトル画像もサイケになっています汗) 毎日、深夜まで仕事をし、土日も当然関係ありません。 たまに気を抜くとフラッとなる瞬間も・・・。 いかん、いかん、と思って 気持ちを引き締め直すんですのですが そもそも睡眠時間も足りていません。 法人決算やらなんやらが重なって、 12~3月は毎年このような状況です。 しかし、忙しいのは自分ばかりではありません。 昨夜、出来上がった書類を郵便で出そうかと思ったのですが、 比較的近所の会社さんだったので、 気分転換のミニ・ドライブがてら、 直接、会社の郵便受けへ投げ込みに行きました。 顧問先さんの会社に着くと夜22時半だと言うのに 会社にはまだ明かりが灯っており、 社長がひとりで残業をしておられました。 社長に会えるとは思っていなかったので なんだか嬉しくなり、 持参した書類をご説明をしつつ、 しばしの雑談を楽しみました。 社長もこんな時間まで仕事をしているんだなと思うと、 自分も頑張らねば、と改めて思ったのでした。 社長!ガッツをもらえましたよ! ありがとうございます! P.S. なぜ紺色の背景に黄色文字? 月夜のイメージですw |






















こっそり時計の針を・・・
午後のコーヒーは出さない
遠回りして時間をかせぐ
タバコで解決
雑談しっぱなしの一日
毎日ご苦労様です!
もうすぐ3月。
3月と言えば法人決算ですね。
1.経営セーフティ共済(倒産防止共済)への加入
年払いで240万円までを損金にすることができます。
加入資格は次のとおりです。
年払いをする場合の注意点として、
前納希望月の5日(土日祝日の場合は翌営業日)までに
「掛金前納申出書」が中小機構に到着していることが必要です。
なお、オンラインでの手続きも可能です。
2.決算賞与の支払い
期末までに各従業員に決算賞与の支給額を通知し、
翌期1か月以内に支払うなどの要件を満たせば、
当期の決算において、未払い計上(損金計上)できます。
この決算賞与は賃上げ促進税制の対象にもなりますので、
要件を満たせば、法人税を税額控除できる金額も増加します。
3.社会保険料の未払い計上
社会保険料(健康保険、厚生年金保険)は、
会社と従業員が折半して負担していますが、
その支払いは会社が翌月にまとめて行います。
このとき、会社の負担分については、
未払い計上(損金計上)することができます。
ただし、上記の決算賞与の未払い計上に対応する社会保険料の
会社の負担分は未払い計上できませんので、
ご注意ください。
4.固定資産税の未払い計上
固定資産税は賦課決定があった日の属する事業年度の損金の額に
算入することができます。
すでに納税通知書が届いている場合には、全額を損金に計上しましょう。
まだ支払っていない金額は未払い計上ができます。
5.非常勤役員への役員退職給与
いくらまでならば税務上認められるか?という論点はありますが、
退職しても問題ない非常勤役員がいるならば、
実際に退職してもらい、役員退職給与を支払いましょう。
なお、役員退職給与の損金への算入時期は、
原則として、株主総会の決議等によって、
退職金の金額が具体的に確定したときとなります。
6.常勤取締役から相談役、会長、監査役などになる人がいる
いくらまでならば税務上認められるか?という論点はありますが、
このような方がいるならば、役員退職給与を支払いましょう。
7.福利厚生費を計上する
期末までに従業員の50%以上が参加する社員旅行(4泊5日以内)に行けば、
その旅費は福利厚生費として計上できます。
ただし、旅行代金のうち会社負担分が高額すぎると給与とみなされて、
源泉徴収の対象になってしまいます。
これで翌期の従業員の士気を上げていきましょう。
8.広告宣伝費を使う
たとえば、ホームページをリニューアルする費用は損金となります。
ただし、ホームページにシステムを組み込む場合の
システム構築費などは除かれます。
なお、期末までに完成していることが必要です。
9.固定資産(含み損)や不良在庫の売却、除却
期末までに含み損のある固定資産や不良在庫の売却、除却を行えば、
売却損、除却損、除却費用が当期の損金として計上できます。
10.棚卸資産、有価証券、固定資産、繰延資産に関する含み損の計上
一定の要件を満たす前提はありますが、
これらの評価損の計上ができる場合があります。
棚卸資産の評価損(著しく陳腐化したもの)
有価証券の評価損
固定資産の評価損
11.含み損のある有価証券の売却
含み損のある有価証券を売却して、売却損の計上を検討しましょう。
12.期末までに終了できる修繕を行なう
この修繕の内容が
のいずれかならば、金額に関わらず、全額が損金になります。
現在、修繕中のものがあれば、期末までに終わらせるようにしましょう。
13.10万円以上30万円未満の器具備品などの購入
青色申告法人であれば、年間300万円まで損金にできます。
1つが30万円超の固定資産でも2社以上で共同購入することにより、
1社の負担額が30万円未満になれば、損金に計上することができます。
なお、10万円未満の器具備品を購入した場合、
期末までに事業で使用を開始すれば、
金額の上限なく全額を損金として計上できます。
14.事務用品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品などの購入費
通常は「消費」した事業年度の損金となりますが、
事業年度ごとにおおむね一定数量を購入し、
かつ、経常的に消費するものは
購入日の属する事業年度の損金として計上できます。
未使用のものでも「貯蔵品」として資産計上する必要はないということです。
15.貸倒損失の計上
回収できないことが明らかである不良債権があるならば、
貸倒損失として、当期の損金となります。
1例ですが、債権放棄の内容証明郵便が御社の期末日までに、
債務者に到着することなどの要件を満たすことにより、
貸倒損失を計上することができます。
16.生命保険への加入
支払った保険料の全額、4割、6割などが損金になる生命保険があります。
「保障をどう考えるのか?」ということは非常に大切なテーマです。
黒字でも赤字でも「保障」を考えて、必要な生命保険に加入しましょう。
17.新商品等を発明する試験研究を行う
新商品や新サービスを発明するための試験研究費は、
試作モデルが完成するまでは、全額が損金となります。
他の会社に委託して試験研究を行っても問題ありません。
さらに、試験研究費が過年度よりも増額しているなどの要件を満たせば、
法人税の税額控除の対象にもなります。
18.家賃など、翌期1年分の費用を期末に支払う
期末に翌期1年分の家賃などを支払うことにより、
本来は翌期の損金になる費用が当期の損金として計上できます。
19.決算月の変更(前倒し)
期末までに単発で多額の利益が計上されるならば、
決算月を前倒しにすることを検討しましょう。
多額の利益が期末ではなく、期首に計上されることになります。
手続きは株主総会の決議、税務関係の届出となります。
以上となります。
これらはあくまでも1例ですが、覚えておいて頂ければと思います。











































【1】今、米の値段が大幅に上がっている
【2】おかしいのは米だけではない
【3】ふるさと納税にしてもそうだ
【4】日本人の寄付精神
【5】日本を<せんたく>いたし申し候


ある日の税務相談会(案件リスト)
| 相 談 者 | 相 談 内 容 |
|---|---|
| (1)80代 男性 年金受給者 | マンションの1室、及び、山林を売却。税金、どうなる? |
| (2)40代 女性 自営業者 | オフィスを購入予定。でも、銀行融資の与信が厳しい。 |
| (3)40代 男性 会社員 | 株の売買で損が出た。 |
(1)の相談者さん
マンションおよび山林の売却(譲渡所得)に関する案件です。(2)の相談者さん
この方の事業所得の傾向は、赤字だったりチョビットだけ利益が出たり・・・。(3)の相談者さん
上場株式の売却損に関する案件です。以上、3つのご相談を紹介させて頂きました。





























(わたしは)スモールサービスは好きや得意や経験お商売に入れ込め
と申しております。
だって、サービスを受けるお客様は技術だけを買っているのではなく、
サービスを提供する人も含めて買っているのですから。
スモールサービスの場合はさらにこの「人割合」が高いでしょう。
だから、あなたという人(の特徴である好き、得意、経験)をお商売に入れ込むことが、
あなたに合うお客様に選ばれる条件になるのです。
お商売に入れ込む好きや得意を見つける時のポイントは、
お商売から解放されれること。
仕事に入れ込む念頭でやると、どうしても何か仕事に役に立ちそうな
好きや得意を考えてしまう。すると出てこなくなる。
一旦、仕事のことは忘れて、まっさらな心で、
自分鑑定をしているつもりで、この12の質問の回答を眺めて、
そこから好きと得意を炙り出してみよう!
仕事に寄せてない好きや得意の方が、
もしそれらを仕事に入れ込むことができたら、
より、あなたらしさをお商売で表現できるのだ!1.苦もなくできること
2.なんか人から感謝されること
3.ついついやってしまうこと
4.なんでみんなできないの?と思うこと
5.上手くできること
6.早くできること
7.時間を忘れること
8.なんか達成感あること
9.他の人にイラッとくること
10.人からよく注意されたこと
11.禁止されると辛いこと
12.自分の短所と思うこと




パターン1 一般的な税理士のイメージ

パターン2 一般的ではない税理士のイメージ





1. とある1年生個人事業主さんの快挙
2. とにかく数字が苦手・・・からのスタート
3. まずは、やってみせ、それからやらせる
4. 顧問先さんは大切なお客様。そやけど・・・
ある日の税務相談会
| 相 談 者 | 相 談 内 容 |
|---|---|
| (1)70代 女性 個人事業主 | 時計店を廃業予定。残った在庫は税務的にはどうなるのか? |
| (2)60代 男性 個人事業主 | まぐろの小売・卸売業。経費を決算書のどこに書いたら良いのか? |
| (3)50代 女性 法人経営者 | 昨年設立した訪問介護サービスの法人を廃業したい。どうしたら良いか? |
| (4)50代 女性 会社員 | 不動産仲介業として独立する予定。個人事業と法人とどちらにした方が良いか? |
多くのヒントを得られる場
うれしい瞬間

前号のブログでは、夫に支払った経費を否認された妻のお話を
さて、今回は、奇抜なタイトルとなってしまいましたが
もちろん、
「税〇署をぶっ壊しましょう!」
という意味ではありません。
確定申告は、多くの個人事業者さんにとって・・・
これらの頭文字を取ると・・・
・・・と、「カクテイシンコク」になります。
もしくは、人によっては
「カクトウシンコク」(格闘深刻)
かもしれませんね。
「なんだ、つまらないダジャレか!」
と早合点しないで下さい(;^ω^)
「過苦低深刻」にせよ、
「格闘深刻」にせよ、
いずれも楽しい状況ではありませんよね。
しかも、精神衛生上もよろしくない。。。
ここで今、みなさんに考えて欲しいのです。
それは、
確定申告について、
どういうイメージをお持ちでしょうか?
確定申告に対するイメージ
・・・多くのご意見はこんなところでしょうか。
反対に、確定申告のことを・・・
カクテイシンコクをハカイする
みなさんはご存じですか?
カクテイシンコクを 「破壊(ハカイ)できる」 ということを。
それは。。。
カクテイシンコクを【楽しむ】ことです。
楽しい時って、
晴れ晴れとしていて、快い気持ちですよね。
晴れて、快い。
では、いったい
どうやったら確定申告が楽しくなるの?
って話ですが、
色々とご紹介したいメソッドがありますが、



妻の憂鬱と焦げたソースの匂い
一杯100万円のコーヒー
所得税法イソロク
時代遅れ
実はめちゃくちゃ難しい問題
コウセイノセイキュウ
ナンバーファイブ
夫婦それぞれが個人事業主
税務調査官の指摘
釈然としない夫婦それぞれの想い
フリーランスの経費の例
| 項目 | 勘定科目 | 計上できる例 | 計上できない例 |
|---|---|---|---|
| 食事代 | 会議費/接待交際費など | クライアントとの打ち合わせ/カフェでの仕事のコーヒー代 | 個人の食事代/一部社員だけ参加可能な飲み会 |
| パソコン代 | 減価償却費/消耗品費 | 業務に使うパソコン | 完全にプライベートで使用するパソコン |
| 車両 | 減価償却費/車両費 | 事業で使用している車両 | 完全プライベート用の車両 |
| 家賃 | 地代家賃 | 事務所/自宅兼事務所(家事按分が必要) | 別に事務所がある場合の自宅の家賃 |
| 電気・ガス・水道代 | 水道光熱費 | 事務所/自宅兼事務所(家事按分が必要) | 別に事務所がある場合の自宅の光熱費 |
| 書籍など | 新聞図書費 | 業務に関係する新聞/スキルアップ用の本 | 趣味で購入した雑誌や漫画 |
| 電車代 | 旅費交通費 | 打ち合わせのための交通費 | 個人的な移動の交通費 |
| 電話代・インターネット代 | 通信費 | 事業で使用した電話料金/事務所のネット回線使用料 | プライベートでのみ使用するスマートフォンの料金 |
| 項目 | 勘定科目 | 計上できる例 | 計上できない例 |
|---|---|---|---|
| ご祝儀・お香典 | 接待交際費 | 取引先・クライアントへのご祝儀やお香典 | 家族・友人・知人へのご祝儀やお香典 |
| 洋服代・ヘアサロン代 | 美容費/消耗品費など | モデルや司会 | 容姿が業務に関係ない職業 |
| 出張宿泊時の食事代 | 旅費交通費 | ホテル代とセットプランになっている場合 | ホテル代と別の場合における個人の食事代 |
| 項目 | 計上できる場合 | 計上できない場合 |
|---|---|---|
| タクシー代 | クライアントとの食事/出張先での移動 | 家族旅行での利用/個人的な用事 |
| 友人との食事代 | 相手が事業に関係する | プライベートでの食事 |
| 健康診断の費用 | 法人化している/青色専従者以外の従業員 | 法人化していない/青色専従者として働く家族 |
| スポーツジムの会費 | 事業がスポーツ関連で、仕事上ジムを利用する必要がある | プライベートでの利用 |
| 眼鏡やコンタクトレンズ代 | 業務で使用するブルーライトカット用の眼鏡 | 日常生活で使用する眼鏡やコンタクトレンズ |
迷ったときの判断基準




税務において意外と判断が難しい代表例の1つ
たとえば、これはどう?
たとえば、実は、修繕費と一口に言っても・・・
実は、修繕費と一口に言っても・・・原状回復のための修理について補足
※一口メモ
金額が大きい原状回復修繕を行い、かつ、税務判断として「修繕費」で落とす場合は、製造業のクライアントさんなどからは、日常的にこのようなご相談をよく受けます。
このように、修繕費に関するご相談は、特に、期末直前の金額の張る修理は注意
特に、期末直前の金額が張る修理は注意が必要です。(参考情報)修繕費とならないものの判定
売上は、経営者にとっては「お守り」のようなもの
増えれば安心するが、減れば夜も眠れない。
売上が増えると、自ずと、
変動費(仕入などの売上原価)も上がる。
このことは経営者ならば誰でも理解している。
しかし、売上が上がってくると、
毎月固定のはずの費用(固定費)も
上がってくる事がよくある。
<固定費の増加例>
●従業員を増員したので給料が増えた
●社会保険料や労働保険料が増えた(見落としがち!)
●福利厚生費が増えた。
●消耗品の使用量が増えた。
●水道光熱費が増えた。
●借りている駐車場を増やした。
●倉庫が手狭になったので、もう1件借りた。
これらは通常、会計の世界では「固定費」とされる。
つまり、売上が増えても、
仕入代のように連動して増えない経費、という意味だ。
しかし、実情はどうか・・・。
確実に固定費は増えるのだ。
売上UPをして、粗利が増えて、固定費は一定だから利益がワンサカ!
なんてことにはならない!!!
多くの中小企業経営者が資金繰り難に陥る理由はここだ。
だから「売上が増えればHAPPYになる!」という妄想を
一度捨てる必要がある。
つまり、売上至上主義を辞めるのだ。
売上は下がっても大丈夫。
その代わり、「粗利率で勝負をする!と決断する。
実際にあった話
この社長は、当初、
「今月は売上が●●万円くらいになりそうです!」
「来月は●●万円くらいの売上が取れそうです!」
と、売上の金額を話するタイプの人であった。
しかし、私はキッパリと社長へ言った。
売上はどうでもよろしい。
それよりも、
電気工事を行う現場ごとの原価を
算出し、現場別粗利率をはじき出すように、と。
私は事前にエクセルで作成しておいた
「現場別の粗利率算出シート」を差し出し、
入力方法を指導した。
すると、あることが分かった。
この会社の業態から言えば、粗利率は、
40%台は確保しなければいけないのに
「たったの数パーセント」しか発生していないではないか!
この社長は若いこともあって、
売上を獲得することに全精力を注ぎ、
しかも、粗利を「金額」でしか見ていなかった。
粗利の率は完全に見落としていた。
こんなに売上が増えているのに、
なぜお金が足りないのだろう・・・。
なぜ借入ばかり増えていくんだろう・・・・。
今までの社長の疑問は一瞬で払しょくされた。
「売上だけじゃなく、粗利が大事。
しかも、粗利は金額だけじゃなく、
利益率でもしっかり検討する必要がある・・・」と。
売上がドンドン増えて行っていたのは、
この会社の提示する見積価格が極端に低い為であった。
だから、注文がバンバン入ってきた。
けれど、仕事をすればするほど、
変動費(材料仕入・外注)を賄いきれず、
また、売上増加に伴う固定費のベースアップを支払えず、
銀行借入頼りという体質になっていたのだ。
この話のように、粗利益の金額は見積もっいても
粗利率(%)についてはあまり頓着しない人も多い。
商売人ならば、もっとそこにこだわるべきだ。
インターネットで検索すれば
中小企業の同業平均データなんてすぐに見れる。
自分の業界の適正な利益率、自社の抱える個別事情・・・。
それらを勘案して、かつ、金額だけではなく、
「比率」でもしっかりと粗利益を見積もる必要がある。
私はこの会社の社長に、売上至上主義を辞めて、
売上はちょっとくらい下がっても良いから
粗利率UPにだけ取り組んでもらった。
すると、どうなったか。
3か月目くらいからお金が溜まり始めた。
「月末に、銀行にこれだけお金が残っているなんて!」
社長は初めての経験に歓喜した。
みなさんの会社はどうだろうか?
当然、会計ソフトできちんと入力しているだろう。
しかし、現場別、商品別・サービス別で「原価と粗利」を、
そして、そこから個別の粗利率を算出できるような
会計体制を日頃から整えているだろうか?
1. 減価償却費の特例とは?
このとき、「10万円」は
通常取引されている単位で判定します。
例えば、
では、9万円のパソコンと5万円のプリンターとを
同時に購入した場合はどうでしょうか?
この場合、
同時に買った物(パソコンとプリンター)が
「一体利用される物かどうか?」
「一体でないと機能しない物かどうか?」
によって判断します。
上記の例の場合、
9万円で買ったパソコンが
他のプリンターと組み合わせ可能であれば、
同時に購入した5万円で買ったプリンターとは
別個の取引の単位とみなされます。
しかし、
初めてパソコンとプリンターを購入した場合は
両者一体で機能する物と考えられますから、
合計額(14万円)によって判断する必要があり、
これが10万円以上であれば、固定資産計上となります。
※なお、例外として、
10万円未満の固定資産でも、
すぐに他人に貸し付けて賃貸料を取るものは、
耐用年数に渡って減価償却することになります。
個人事業主と資本金が1億円以下の法人であれば、
10万円以上30万円未満の固定資産は一度に経費に計上できます。
これを「少額減価償却資産の特例」と呼ぶのですが、
この特例は【1年間で合計300万円まで】しか適用することができません。
③ 10万円以上20万円未満の固定資産について
10万円以上20万円未満の固定資産は、
「一括償却資産の特例」を適用すれば
3年間で均等に償却することができます。
例えば、
1台18万円のパソコンを購入したときには、
毎年6万円(=18万円÷3年)を
減価償却費として計上していきます。
この一括償却資産の特例は
1年間で適用できる上限金額が定められていません。
そのため、1年間で購入した一括償却資産の合計金額が
何百万円となったとしても、それぞれ3年間で償却できます。
※さらに、一括償却資産の特例は、
通常の減価償却費のように、
年の初月以外の途中月に購入しても「月数按分」は不要です。
2.一括償却資産の特例を使う理由とは?
では、1台18万円のパソコンを購入した場合はどうでしょうか?
多くの人は、
「3年間かかる一括償却資産の特例ではなく、
1年で300万円という上限規制に余裕があるのであれば、
少額減価償却資産の特例の方がいいのじゃないか?」
と考えるかもしれません。
ところが、少額減価償却資産の特例を適用するときには
注意点もあるのです。
それは、毎年1月1日時点で10万円以上の
構築物・機械・工具・器具・備品などの固定資産を所有していると、
1月中に「償却資産の申告書」を市町村に提出する必要があり、
かつ、固定資産税を支払う義務が生じます。
しかし、
一括償却資産として区分されたものは
10万円以上の固定資産であったとしても、
この申告対象から除かれるのです。
確かに、一括償却資産の特例を選択すれば、
所得税や法人税はかかりますが、
計上できる経費は同じです。
一方、少額減価償却資産の特例を選択した固定資産は
決算書には計上されていませんが、
「償却資産の申告」には記載して固定資産税の対象となります。
この固定資産税の税率は1.4%です。
例えば、少額減価償却資産の特例の上限金額である300万円に1.4%をかけると
1年間で42,000円の固定資産税がかかることになります。
3. どちらを選択すべきなのか
そこで、購入した固定資産に対して
少額減価償却資産の特例と一括償却資産の特例の
どちらを適用すべきか判断する必要があるのですが、
そのポイントがあります。
まず、利益が赤字になるならば、
減価償却の期間が3年間となる一括償却資産の特例を選択すべきです。
次に、利益が黒字になるならば、
固定資産税はそこまで高くないため、
少額減価償却資産の特例を選択すればよいでしょう。
最後に、利益は黒字で、かつ、少額減価償却資産の特例
の上限金額である300万円を超えて固定資産を購入した場合です。
このときは、パソコンにインストールするソフトウェアなどの
無形固定資産には固定資産税がかからないため、
優先的に少額減価償却資産の特例を適用していくのがコツです。


これまで

これから

これまでと、これからと
そして、今
決算書や試算表では利益が出ているのに、お金は残っていない・・・。
「勘定合って銭足らず」が起こる原因

土地の評価額、最大80%OFF
相続で子に居宅を引き継ぐとき、
◆被相続人の要件
(1)被相続人に配偶者がいないこと。
(2)相続開始の直前において被相続人と同居していた法定相続人がいないこと。
◆取得者の要件
(1)被相続人の居住用宅地を相続又は遺贈により取得すること。
(2)居住制限納税義務者または非居住制限納税義務者のうち日本国籍を有しない者ではないこと。
(3)相続開始前3年以内に、日本国内にある「下記の家屋」に居住したことがないこと。
(4)相続開始時に、自己が居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないこと。
(5)相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を有していること。
◆老人ホームに入居の場合
相続開始の直前に被相続人の居住の用に供されていなかった場合においても、
◆孫に遺贈することもできる
この「家なき子特例」は
| もうすぐ3月を迎えようとしています。 3月と言えば法人決算。 今日は「法人の節税対策のいろいろ」と題して 一例をご紹介させて頂きます。 【ご注意】 本稿は、一般的な節税方法を簡潔にご紹介することを目的としておりますので、 適用の可否や節税効果の有無を担保するものではありません。 よって、当方は一切の責任を負いかねますこと、あらかじめご了承下さい。 なお、実務上の具体的な適用については顧問税理士・税務署にご相談下さいませ。 ◆ 経営セーフティ共済(倒産防止共済)への加入 年払いで240万円までを損金にすることができます。 加入資格は次のとおりです。 https://kyosai-web.smrj.go.jp/tkyosai/entry/index_01.html 年払いをする場合の注意点として、 前納希望月の5日(土日祝日の場合は翌営業日)までに 「掛金前納申出書」が中小機構に到着していることが必要です。 https://kyosai-web.smrj.go.jp/customer/tkyosai/installment/describe/index_02.html なお、オンラインでの手続きも可能です。 https://kyosai-web.smrj.go.jp/online/describe/index_03.html ◆ 決算賞与の支払い 期末までに各従業員に決算賞与の支給額を通知し、 翌期1か月以内に支払うなどの要件を満たせば、 当期の決算において、未払い計上(損金計上)できます。 この決算賞与は賃上げ促進税制の対象にもなりますので、 要件を満たせば、法人税を税額控除できる金額も増加します。 ◆ 社会保険料の未払い計上 社会保険料(健康保険、厚生年金保険)は、 会社と従業員が折半して負担していますが、 その支払いは会社が翌月にまとめて行います。 このとき、会社の負担分については、 未払い計上(損金計上)することができます。 ただし、上記の決算賞与の未払い計上に対応する社会保険料の 会社負担分は未払い計上できませんので、 ご注意ください。 ◆ 固定資産税の未払い計上 固定資産税は賦課決定があった日の属する事業年度の損金の額に 算入することができます。 すでに納税通知書が届いている場合には、全額を損金に計上しましょう。 まだ支払っていない金額は未払い計上ができます。 ◆ 非常勤役員への役員退職給与 いくらまでならば税務上認められるか?という論点はありますが、 退職しても問題ない非常勤役員がいるならば、 実際に退職してもらい、役員退職給与を支払いましょう。 なお、役員退職給与の損金への算入時期は、 原則として、株主総会の決議等によって、 退職金の金額が具体的に確定したときとなります。 ◆ 常勤取締役から相談役、会長、監査役などになる人がいる いくらまでならば税務上認められるか?という論点はありますが、 このような方がいるならば、役員退職給与を支払いましょう。 ◆ 福利厚生費を計上する 期末までに従業員の50%以上が参加する社員旅行(4泊5日以内)に行けば、 その旅費は福利厚生費として計上できます。 ただし、旅行代金のうち会社負担分が高額すぎると給与とみなされて、 源泉徴収の対象になってしまいます。 これで翌期の従業員の士気を上げていきましょう。 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2603.htm ◆ 広告宣伝費を使う たとえば、ホームページをリニューアルする費用は損金となります。 ただし、ホームページにシステムを組み込む場合の システム構築費などは除かれます。 なお、期末までに完成していることが必要です。 ◆ 固定資産(含み損)や不良在庫の売却、除却 期末までに含み損のある固定資産や不良在庫の売却、除却を行えば、 売却損、除却損、除却費用が当期の損金として計上できます。 ◆ 棚卸資産、有価証券、固定資産、繰延資産に関する含み損の計上 一定の要件を満たす前提はありますが、 これらの評価損の計上ができる場合があります。 棚卸資産の評価損(著しく陳腐化したもの) https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_01_02.htm 有価証券の評価損 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5574.htm 固定資産の評価損 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/renketsu/08/08_01_04.htm ◆ 含み損のある有価証券の売却 含み損のある有価証券を売却して、売却損の計上を検討しましょう。 ◆ 期末までに終了できる修繕を行なう この修繕の内容が ・ 通常の維持管理 ・ 災害等によりき損した固定資産の原状回復費用 のいずれかならば、金額に関わらず、全額が損金になります。 現在、修繕中のものがあれば、期末までに終わらせるようにしましょう。 ◆ 10万円以上30万円未満の器具備品などの購入 青色申告法人であれば、年間300万円まで損金にできます。 1つが30万円超の固定資産でも2社以上で共同購入することにより、 1社の負担額が30万円未満になれば、損金に計上することができます。 なお、10万円未満の器具備品を購入した場合、 期末までに事業で使用を開始すれば、 金額の上限なく全額を損金として計上できます。 ◆ 事務用品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品などの購入費 通常は「消費」した事業年度の損金となりますが、 事業年度ごとにおおむね一定数量を購入し、 かつ、経常的に消費するものは 購入日の属する事業年度の損金として計上できます。 未使用のものでも「貯蔵品」として資産計上する必要はないということです。 ◆ 貸倒損失の計上 回収できないことが明らかである不良債権があるならば、 貸倒損失として、当期の損金となります。 1例ですが、債権放棄の内容証明郵便が期末日までに、 債務者に到着することなどの要件を満たすことにより、 貸倒損失を計上することができます。 ◆ 生命保険への加入 支払った保険料の全額、4割、6割などが損金になる生命保険があります。 「保障をどう考えるのか?」ということは非常に大切なテーマです。 黒字でも赤字でも「保障」を考えて、必要な生命保険に加入しましょう。 ◆ 新商品等を発明する試験研究を行う 新商品や新サービスを発明するための試験研究費は、 試作モデルが完成するまでは、全額が損金となります。 他の会社に委託して試験研究を行っても問題ありません。 さらに、試験研究費が過年度よりも増額しているなどの要件を満たせば、 法人税の税額控除の対象にもなります。 ◆ 家賃など、翌期1年分の費用を期末に支払う 期末に翌期1年分の家賃などを支払うことにより、 本来は翌期の損金になる費用が当期の損金として計上できます。 https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/02/03.htm ◆ 決算月の変更(前倒し) 期末までに単発で多額の利益が計上されるならば、 決算月を前倒しにすることを検討しましょう。 多額の利益が期末ではなく、期首に計上されることになります。 手続きは株主総会の決議、税務関係の届出となります。 |
1.改正電子帳簿保存法の概要
令和6年1月より「改正電子帳簿保存法」がスタートしております。
「これにどう対応したらいいのですか?」というお問い合わせも多いため、
今回はこれを取り上げます。
まず、国税庁の「電子帳簿等保存制度特設サイト」を見ると、
①電子帳簿・電子書類
②スキャナ保存
③電子取引
という3つが記載されています。
このうち①と②は令和6年1月以降も紙のままでも問題ありません。
確かに、②のスキャナ保存をする場合、紙の領収書や請求書などを
紙で保存しなくてもいいというメリットはあります。
しかし、
という要件があります。
だから、中小企業の場合は①と②は電子対応ではなく、
紙での対応のままでイイのです。
2.電子取引には対応するしかない
ただし、③の電子取引は別です。
どんな会社でも「アマゾンや楽天などのインターネットでの物品やサービスの購入」や
「メール添付による請求書の送受信」などを行っているでしょう。
③の電子取引からは逃げられないのです。
しかし、この運用をしようと思うと
が必要になります。
規程の作成などにもコストがかかります。
いずれにせよ、これだけ日本全国の企業が人材不足で悩んでいる中、
電子保存のために手間と時間とコストを割く必要があるのです・・・。
3.国税庁から発表された情報
ここで、朗報があります。
国税庁が令和5年11月17日に発表した情報よれば、
電子保存ができない場合でも、
次のような状況であれば問題ない旨が記載されているのです。
なお、「幅広い」に特段の定義はないので、幅広い理由ということになります。
また、電子データを消さずに保存する必要があります。
特に、インターネットで物品等を購入した場合、管理画面で何年間保存されているかの確認や、
パソコンの入れ替えに伴い、メールや添付資料が無くなることに注意する必要があります。
結果として、人手不足・システム整備が間に合わない・資金不足などの「幅広い理由」の1つにでも該当すれば、
4.税務調査ではどうなる?
実際の税務調査を考えても、電子データの保存さえしてあれば、
問題になることはまずないでしょう。
ということで、ボクは・・・
①電子帳簿・電子書類:対応せんでよろしい(紙保存のまま)
②スキャナ保存:対応せんでよろしい(紙保存のまま)
③電子取引:これだけは対応せなアカン(電子データの保存)
・・・とクライアントさんにご説明させて頂いています。
結果、多くの中小企業の対応としては
ということで、税務調査の際に問題が起きる可能性は非常に考えられます。
改正電子帳簿保存法は開始から1年が経ちましたが、
「幅広い」理由(特段の定義なし)があれば、
上記のとおり、大掛かりな対応をしなくても問題ないのです。

いよいよ確定申告
相談会の実施要領
多くの人は「会計ソフト」を使っているかと思いますが、
入力作業をスムーズにするためには
<請求書・領収書を美しく整理すること>が重要です。
今日はその一例として
「現金で払った経費領収書の整理の仕方」
をご紹介しますね。
【001:準備編】
■用意するもの・・・大学ノート12冊
■対応できる規模(目安)・・・年商5億円程度まで(法人・個人問わず)
■大学ノートの表紙に【●年●月分領収書】という感じでタイトルを書きます。
大学ノートは、開いた左右のページで1日分とカウントするとちょうど31日分あります。
(最初に開いたページは、左側が厚紙で、最後のページは右側が厚紙です)
■最初に開いたページの右肩に日付(例:6/1)と書き、
次ページ以降の右肩にも同じように日付を書いていきます。
1ヶ月1冊として、全12冊で一年分となります。
(★領収書が少量の場合は「005:注意点」の②で説明しています。)
【002:実践編①】
では、領収書を実際にノートに貼り付けしていきましょう。
すごく簡単です。
領収書に日付が書いていますよね?
この日付のとおりに、先ほどノートの
右肩に書いた日付のページに貼っていくだけです。
はい、終わり!
「えええ???」
という声が聞こえてきそうですが
本当にこれだけです。
【003:実践編②】
会計ソフトの現金出納帳に入力しよう
では、領収書ノートから会計ソフトの現金帳に入力していきましょう。
領収書ノートの最初のページから日付順に会計ソフトに入力していきます。
入力したら領収書に赤ペンチェックをつけておけば
【入力済み】のシルシとなり、二重計上が防げます。
はい、現金帳の経費入力がこれで完成!
「えええ????」と再び聞こえてきそうですが
本当にこれだけです。
【004:このやり方の優れた点】
■多くの方が領収書の整理に手こずってきた理由は
勘定科目の正しい知識があまりないのに
一生懸命に科目ごとに分類しようとしたり、
取引先別(支払先別)に分類しようと試みて、
だんだんややこしくなってしまい、
結果「イヤイヤ病」にかかってしまうからです。
でも【日付】は誰にでも分かります。
■このやり方は、優れた点がいくつもあります。
①領収書の日付さえ分かれば、誰でも出来る。
(会計知識は不要。老若男女も問わず)
②ノート保管なのでスッキリ整理できる。
③見やすい
④あとで財布やポケットから領収書が出てきた時でも追加で貼りやすい。
【005:注意点】
なお、注意点もあります。
①ノートの空白の日付(ページ)をもったいがらない。
空白のページがあるという事は、現金払いの経費が無かったことの証明で
す。モッタイナイ星人の性分を発揮して無理矢理、他の日付を詰めて貼っ
たりするとせっかくの美しく整然と並んだ物がグチャグチャになります。
ノートくらい贅沢に使いましょう。
②ノート両開きで1日分は余り過ぎる場合
現金払いの経費が極めて少ない場合は、片ページだけで1日分とすれば良
いでしょう。そうすると、ノートの最初の見開きの左側(厚紙)から、最
後のページの見開きの右側(厚紙)まで数えると62枚になります。
つまり、2ヶ月分が1冊で管理できることになります。この場合、ノート
の表紙のタイトルは【H30年1~2月分】という具合に書きましょう。
【006:さいごに】
いかがだったでしょうか?
実際に私の事務所では、法人客・個人客を問わず、
顧問先さんにはこの方法をお勧めしています。
1日の仕事が終わったら今日の振り返りを兼ねて
「3分間の領収書整理タイム」を取って下さいね。
いくら簡単な方法でも貯め込むとキツイですからね。


昨日のブログは『仕事が忙しくて会計は後回し』
という方へ向けてのメッセージでした。

昨日のブログは『そもそも会計がワカラナイ!』
という方へ向けてのメッセージでした。

では、昨日のお話の続きをお伝えしますね。
これからご説明させて頂くお話は・・・
そんな方々がいったいどうすればイイのか?
って話なんですけど、
そこから今日のお話をスタートしますね。
【考えられる原因 その1】
~そもそも会計がよく分かっていない~
そもそも会計が分かっていないのであれば
そりゃあキツイですよね(;^_^A
やる気もなくなります。
だってよく分からないんだもの。
・何から取り組めば良いのかも分からない。
ちょっとお弁当づくりを想像して欲しいんですけど、
あっ、「レンチン食材」を詰め込むような<超特急弁当>じゃなくって、
普通のお弁当づくりをイメージして欲しいんです。
例えば、お弁当って言えば、
玉子とか、ウインナーとか、ホウレンソウとか、
色んな食材を使うじゃないですか。
でも、冷蔵庫から出した食材を
何の調理もせずに
ぐちゃぐちゃっと
弁当箱にぶち込む人っていないですよね。
玉子焼きを作るなら、
お砂糖やお塩も必要だし、
玉子をかき混ぜるボールも出しておくし、
フライパンも熱しておいて、
んでもって、ジューっと。
ウインナーにしても
袋ごと弁当箱にぶち込まないでしょ?(笑)
そんな豪快な人がいたら逆にちょっと見てみたいですけど(笑)
ちょっと切れ目を入れてから焼いたり、
タコさんにしたり(愛情💓)、
焼きあがったら斜めにカットしたり。
ホウレンソウにしても、
お浸しにするなら、
ちゃんと下茹でをしてアクを抜いて、
お醤油で味付けをして・・・。
そして、調理し終えた各種の品々を、
味が混ざらないよう
その種類ごとにお皿にいったん乗せておいて、
で、最後に、お弁当箱の各ブロックに詰めていく・・・。
会計って、これと似ている、
いや、ほぼ一緒なんです。
お弁当づくりも、会計処理も・・・
例えば、仕事で使う事務用品を買った時のレシート。
あるいは、お客様へのプレゼント品や食事接待のレシート。
🔴あれ、どこに行ったっけ?・・・そんなことになってないですか?
🔴見つけ出すのが苦労するくらい、見るのもイヤになるくらい、
グチャっとクッキーの缶とかに入れていませんか?
🔴何を買ったのか、何のために買ったのか、だれを接待したのかなど、
・・・そんな経験はありませんか?
会計がワカルってことは、こういうレシート1枚の
取り扱い方法ですらワカルってことなんです。
そして、このレシート1枚が会計処理の
どういう場面で必要なのかワカルってことなんです。
逆に言えば、
会計がよく分かりません💦って状態の人であれば、
恐らく、各種の資料(領収書とか請求書とか通帳とか)について、
日頃からどのように整理整頓しておけば良いかってことも
分かっていないんです。
具材をちゃんと整理して保管できるってことは、
その先の流れが分かっているという証拠。
つまり、ゴールが分かっているからこそ、
最初にどうしておいた方が良いかという「初動対応」も分かるんです。
そのためには、やはり、頼って頂きたいですね、
ぼくたち、税理士を。
あなたの苦手は誰かの得意・・・それが世の中です🍀
ボクも散髪は自分でできませんし、
お米も作れません。
だから、髪を切る専門家である散髪屋さんにお世話になるし、
お米作りの専門家である農家さんに(スーパーを通じて)お世話になるし。
みなさんも、そうでしょ?
オレ・ワタシは何もかも一人でやってきて誰の世話にもなってないんだ!
・・・なんて人は地球上に存在しない訳です🌎
ね、こう言ったらみなさん、ンダ、ンダ、と納得できるんですよ。
でも、なぜか、経理や会計の話になると、
ワカラン・ワカランって言うんです。
これって、よく考えたら、おかしな話ですよね(笑)
何でもかんでも
自分ひとりで抱え込む必要はないですよ。
最初は勇気がいるし、恥ずかしいかもしれないけど、
ちゃんと税理士さんに頼ったらいいんです。
ぼくたち税理士は、だれか困っている人をお世話したり、
相談されたりするのが大好きな人種なのです。
いくらか費用は掛かりますが、
会計の基本的なことや、経理の初期段階でつまづいているような人であれば
「え、そんな値段でイイの?」ってくらい、
良心的な値段で相談に応じてくれますよ。
これが一番の近道です。
長年、ご自身で経理をされてきたベテランの人でも、
ボクが何気にさらりとお教えさせて頂いたことに
「えー、そんな方法があるんですか!」
・・・ということもザラです。
会計がワカラン!
何からやったら良いのかもワカラン!
そういう人は、まず、ボクたち税理士がいますよ、
ってことを改めて思い出して下さいね。
次回のお話は、原因その2。
仕事が忙しくて、経理の時間がなかなか取れない!
・・・っていう方へのメッセージです。










兵庫県芦屋市楠町(くすのきちょう)。
今となっては全く想像もつかないが
マンションに囲まれた
国道2号線沿いに
今から約700年弱前(西暦1336年)に
「楠木正成」と「足利尊氏」が戦った
合戦跡碑がひっそりと立つ
小さな公園がある。
その公園の名を
「楠(くすのき)児童遊園」
と言う。
私は
その公園の名前を
一生忘れないことだろう。

■2
2022年10月23日、日曜日。
早朝5時37分。
私は
満身創痍で
その公園に辿り着いた。
この公園は
第4チェックポイント。
前日の朝8時台に
姫路城の公園を出発し
100km先の大阪城公園を目指して
26時間以内に歩くという
『関西エクストリームウォーク100』に
私は参加していた。
スタート地点の姫路を出発した後は
加古川市、明石市、神戸市と
3か所のチェックポイントを経ながら東進し
そして今やっと
4つ目のチェックポイントに
辿り着いたのである。
もうすぐ西宮市
その次は尼崎市
そして
その先はいよいよ
大阪城公園のある大阪市
である。
しかし
戦いには「ふいの終わり」もある。
両脚が鉄の棒のようになって
辿り着いた私に
大会の運営スタッフさんの
一人が近づいてきて
優しく声をかけてきた。
「お疲れさまでした。
残念ですが
関門時刻が5:00ですから
5:37着ということは
37分のタイムオーバーで
リタイヤ扱いとなります。
ナイスファイトでした。」
10月下旬の割には
夜間の歩行中も全く寒くなかったのに
終了宣告をされた途端に
私は寒気を感じ
持参していたレインウェアの
上下をリュックサックから取り出して
着込んだ。
77km地点か・・・。
やっぱり、アカンかったか・・・。
最初から100km完歩できるとは
思っていなかった。
翌月の東京大会にも
エントリーしていたので
今回の関西大会はいわば
前哨戦、練習だ・・・
と、それくらいにスタート前は思っていた。
しかし、あと23km。
もう少し途中で頑張っていれば
何とかなったのではないか?
「後悔先に立たず」
とは正にそのとおりで
出てしまった結果は
どうしようもできない。
最寄りの駅をスタッフさんに尋ね
帰途につくため
電車に乗り込んだ。
ㅤ
(悔しい・・・)
早朝かつ日曜日という事もあり
車内の乗客は『まばら』であったが
目から自然と
熱いものが頬を伝い落ち
既に汗まみれになったタオルのせいか
拭いても拭いても
その熱い流れを拭き取ることができず
周囲の乗客の目を気にしつつも
しかし
この自然現象を
どうすることもできなかった。
難波駅で降りて乗り換える筈が
気が付いたら寝過ごして数駅先まで
電車は進んでしまっていた。
「今度こそ、必ず・・・」
眠気と解放感と悔しさが入り乱れる
複雑な精神状態ではあったが
それでも、心には<確実なモノ>があった。
私は
次回完歩への決意を固め
まもなく到着した駅のホームに降り立ち
家路へと急いだ。

■3
そもそも自分は
こんなストイックな大会に
出るようなキャラではない。
しかし、元々は「熱血派」である。
野球部・吹奏楽部・キャンプリーダー活動など
学生時代は一応人並みに色々と経験させて頂いたが
活動内容そのものよりも
むしろ、仲間と共に何かを目指して
真剣に取り組むことが
自分は好きであった。
しかし
税理士になってちょうど20年。
すっかり中年の社会人となった自分は
かつてのような熱い気持ちを忘れかけていた。
記憶の中では
「自分は熱いタイプの人間である」と
言えるのだが
現状として、それを実感するものが
何もなかった。
それに対して
心のどこかで
熱中できる場・機会を
探していたのかもしれない。
2年前の2020年12月。
私は
「一般社団法人 思考の学校」の
認定講師の資格を取得した。
中小企業経営者と向き合う
税理士の仕事をしていく中で
税務や数字とは異なるアプローチ
でも支援ができないものか
・・・それがきっかけであった。
その後
同じ講師仲間さんたちと
ロンダ・バーン著の
「ザ・マジック」という書籍の
「28日間ワーク」を
実践する機会が与えられた。
日頃見落としがちな感謝について
28日間かけて
「ありがとうワーク」をするのである。
このワークの面白いところは
過去の成果や出来事に対して
感謝するだけではなく
自分の思い描く未来に対しても
先に「ありがとう」と
感謝をする点だ。
その28日間ワークの中で
私は
ある未来を設定し
それに感謝した。
それは
「大学時代のキャンプカウンセラー仲間のT君と
アウトドアー活動などを楽しむことができて
ありがとう」
・・・というものだった。
その後すぐ
不思議な出来事が起きた。
その友人は関東に住んでいるので
関西に住む自分とは
普段会う機会がない。
電話等も
特にやり取りしていた訳ではない。
大学生時代
キャンプカウンセラー活動で
同じ持ち場となり
気さくで
大ざっぱで
イタズラや冗談が好きで
しかし
信頼のおける人柄が魅力的な
人物であった。
複数のサイトを持つ大きなキャンプ場だったので
そこで従事する大学生たちは百名以上いたと思うが
あまりにも人数が多すぎて
他のメンバーのことはあまり覚えていない。
しかし、T君のことは
よくイタズラも一緒にしたので覚えていた。

■4
話を元に戻す。
ある日
T君がSNSに投稿した記事が
私の目に留まった。
「コロナも落ち着いてきたので
今年の7月下旬、久しぶりに富士山
に登ろうと思います。
一緒に登りたい人はどうぞ」
と言うような内容だったと思う。
私の中で
イナズマが走った。
「奇跡や!」と思った。
私はすぐ
T君に連絡を取り
一緒に富士山に登りたい!
と参加を申し出た。
T君は、昔同様
快く、きさくに受け入れてくれた。

■5
2022年5月。
私の富士山初登頂へ向けた
取り組みが始まった。
これまで日々深夜まで仕事をし
食事も不規則で不摂生で運動不足。
おかげで身長171cmなのに
お腹はタヌキのように膨れ
体重も83kgと
完全に中年太り。
到底、現状では
富士山に登れるような
カラダではなかった。
一念発起した。
近くのパーソナル・ジムに入会することにした。
よくある集合形式の
月1万円でいつでもどうぞ!
と言うような
お手頃価格ジムではなかったが
決意を確かにするためには
あえて、少々高くても
しっかりとしたコーチングを受ける
そのためには
払うべきものは、払う
という覚悟も必要であった。
ジムのコーチに
7月末に富士山に登りたい旨を伝え
以降、それに向けて週イチの
トレーニングが始まった。
毎日食事の写真もLINEで提出し
食事管理指導もしてもらった。
ジム以外では
近場の山に登ったり
近所をウォーキングしたりと
運動量を増やすことに努めた。
今までは
深夜に帰宅してはスナック菓子を食べたり
カップラーメンを食べたりする日々が
長らく続いていたが
悪習慣も、きっぱり辞めた。
ダイエットだけが目的なら
キツかったかもしれない。
途中で挫折していたかもしれない。
しかし
「富士山」という大きな目標ができたことで
日々の生活が突然ワクワクし始めた。
仕事先でも
富士登山に向けて
取り組んでいる話をすると
意外や意外
多くのお客さんが
なぜか異様に喜んでくれて
そして、応援してくれた。
また、今までは仕事の面だけしか
知らなかったが
「以前は、よく山登りに行っていたんだ」などと
意外にも山登り好きな社長さんが
多いことも改めて知った。
今までとは違う
また新たな共通話題ができたようで
仕事の先々での会話も楽しくなった。

■6
2022年7月30日。
富士登山の日がやってきた。
T君、そして、
主にT君の会社のメンバーなど総勢9名。
夜8時に須走口5合目をスタートし
山小屋に泊まらない<日帰り弾丸登山>という
ストイックな形で我々は山頂を目指した。
薄くなる空気。
動かなくなる足。
高度を増すごとに
1歩を出すのも大変で
0.8歩が精一杯。
しかも、20歩進んだら休憩。
多くのメンバーは経験者だったが
初心者の自分を気遣って
山頂に至るまで
「ゆっくりでイイですよ」
「必ず、登頂できますからね、焦らなくても大丈夫ですよ」
と常に励ましながら
自分と共に歩いてくれた。
そして
ついにその時はやってきた。
登山開始から11時間後の朝7:00。
汗と涙でクシャクシャの
顔になりながら
登頂を果たした。
持参した日の丸をかかげて
記念写真を皆で撮った。
途中で見た星の美しさ。
途中で食べたカップヌードルのうまさ。
支えてくれたメンバー。
山頂からの眺め。
自分は
一生忘れることのできない
貴重な体験を
T君とT君の仲間のおかげで
味わうことができた。
下山時の須走ルートは
登り以上に大変過酷で
11時間の登りで疲れ切った足に
まともに下りの負担が襲ってきた。
足が痛い。
つま先の感覚が完全にない。
つらさのあまり嫌気がさして
私は始終、悪態をつきながら
歩いていた。
「もう二度と富士山には登らない!」と。
それでもT君は
「あともうちょっとや、あともうちょっとや」と
私を安心させるために
<気遣いのウソ>
を連発しながら
最後の最後まで
一緒に歩いてくれた。
(今思えば
富士登山に慣れている
T君ではあったが
彼は膝に爆弾を抱えており
彼自身も大変だったのだが
その時の私は
そんな配慮の1つもできる
精神状態ではなかった)
私の下山ペースが
あまりにも遅かったので
他のメンバーは先に登山口まで下り着いており
私とT君だけが
最後の下山者となった。
下山だけでも
4~5時間かかったかと思う。
しかし、下山の所要時間は
あまりよく覚えていない。
キツすぎて写真等の記録もなく
記憶に頼る限りだ。
しかし
T君が下山中だったかに
話してくれた言葉は覚えている。
「この年になると
チャレンジする機会が減ってくる。
でも、チャレンジ精神というのは
いつまでも持っていたいもんや」と。

■7
富士山から帰宅した翌日。
足はガクガクになっていた。
ペンギン歩き、と言うらしいが
家の階段の上り下りも大変だった。
しかし不思議なもので
昨日は「二度と登りたくない」
と思ったばかりなのに
改めて撮影した写真を眺めていると
確かにキツかったが
とても楽しくて貴重な経験
であったことに
改めて気付かされた。
「来年も登りたい・・・」
下山中はあれほど
もうイヤだと思ったのに
味わった感動の方が
はるかに上回っていた。
しかし
来年の富士登山まで1年ある。
さて、それまでどうするか・・・。
新たな目標をどうするか・・・・。
そんな折
「100kmウォーク大会」という
過激なレースがあることを知った。
10月には関西大会が
11月には東京大会が
あるという。
「これだ!」
と自分は思った。
富士山のおかげで
すっかりチャレンジ精神に
火がついてしまっている。
しかし
一人で参加すると<あきらめる自由度>が
高くなりすぎるので
<巻き添え>が必要だ
と思った。
私は
すぐT君に連絡をした。
最初は渋っている様子だったが
「俺のチャレンジ精神に
火をつけた責任をとれ!」
と、今思えば
何とも身勝手な因縁をつけて
T君を脅迫したものだ。
結果、T君も
11月の東京大会に参加することになった。
しかし、それだけでは自分は飽き足らず
その前月の10月に開催される関西大会にも
エントリーしようと思った。
前哨戦、予行演習になれば
と考えたからである。
私はそこでも
巻き添えが必要だ
と思い、マラソンを始めていた
高校時代からの友人に声をかけて
快諾を得た。
このようにして
2022年7月30・31日の二日間で
富士山初登頂を終えた私は
次なる目標として
〇10月の関西100kmウォーク大会
〇11月の東京100kmウォーク大会
を設定したのであった。

■8
セミの鳴き声がうるさい8月上旬。
「ウォーキング」と言っても
散歩くらいのイメージしか沸かない。
しかも、今は暑い夏である。
ストイックな練習には
あまり気が進まないが
取り敢えず
YOUTUBEやインターネットで
過去大会の情報を漁った。
しかし、それらから得られた結果は
<100kmウォーク大会は並大抵のものではない>
というものだった。
一瞬、10月と11月の2大会にも
エントリーしてしまった自分を後悔しかけたが
友達も誘った以上、後には引けない。
(まさに、巻き添え効果、である)
先日、富士山初登頂を
喜んで下さったばかりのジムの先生に
「今度は秋に
100kmウォーク大会に出たいので
それに向けて
足の強化メニューで指導して欲しい」
と、お願いをした。
先生も
最初はビックリした様子だったが
その日からネチネチと
まるでいじめられているかと
錯覚するほどの
下半身を痛めに痛めつける
トレーニングが始まった。
それと共に
〇シューズやソックスの重要性
〇歩き方
〇歩く時の姿勢など
学ぶべきことが多くあることを知り
まさに知識ゼロからの状態で
取り組み始めた。
日常的なウォーキングも
近所を2時間程度では全くダメだと思い
足腰に効果のある登山をトレーニングに併用しながら
そして、なんなら
クルマで行っていた登山口までの道のりを
往復歩くように変更した。
自ずと、歩ける距離が
5km→10km→20km→30kmへと
徐々に伸びていった。
そして
関西大会が開催される3週間前には
実際の100kmコースを
2週末に分けて50kmずつ歩き
これでなんとか出来る限りの準備は
整ったのではないか
と思えるようになった。

■9
2022年10月22日、土曜日。
関西エクストリーム・ウォーク100。
いよいよ大会当日の朝を迎えた。
高校時代の同級生とは
姫路城の近くに
前泊して臨んだ。
しかし
初めての大会が故
色々と面食らうこともあった。
友だちと私とでは
スタート時間が30分ほど違っていたのだが
後発の私はすぐに追いつけると思っていた。
しかし、ウォーキングで30分差はかなり大きく
さらに、日頃からマラソンで鍛えている友人と
たった数か月の付け焼刃の自分とでは
雲泥の差があった。
「あとで追いつくから」なんて
最初のセリフに反して
結局、最後まで追いつけなかった。
スタート前の独特の緊張感。
スタート後の異様な焦り。
それに加え
あらゆるケースに対応するべく
持参しすぎた装備のせいで
リュックサックが
<ヘビー級>と化していた。
参加者の多くは
非常にコンパクトな装備で
相当小慣れしている感があった。
日焼けした肌の色を見ても
百戦錬磨の猛者ばかりに思えた。
(実際、参加者の多くは
各地の100km大会に出たり
マラソン大会に出たりと
かなりの猛者ばかりであった)
練習走行と称して2週に分けて
事前に50kmずつ歩いた時とは
勝手が全く異なり
結果的には
ペース配分も休憩時間も
全く自己管理が出来ていなかった。
マラソンで鍛えている友人ですら
初参加の100kmウォークは
要領が得なかったようで
制限タイム26時間の
ギリギリのゴールとなった。
私の方は・・・。
最初に書いたとおり
77km地点の第4チェックポイント、
芦屋市楠町で終戦となった。
しかし
よくぞ11月の大会も
前もって同時に申し込みを
していたものだ。
やはり百聞は一見。
実際に大会に出てみると
非常に多くの反省点・改善点を発見できた。
そして何よりも
「関西大会は練習だから
100km歩けなくてもいいや」
という当初の気持ちとは裏腹に
悔しさでメラメラと燃えるものが
湧き上がってきた。
それと共に
私にチャレンジすることの大切さと
素晴らしさを改めて教えてくれた
T君と共に
東京100kmを完歩したい!
という思いが強くなった。
今回、関西大会に
付き合ってくれた友人にも改めて感謝した。
この高校時代からの友人は
私が結婚する際
婚姻届の証人として
署名をしてくれた親友でもある。
次回は、絶対に完歩する!
・・・そんな思いが一層強まった。

■10
10/22-23の関西大会を終え
次の東京大会(11/12-13)まで
あまり日にちが無い。
しかし、最大の改善点である
「装備の軽量化」と「時間配分(ペース管理)」は
絶対、事前に克服しておきたいと思った。
リュックサックは
一般的な20リットルサイズから
ランニング用の小さなサイズへと変更し
街中を歩くのだから道中で買える物は
荷物になるので持参しないことにした。
また、ペース管理には
スポーツウォッチが便利だと考え
以前から気になったていた
「ガーミン」
を買い求めた。
さらに
シューズも見直した。
asicsストアで人生初の
<足の計測>をしてもらい
3種類のシューズを追加購入して
トレーニングで試しながら
自分の足に一番フィットするものはどれか?
と、比較検討した。
練習時
街歩きは飽きやすい性分なので
やたらと山に登った。
しかし、楽しみを忘れて
あまりストイックに
傾倒しすぎるのもいけないと思い
娘・息子そして愛犬サクラも
トレーニング登山に
付き合ってもらった。
山頂で子どもと一緒に食べた
お手製のシンプルなラーメンの味は
絶品だった。
そうこうしている内に
東京大会がすぐ目前へと迫ってきた。

■11
東京大会では
必ず完歩したい強い想いが
自分にはあった。
富士山をきっかけに
チャレンジ精神を改めて教えてくれた友人
および、関西大会に付き合ってくれた友人。
山に頻繁に登っていたかと思えば
「今度は100km歩く!」と
突然訳の分からないことを言う
こんな自分を、温かく見守ってくれた家族。
そして両親。
チャレンジを自分ごとのように
喜んで応援してくれたお客さん。
多くの人への感謝の気持ちと
多くの人からのエールが
自分の中で力となっていた。
さらに、言えば・・・
8月に火災に遭い
店舗を焼失してしまったお客さんの
「復興祈願」の意味もあった。
だから
関西大会での挽回を
是非とも東京大会では果たしたかった。
しかし
もっと、もっと
自分の中の本音を掘り下げて見てみると
完歩したい一番の理由は・・・
「中途半端な自分に終止符を打つこと」
「しんどいことから逃げるクセを辞めること」
・・・であった。
これまでの自分の人生は
自己分析するに
往々にして中途半端だった。
〇行きたくもない大学への進学。
〇アメリカの大学への留学後の
英会話の放置と再度の渡米の断念。
〇本当になりたくてなったのか
やや疑問な税理士への道。
〇人間関係がイヤで足抜けをした
税理士会の役員の世界。
〇新たに業務に取り入れようと学び始めた
マーケティングの数年での離脱。
〇講師資格を取ったものの全然活動していない
「思考の学校」の講師業。
〇結成したもののコロナ禍で
完全に止まっている焚き火サークル。
〇一から作り直そうと取り組み始めた
ホームページの停滞
自分は
結構あれこれと興味の対象が幅広い。
そして
向上心や知識等の吸収欲も
比較的強い方かもしれない。
が、しかし
それが両刃の剣でもあり
〇全うしているか?
〇完全消化しているか?
〇途中で投げ出していないか?
と尋ねられると
どれもこれも大抵は
中途半端なのだ。
しかも
自分への要求が高くて
並大抵のことでは自分に納得がいかない。
「完璧主義」とは少し異なるが
自分を追い込んで
自分に圧をかけるその程度が
半端ないのである。
言わば
日常的に自分に対して
<落伍者の烙印>
を押しているようなものだ。
さらに
年齢を重ねてくると
「要領」や「言い訳」ばかり上手になり
〇チャレンジする
〇最後まで成し遂げる
という事から逃げてきていた。
だから自分は
「できた!」
「成し遂げた!」
という成功体験が
どうしても欲しかった。

■12
2022年11月12日、土曜日。
いよいよ
東京エクストリームウォーク100の
本番を迎えた。
前々日の夜に
関空付近のホテルに泊まり
翌日の早朝便で
羽田へ飛び
羽田からは電車で
スタート地点の小田原駅まで移動し
駅前でレンタカーを借りて
コースの前半部分までを下見走行した。
関西大会から短期間ではあったものの
出来る準備は全てやったつもりである。
当日朝のスタート会場。
前回の姫路では
一種異様な空気感にプレッシャーを感じたが
今回は全くそのようなものを感じなかった。
共に歩くT君も前夜遅くに小田原入りし
朝、元気な顔で富士山以来の
久しぶりの再会を果たした。
そして、8:20。
いよいよ、スタート!
富士山仲間も駆けつけてくれて
笑顔で手を振って出発した。
制限タイムは26時間。
翌朝10:20がタイムリミット
という事になる。
そして、結果は・・・
FACEBOOKでも投稿のとおり、
制限時間3分前の
10:17にギリギリゴール!
念願の完歩を果たした。
道中、富士山仲間が何人も
応援に駆けつけてくれ
大いに力をもらえた。
FACEBOOK上でも
多くの方々が応援メッセージを
下さって、勇気がでた。
ZARDの「負けないで」を
送ってくれた友人もいて
歩きながら
嗚咽しそうになった。
しかし・・・。
いざゴールしてみて・・・。
事前の自己予想では
「あれだけ頑張ってきたのだから
絶対に感動して涙するだろう!」
と思っていたのだが
実は・・・あまり感動は無かったのだ。
正しく言えば
当初予想していた感動よりも
むしろ、もっと大きなモノを
私は得た。

■13
~東京100kmウォークで得たもの~
少なくとも今回の結果は
自分にとっては「偉業」
であることに違いない。
一生懸命頑張って
努力して
やっと成し遂げたのだから。
しかし、正直、自分は
そういう気持ちではなかった。
それはなぜなら
自分にチャレンジ精神のすばらしさを教えてくれた
共に参加したT君が
残念ながら、持病である足の不具合が悪化し
86km地点でリタイヤせざるを得なかったからだ。
途中、ペースダウンをするT君と別れ
単独歩行に移行せざるを得なかった。
まるで<戦友>を置き去りにして
進軍するかのようで
胸が締め付けられた。
そして、独りでゴールをしてみて
自分は思った。
「ちがう。
オレが欲しかったものはこれじゃない」
・・・と。
自分は
自分だけの達成感が欲しいがために
取り組んできたのではなかった事に気づいた。
共にゴールをして
共に喜びを分かち合いたかったのだ。
T君とは、来年、
共にゴールしたい。
感動の涙は
それまで取っておくことにしよう。

■14
さらに、それだけではない。
長時間、究極の心理状態で歩く中、
1つ大きな気づきがあった。
「自分が中途半端って・・・誰が決めたんや?」
「本当にそれは悪いことなのか?」
「自分は全く努力をしてこなかったのか?」
・・・と。
誰かに
「頑張っているね」
「すごいね」と褒めてもらえることは
いくつになっても嬉しいものだ。
しかし
他の誰かではなく
一番身近でありながら
最も自分自身を認めてこなかったのは
「自分自身」であった。
チャレンジした事や
取りんだ事には
一切プラス評価をしないくせに
「途中で辞めた」だの
「中途半端」だのと
結果だけをクローズアップして
これまでさんざん酷評し
キツく接してきたのは
「自分自身」であった。
だからこそ
「自分で自分を誇れる何かが欲しい」
「達成感が欲しい」
と思い
これまで色々な事に
取り組んできたのかもしれない。
そういえば、以前
自分が尊敬する、ある人から
教えられたことがある。
========================
大したことでなくてもイイんです。
スゴくなくてもイイんです。
朝寝坊せずに起きれたぞ、とか、
小さなことで全然イイんです。
小さくて些細な1つ1つを
しっかりとご自身で認めてあげて
しっかりとご自分を褒めてあげてください。
今までは、不安から、重い鎧を着込んで
身を守っていたかもしれませんが、
そんな重い鎧は脱いで
小さなありのままの竹岡さんになったら
もっともっと素敵な竹岡さんが現れますよ。
==============================
・・・そんな言葉が思い出された。
祖父が倒産した。
そのせいで両親も自分たちも苦労をした。
兄も仕事が安定しない。
おれが頑張らんとイケナイ・・・。
おれが支えないとイケナイ・・・。
そんな風に
プレッシャーばかりを
自分にかけるものだから
自分が休むことすら「悪」(アク)となっていった。
だから
土日関係なく、深夜まで仕事をする。
お客さんを守らないとイケナイ。
おれがしっかりしないとイケナイ。
でも、他人に自分の弱い姿は絶対に見せたくない。
そんな調子だから
数年前、2度連続して
過労で意識を失い、倒れたのだ。
「このままではいけない」
と気付き、人生の再起を図って
また新たな取り組みを始めたものの
それもまたイマイチしっくりこず
「またお前は途中で投げ出した!」
と自分を酷評する結果を
再び招いてしまっていたのだった。

■15
ゴール前のラスト14km区間は
ふとそんなことが頭の中を
グルグルとしていた。
「おれは、スーパースターにでもなりたいのか?」
「おれは、スーパーマンにでもなりたいのか?」
・・・当然、答えは「否」である。
世の中の人すべてが
全てのことを100%完璧に達成しているのか?
仕事・技術・料理・習い事・趣味。
すべてのことを世の中の人はみな
完璧にマスターしているのか?
どちらも当然、答えは「否」であろう。
〇おれは、今まで、
何になろうとしていたんやろう?
〇おれは、自分をそこまで追い込んで
何と戦ってきたんやろう?
・・・ふと、そんなことが頭をよぎった。
すると、ふいに、
自分に伝えたい言葉が浮かんできた。
●今まで、無理して頑張ってきたんやな
●しんどかったな
●誰にも相談できず、つらかったな
●気づいてあげれずで、ごめんな
●きつかったのに、さらに追い込んで、
しかも酷評ばかりして全然認めてあげず、
プレッシャーと不安ばかり与えてきて
ほんま、申し訳なかった・・・
そして、改めて、100kmを完歩してくれた
自分自身のカラダに対して、
猛烈に感謝したくなった。
もちろん、丈夫に生んでくれた母親や
養ってくれた父親のおかげでもある。
しかし、誰よりも彼よりも、
自分のことを
一番認めてくれて欲しい
一番理解して欲しい
その相手は・・・
自分自身なのだ。
中途半端でも良いじゃないか。
そこまで本気じゃなかったんだな
そこまで好きじゃなかったんだなって
ことでもあるのだから。
やってみたけど苦手だった。
それでもでも良いじゃないか。
方向性の違いが分かったのだから。
途中で考えが変わっても
いいじゃないか。
日々自分は色々と考え
常に一定に固定された考えでは
ないのだから。
それよりも
いつまでも自分を認めず
相も変わらず自分責めたり
自分をさげすんだりしていることの方が
よっぽど大問題なのだ。

■16(さいごに)
自分でも意外であったが
今回の100km完歩では
予想外の感想を得た。
完歩証明書もうれしい。
フィニッシャーと書かれたTシャツも嬉しい。
しかし、何よりも
自分が本当はどうありたいのか
何を大切にしたいのか
それらに今更ながら気づけたことが
一番自分としては収穫かもしれない。
これからも、色々と挑戦を続けていくだろう。
そして、諦めて投げ出すことも多々あるだろう。
でも、自分がそれで納得しているなら、
それはそれでいいのだと思う。
その時は出来なくても、諦めても、
数年後にまた取り組むかもしれないのだから。
それよりも、小さな小さな
自分が繰り出す1歩を
うんと認めようと思う。
富士山も
気の遠くなるような100kmウォークも
本当に小さな1歩がいかに大きな力を
持っているかを
教えてくれた。
そして
そこには友がいて
仲間がいた。
自分自身の大切さに気付いた時
改めて周りの大切さが
腑に落ちて
それに気付くのだと思う。
これからも楽しい仲間の輪を
増やしていければ
自分の今後の人生
相当ワクワクするに違いない。
これまで頑張ってきた自分に
最大のエールを送ってあげたい。
投稿日:2022年11月16日
竹岡英二
追伸
ここまでの長文、お読みくださって有難うございました。

【1】会計は、商売の主人公であるあなたをHAPPYにする存在であって欲しいのです。
でも、もしそれが「難しい」とか「数字が苦手」というイメージをお持ちであれば・・・
/
おめでとうございます!
あなたはHAPPYになる資格があります!
\
では、ここで、あなたにご質問です。
Q. 通信費って何ですか?
A. 電話代とか切手代とか・・・あ、インターネット代もそうかなぁ
Q. じゃあ、接待交際費って何ですか?
A. 取引先を食事に接待したり、お中元とかお歳暮とか・・・。
はい、大正解!
だいたい、皆さんは大まかな科目は分かるんですよ。
たまには難しいのもありますが、まぁ、大半は何となく分るでしょう。
でも、今回お話したいことは「これは何費になるのか?」
という「勘定科目」の話ではありません。
【2】ボクの経験上、多くの人は「これって何費?」ばかりに気を取られています。
でも、それだけじゃ、「子どもが迷子」になってしまうんです。
「子どもが迷子???・・・なんのこっちゃ?」
ご説明します。
勘定科目は、例えるならば・・・「親」なんですよ。
つまり、勘定科目は「お父さん・お母さん」。
そして、勘定科目の中身が「子ども」なんです。
でも、多くの人は「親の名前」ばかり考えて「子ども」のことは考えない。
子供が生まれたら役所に「出生届」を出しますが、
出生届に書く内容のうち、あなたにとって一番大事なものって何ですか?
住所ですか?
生年月日ですか?
じゃなくって、親から子どもへの初めてのプレゼントである<名前>ですよね。
会計の世界、勘定科目も全く同じなんです✨
多くの人は「親がなんていう名前か?」(=これは何費か?)ばかり考えて、
子どもの名前は気にしない。
だから、会計をするときでも、子どもにも名前を付けてあげるんです!
【3】では、ここから極意を伝授させて頂きますよ!
例えば、先ほど例に挙げた「通信費」で考えてみます。
「通信費」という「親」には、どのような「子ども」がいるのでしょうか?
一度あなたのお商売の場合で考えてみて下さい。
・NTT
・ドコモ
・インターネット通信料
・プロバイダー料
・郵便代
・切手代
・はがき代
と、私の場合であれば、ざっとこんな感じです。
彼らがいわば【通信費一家】の【子どもたち】です。
では次に、子どもたちの特徴(個性)に応じて命名してあげます。
すると【通信費一家】はこんな【親子関係】になります。
【親】通信費
【子】・固定電話
・携帯電話
・インターネット通信料
・その他
※【子】の名前は、例えば、固定電話なら「NTT」、
携帯電話なら「ドコモ」にするなど、
固有名称でもOKです(^^)/
はい、これで子どもたちに名前が付けられました。
会計の専門用語では、勘定科目の【子ども】のことを【補助科目】と呼びます。
(ちなみに、【親】のことを「主科目」と言います)
では、もう1つの例題として【消耗品費一家】を見てみましょう。
【主科目(親)】 消耗品費
【補助科目(子)】・ガソリン代
・事務用品代
・その他
業種によって対象の違いはありますが、消耗品費の場合は、ざっとこんな感じですね。
※製造業の場合は、一般的な消耗品費とは別に、
製造原価の計算上「工場消耗品費」という別の主科目を設け
さらにその内訳となる補助科目も設定したりします。
ただ1つ、注意点を挙げるとすれば、あまり細かく補助科目を設定しない方が良いです。
細かな物や雑多なものは「その他」に包含させてしまいましょう。
子どもに細かく教育しない・・・子育てと少し似ている感もありますねw
【4】主科目に子ども(補助科目)を設けるメリット
思わず頭を洗いたくなった人は、昭和世代の人ですね(笑)
では、主科目に子ども(補助科目)を設けるメリットです。
そう!スッキリと見やすくてミスが減る!って
とても素敵なことです。
「去年は自動車税を3台分ちゃんと計上したのに
今年は1台分しか計上していなかったなぁ」
・・・なんてことは無くなるんです。
自動車税は「租税公課」という主科目で計上しますが、
その補助科目として「自動車税」を設定しておけば、
チェックをする際、会計ソフトの<補助科目を含む試算表の前期比較版>を見ることで
容易に前年との変化が見つけられます。
そうすれば
「あれ、今年の自動車税は少ないぞ。おかしいぞ」
と気付くことが出来ます。
こうやってきっちりとモレなく経費計上をする習慣があれば、
<悪魔のささやき>(※)に耳を傾ける必要も無くなるんです。
※悪魔のささやき
ウソの経費金額を入れたり、
仕事に関係のない個人的な遊びの支出を経費にしたりすること(=脱税)
【5】そして、そして、一番のメリットは・・・
事業の成績が「正しく映し出されるようになる」ということです。
メチャクチャ、あるいは、適当な数字・・・そんなもの見ても仕方ないでしょ?
あるいは<ウソの健康診断>が無意味であるのと同じことです。
🔴本当に儲かっているのか?
🔴どこが良いのか・悪いのか?
🔴どこを伸ばすべきか・改善すべきなのか?
🔴去年と比べてどこがどう変わったのか?(しかも、補助科目レベルでの比較が可能となる!)
🔴同業他社と比べて、当社はどう違うのか?
主科目に補助科目を設けるだけでも格段に正確性はレベルUPします。
でも、多くの人は、ご自身の足元をよく見直さずに
「やれ経営分析だ」
「やれキャッシュフロー経営だ!」などと
よく知らないけど耳障りの良さそうな世界に目を向けてしまいがちです。
しかし、前提の数字が正しくなければ、あらゆる分析もテクも無意味!
ということです。
【6】補助科目の利用方法は、経費科目だけではありません。




========================
【1】ウリアゲアゲロ~、ウリアゲアゲロ~
========================

売上の中身は次の3要素から構成されています。
①数量
②単価(金額)
③リピート率(購入頻度)
仮に【1個】【単価500円】【1回の売上】としましょう。
すると、売上はいくらですか?
はい、正解、500円です。
算数的に表現すれば、
1個×500円×1回=売上500円となる訳ですね。(・・・分かっトルワイ!!!と怒らない)
売上は、これら3要素のうち、
どれか1つでもUPすれば必ず上がるんです。
そして実際、世の中にはそのような実践例があふれています。
難しいマーケティングの本など要りません。
世の中の実例をちょっと見てみましょう。
①数量UPの例
・1個500円のところ、3個まとめ買いで1,200円!
②単価(金額)UPの実例
・1万円以上お買い上げの方には***をプレゼント
・トッピングで🔵🔵を追加
③リピート率(購入頻度)UPの例
1週間以内の再来店で使える餃子無料券
※なかにはハイブリッド(複合)の実例も見受けられます。
例えば、①と②のハイブリッドの例ですが、
私の近所の回転ずし屋さんでは、
食べた皿が10枚になる度にガチャガチャが1回できるので
子どもたちが無理矢理競うように食べていました(;^ω^)
どうでしょうか?
どの手法もよく見聞きしますね。
実は、これらを実践しているお店は、
みな漠然と売上UPに取り組んでいるのではなく、
確実に3要素のどれかをUPさせようと意識的に取り組んでいるのです。
いわば【偶然的な売上】ではなく【狙った売上】です。
========================
【3】どんなイイコト?こんなイイコト
========================
▼こんなイイコト(1)
売上の3要素を意識した販売戦略の長所は
上記でご紹介したように
「具体的な取り組みが行いやすい」点にあります。
そして、実は、もう1つ、長所があります。
それは
「失敗した時に結果分析がし易くなる」
ということです。
たとえば「販売数量を増やそう」と取り組み、結果、うまく行かなかった場合には、
販売数量UP作戦を見直すのです。
「さすがに昨年対比3倍は目標設定が高すぎたなぁ。
今度は2倍に下げてリトライしてみよう」という風に・・・。
3要素を意識せずに、漠然と売上UPに取り組んで失敗すると
「何が悪かったのかなぁ」
「愛想が悪かったのかなぁ」
などと思考があらぬ宇宙の彼方へ行ってしまいます。
商売はトライ&エラーの繰り返しですから、
むしろ、結果分析がし易いことこそ、
売上3要素を意識した販売戦略はその強みを発揮するのです。
▼こんなイイコト(2)
上記で例に挙げた3つの取り組みは、お客様側にとってもイイコトがあります。
3個買えばオトク、プレゼントをもらえてオトク、無料券をもらえてオトク・・・。
売り手側だけが儲かって嬉しいのではなく、
買い手側にも明確な「ベネフィット」(良いこと)があると言うのは、とても大切です。
============================
【4】最後に、改めてお尋ねします。
では、今日はこの辺で、オシマイでっせ!
ドンドン!!(終わりの太鼓w)



これから個人事業のみなさんは、確定申告に向けて大忙しですね。
ところで、このタイミングだからこそ改めて確認して頂きたい話があります。
名付けて・・・金太郎アメ理論!

以前、寺田彩乃さんの「マンガ思考®」という講座を受講させて頂きました。
自分の中の感情をキャラクター化するのですが、
それを「インナー・キャラクター」と言い、
自分が作ったキャラを使って、3コマ漫画の日記などを書くが
とても楽しい作業でした。
そこで、思ったのです。
そもそも堅苦しい数字が並んだ資料がキライな自分。
お客様に提供する試算表などにキャラクターを採り入れる事ができないか?。。。と。

12月。
街はイルミネーションで輝き、クリスマスソングが流れる。
「うっ…今年も確定申告がやってくるのか」
しかし、クリスマスは「ホワイト」なもの。
「ブルー」になってどないしまんねん(笑)

ウリアゲアロ・ウリアゲロ・・・
まるで呪文。
この呪文を唱えらると、たちまち石になって固まってしまいそうです。
しかし、会社経営に携わる方々の頭の中は
この呪文がまるでタールのように「ベッタリ」とこびりついていることでしょう。
この「売上をあげる」という言葉ほど曖昧な表現はありません。
売上UPに取り組む場合、漠然と売上UPを考えるのではなく、
【売上の中身(構造)】をあらかじめ理解していると取り組み易くなります。
それでは、以下、ご紹介いたしましょう。
竹岡税務会計事務所
経営が見えない!を数字でクリアに。
まずは、お気軽に無料相談を。
電話番号:090-7499-8552
営業時間:10:00~19:00
定休日 : 土日祝
所在地 : 大阪府富田林市須賀1-19-17 事務所概要はこちら